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おっさんだけど、仕事辞めてアジアでブラブラするよ\(^o^)/ Vol, 50 気概 

タジキスタン Road to Pamir 6日目 
2023.0826 Fri

あれはたしか、某観光道路の入り口付近での出来事です。
その日はソロツーリング最終日。一度はそのまま帰途に就こうとしたのですが、まだ昼過ぎで微妙に時間が早かったこともあり、観光道路を攻めてから帰宅することにしました。
問題は腹が減っていることです。その日の朝飯はジュースしか飲んでいなかったのです。
このまま観光道路に上ると少なくとも3時間は飯が喰えない。かと言って、飯のためにあちこち探し回って時間を浪費するのはわたし的にあり得ない。
どうしようかな…、などと悩んでいるうちに、とうとうあと一つ信号を右折すればそのまま観光道路に突入するというところまで来てしまいました。と、左手を見るとラーメン屋が…。迷わず左ウインカーを出して、ラーメン屋の駐車場にバイクを停めました。
グローブを外し、ヘルメットを脱ぎ、…そして気付きました。
“めちゃくちゃ混んどるやんけ”
そんなに狭くはない店内は満員で、“待ち専用席”もびっしり埋まっており、さらに雪国によくある広めの入り口スペースにまで人が溢れている状態です。

空調の効いた洒落た空間よりも、屋外の、たとえばこういう市場の隅にある食堂がわたしは好きです。まあほら、昭和生まれですから…。


“おいおいおいおい、勘弁してくれよ…”
と同時に、少しだけ興味が出てきました。
こんな田舎のラーメン屋、しかもお昼の時間はとっくに過ぎているのにこの行列。これはもしかして、かなり旨いかも…?
基本的になんでも美味しく食べることができるわたしは、逆に飯にこだわりがありません。そんなわたしでも、食えるものなら旨いのもを喰いたい。
わたしは敢えて、というか他を探すのが面倒くさかったのもあり、行列に並ぶことにしました。
そして待つこと30分。流行りの鶏スープ鶏チャーシューのラーメン1本で勝負しているそのラーメン屋。鶏チャーシュー麺大盛りで超強気の1600円でしたが、ツーリングという非日常、そしていろんな意味で“今日しかない”と思い、わたしはそれをオーダーしました。
はたして…。
旨い。確かに旨い。というか、これが流行の味なんだろう。
でも…。でも、ちょっと待ってくれよ。1600円出してこれか…? 30分並ぶほどのものか? 
みんな有難がって喰ってるけど、これそんなに旨いか? 街で1600円出せば、これより旨いもの山ほどあるぜ。1600円のとんかつ定食、唐揚げ定食、うどん定食、天蕎麦だって1600円だせば喰えるぜ? 
大盛りを頼んだのに普通盛りくらいしかないラーメンを速攻で喰い終え、キャップを被ったまだ年若い店主を見つめました。きっと彼はラーメンが好きなんでしょう。流行にも聡いのでしょう。そしてなにより、SNSやビジネスのセンスがあるのでしょう。
しかし、わたしは心の中で吐き捨てました。
“ま、もって3年やわな”

市場で大量に売っている旬のもの。それが一番おいしいものです。ちなみに、ウズベク、タジクのトマトやスイカ、ブドウなど果物の旨さは異常! マジでドラッグ!

いつまで経っても終わらないラーメンブームについて、わたしは言いたい。
「凝りすぎ! 値段高すぎ! 量少なすぎ!」
そしてわたしは、日本の飲食業界にエールを送りたい。
「がんばれ、町の定食屋! がんばれ、食堂のおっちゃんおばちゃん!」
ラーメンは確かに旨い。わたしだって、自分の住む街チャリ40分圏内くらいのラーメン屋は行き尽くしたくらいにはラーメンが好きです。
そのわたしが敢えて言います。
「ラーメンは、数ある日本の食文化の1つに過ぎない!」
とんかつ定食、唐揚げ定食、スタミナ定食、中華系定食、牛丼/かつ丼、うどん、蕎麦、…。
みんなわたしは大好きです。どの系統の飯屋も、ラーメン屋と同じくらい繁盛してほしいのです。

