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愛する神へ捧げた交響曲〜ブルックナー第9交響曲(Vol.2)

「この世の暗部・相剋」のスケルツォ


さてブルックナー9番の2楽章。ティーレマンは映像対談で「スケルツォは(演奏)難しくはない」と語る。
実際この楽章はスケルツォという性格もあり複雑な構成ではない。
一方で彼は「これ以上に激しいスケルツォは(作曲家は)書いていない。年を重ねた円熟とは対極にあり(良い意味で)全く円熟していない」とも語っている。

第2楽章冒頭

このスケルツォは導入部が41小節にも渡っており、1楽章と似た様な構造という指摘もある。
またこの導入部は主調ニ短調ではなく嬰ハ短調的で落ち着かない浮遊した感覚で進行する。大野和士が指摘するようにそこへ不意にffの二音(D)連打の主題が襲う。
大野「こんな違う調がずっとあってD-moll(ニ短調)がくる。ショックですね」
「そこにすぐこれ(ニ短調)に属しない和音(嬰ハ短調)が鳴る」
「危険な世界を垣間見ている感じです」
「今まで信じていた神へ通じる安楽な純粋な道ではない、何かしらこの世の暗部、この世の相剋を見つけ出したのではないか」

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