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ライターの心構えまで学べる_『SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方』(ゆうこす 著、KADOKAWA)

芸能界で今何が流行っているとか、アイドルでは誰が人気とか、本当にわからない。「ゆうこす」さんの価値をどれだけ私が理解できているのか心もとない。

それでもこの『SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方』(ゆうこす 著、KADOKAWA)は目から鱗のポイントが満載で、感動しながら一気読みした。

ゆうこすさんは、きっととても頭がいい。そして前向きな思考と行動力のある人だ。それはまえがきを読んだだけでも伝わってくる。それゆえに、失敗しながらもその失敗の理由を分析し、そこを乗り越える方法を考えて実践できたのだと思う。

この「実践」は大事だと思う。彼女の説く各SNSの特性に合わせた発信のポイントは、なんとなくわかっているけれど自分の中でしっかり言語化できていないものが多く、実践もできていないことばかりだった。

感動ポイントを3つあげたい。

①SNSに対する分析の鋭さ、それぞれにあった発信方法の紹介に感動

①はこの本の主眼だと思う。「Twitterは拡散力の高い、共感のメディア。短くシンプル、でも“エモい”本音をツイートする」「Instagramには信頼度の高い情報が詰まっているから、編集長になったつもりでプロデュースする。妥協は一切しない」など、SNSごとの特性の分析がとても的確だ。あわせてダメな発信例もあってわかりやすい。自分の過去の発信を思い出して赤面しながら読んだ。

②ダメダメだった時代からの鮮やかな飛躍っぷりに感動

「ゆうこすさん=アイドル」以上の知識を持たずに読んだため、彼女の苦労した時代のエピソードに驚いた。福岡・博多で活動するHKT48のメンバーだった彼女は、脱退後はニート生活で、自主開催のイベントの動員数が4人だったとか、Twitterでつぶやけば「死ね」とリプライが飛んでくるのが日常茶飯事だったとか、どん底感がすごい。読んでいるこちらまで暗くなってくる。
だからこそ、その後の彼女が大好きなSNSでの失敗をリカバリーしてモテクリエイターを名乗り、のべ76万人のフォロワーがついて順調に仕事が来るようになった現在とのギャップが鮮やかに映る。

③ロジックの明確さに感動

これは読後感のよい本に共通することかもしれないが、ゆうこすさんの、ロジックが明確にある語り口に感動した。SNSに精通しているからといって「〜すべき」との姿勢は感じられない。きちんと理由や背景に触れることにより、説得力のある文章が紡がれている。
たとえば第2章の項目「ちょっとした工夫でフォロワーを増やす 1.アイコンは顔出ししたほうがいい?」では、「顔出ししたほうがいい」という答えが返ってくるかと思いきや、その予想はよい意味で裏切られる。顔出しするかしないかではなく、投稿の内容とマッチしたアイコンにしたほうがいい、そのほうが記憶に残るしフォロワーが増える、とゆうこすさんは説明する。お手伝いされたライターさんや編集者さんの力もあると思うが、これはゆうこすさんの中にロジックがなければ全編この調子では書けないのではと思う。これはライターとしての実感です。

アイドルにしてもライターにしても、大切なのは自分が何を伝えたいかを明確にすることだ。それを踏まえて適切な媒体や文体を選び、発信内容を練り上げる。ライターとしての心構えをゆうこすさんから学んだような気がした。