なんと言いますか、結局これ系の“大量に作ってみんなで喰う”ってやつが旨いんですよね。

かつて、日本の街道には“ドライブイン”という形態の食堂がありました。
大型トラックを停車できる駐車場を備え、肉体労働者の好みそうな料理、すなわち味付けが濃く、わかりやすく美味しく、そのくせ何回食べても美味しく、そしてすぐに出来上がる…。
いま日本に必要なのは、そんな食堂ではないでしょうか? 
よくよく考えてみてください。“映える”料理なんてナンセンスでしょうが! 
飯は旨くてなんぼ! 腹一杯になってなんぼ! 見た目が良ければなお良しですが、それはあくまで二の次三の次です。
街をよくよく観察してください。ぼちぼちカウンターカルチャーとしての飯屋が出現し始めています。唐揚げ屋、とんかつ屋、うどん屋、そして定食屋…。
そんな食堂を、わたしは応援します。応援し続けます。
ところで、旨い定食屋/食堂の見分け方は、昔から決まっています。
それは、“昼飯時に労働者でいっぱいかどうか”です。

これですよ、これ! これが不味い訳がない! この魅力がわからない人間とは飯の話はしたくない! 『マジかどうか、この眼を見て判断しろ!』 ※ちなみにバンコクの路面食堂です。

ちなみにこの見分け方、たぶん古今東西で共通するものと思われます。
昨日タジクはアフガンと国境を接するとある小さな町で泊まった食堂兼宿、それがその証拠となります。

その宿は,最初からなんとなく気に入っていました。
商売っ気のない主、ドミトリーだけど誰も居ない部屋、屋外にある意外に清潔なトイレ、同じく屋外のバケツ式セルフシャワー。
なんというか、ツボを押さえているのです、わたしの…。バケツでお湯をもらう式のシャワーは初体験でしたが、これは必要十分。トイレも穴が開いているだけの簡素なものですが、乾燥地帯だけあって臭いもほとんどありません。Wi-Fi無しなんて最初から期待していないので問題なし。エアコンなんてあるわけないですが、廊下で寝れば夜中は寒いくらいでした。晩飯はトマトスープにナン。朝食はウインナーエッグにナン。ちなみにこのナンは日本でいうと食パンにあたり、たぶん全粒粉。だから腹の調子がすこぶる良くなるのです。

中央アジアのトラックは2連結が基本。
これでパミール高原の厳しい道路を走るんですから、なかなかのモンですよね。


朝起きて庭というか庭越しの道路を見渡し、合点がいきました。
ここは、トラック野郎たちが集う食堂だったのです。早朝からガヤガヤやっていたのもトラック野郎。夜中にガタゴトやっていたのも大型重機のオペレーター。いまわたしの隣で飯を喰っているのも、トラック野郎と対アフガン警らのアーミー野郎。もしかしたら、廊下で一緒に寝ていたのもトラック野郎かもしれません。
幹線道路のそんなに多くないタジキスタンでは、ドゥシャンベからホログ、あるいはパミール高原へと続くこの道路は極めて重要な幹線道路。そこを往復するトラック野郎たちが集う食堂兼宿が、ツボを押さえていないわけがないのです。
ちなみに、宿泊・夕食・朝食込みで52タジク(約670円)。財布から2タジクを探していると、主が
「これでいいよ」
と50タジクだけを握りしめ、食堂に戻って行きました。

まったく、これだからトラック野郎たちの集まる食堂ってのはサイコーだぜ!

タジクの魅力っていろいろあると思うんですが、フレンドリーでさっぱりした人が多いですよ、イメージ通り。『スマホイジるより話すほうがいいじゃん』みたいなノリが当たり前にあります。

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