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Newコタまり第19号「落ち穂拾い」

(以前書き溜めたコタまりを、再構成してお届けしています)

入社して、新人時代に非常にお世話になった大先輩が突然倒れたんです。幸い命は取り留めたものの、まだリハビリをしている状況で、この春で一旦現場を退くことになりました。(当時2010年くらいだったかな…)
Zoom上ですが、この間久しぶりに話す機会があって、当時を思い出しました。もう10年以上経っているんですね…。

人間というのは、永遠でないとは頭ではわかっているし、ある日突然いなくなるという場面には何度も遭遇してきました。
とにかく私のいる業界は、入れ替わりは激しく、自分が関わった人たちが辞めていくなんて珍しくもなんともないのですが、大恩人が近くからいなくなる。というのはさすがにそうそうないので、こたえます。

今日はその大先輩の話なんですけどね。
本当に春休みの講習会真っ只中、超忙しい時に、
ポンとメールが来たんですよ。
簡単なあいさつと、添付ファイルが1つ。

タイトル名は「落ち穂拾い」

ワードのベタ打ちだったんですが、実に100ページ近くの枚数があり、
さまざまなキーワードがそこに記されていました。
そして、そのメールにはこんなことが書いていました。

添付は、私が時に触れて見つけた言葉を拾ったものです。
「人間は言葉で考える動物である」と
先輩から教わりました。
こうして拾って眺めてみると
私の中に亦あたらしいアイデアが生まれるのが分かります。
考え方は「鋳型」にしないと再生できないからです。

そうか…。初めてこの時わかりました。
どうしてこんなとっさに、その場にフィットする言葉が出てくるのか。
なんて柔軟な考えが出てくるんだろう。
そんな視点、思いつかなかったなぁ…。

やっぱすごいな。この人は。
と、思わせる理由が、こんなところにあったのか…。
思えば、自分が書いているこの文章も、「鋳型」なのかもしれない。
様々な日々の生活の中から拾ってきた言葉をつなぎ合わせ、
新しい文章を作り上げていく。
そういう作業の繰り返しだったのかもしれません。

私自身が使う大好きな言葉もすべて、
私が大好きな人が好んで使う言葉だったものがやはり多いです。
私のここまでの人生は、「言葉探し」の人生だったような気がします。

最近ちょっとサボってたな…。
ちょっと、そんなことを思いました。
言葉を商売にしている職業。なまけちゃいかんですね。

なので早速、言葉を鋳型に流し込んでいます。
自分の言葉が、ちょっとした言葉が、
次の誰かに少しでも役に立ってくれれば。

そんな思いを持って、やっぱ書き続けよう。
改めてそう思いました。

メールは最後に、こんな言葉で締められていました。

メール差し上げている方は、全員ではありません。
少なくとも私とテレパシーを交わした方に宛てて
差あげているつもりです。
皆さんの日々の業務の中で活用していただければ
こんなに嬉しいことはありません。

嬉しい言葉です…。
思わずちょこっと泣いちゃったのは秘密で。

やっぱまだまだだわ。
私には、「この添付ファイルの「落ち穂拾い」なんて名前、
付けられないもん。
このセンスにどこまで近づけるかわかりませんが、
自分なりにやってみようかな。


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