見出し画像

Workshop Spirit #2「ワークショップのスピリットを体感する(講師・中野民夫)」【イベントレポート】

全6回の講座とオリジナルワークショップの実践を通じてワークショップの源流を探求し、実践者としての“魂”を洗練させる『Workshop Spirit』。先日5/19(日)、その第2回が開催されました。

『Workshop Spirit』講座スケジュール
・4/13「キックオフ - ワークショップスピリットへの旅立ち
▶︎5/19「ワークショップのスピリットを体感する(中野民夫)」
・6/15「創造性からワークショップのスピリットを探る(安斎勇樹)」
・6/29「組織開発からワークショップのスピリットを探る(中原淳)」 
・7/13「ワークショップのスピリットと自分」
・(ワークショップのスピリットを活かしたワークショップを公開・実施)
・9/28「ワークショップスピリットの開花-実践報告会」
※()内は担当講師。敬称略。

今回の講師は中野民夫さん。2001年に発刊され、「ワークショップ」という言葉が日本で広く知られるきっかけとなった「ワークショップ-新しい学びと創造の場(岩波新書)」をはじめ、多数の書籍や実践によって、今日までこの分野をリードしてきた第一人者です。

▼本日の講師(敬称略)
中野 民夫(東京工業大学 リーダーシップ教育院・リベラルアーツ研究教育院教授 ワークショップ企画プロデューサー)

画像1

1957年生。東京大学文学部卒。30年の広告会社勤務後、同志社大学教授を経て、 2015年秋から現職。大教室でも参加型の授業を展開。1990年前後に休職留学し、カリフォルニアの大学院CIISで組織開発やワークショップについて学ぶ。以後、 会社勤めの傍ら、人と人・自然・自分自身をつなぎ直すワークショップやファシリテーション講座を、Be-Nature Schoolなどで実践。公益社団法人日本環境教育フォーラム理事。主著に『ワークショップ』(岩波新書)、『学びあう場のつくり方』(岩波書店)、『みんなの楽しい修行』(春秋社)などがある。

第二回となる今回は、最初から最後まで中野民夫さんによるファシリテートのもと行われました。中野さんが大きく影響を受けたと語る、アメリカの仏教学者ジョアンナ・メイシーによる「真実の曼荼羅」をメインワークに位置付けて、半日間の短縮版としてアレンジした上で、再現していただきました。

チェックイン:調身・調息・調心


まずは、身体の準備を整えるための活動として、呼吸や姿勢を意識したストレッチが行われました。靴を脱いで、自分が立っている地面をしっかりと踏みしめながら、ゆっくりと自己と向き合い、身体だけでなく、心もリラックスさせていきました。

画像2

その後、円座になってチェックイン。いい具合に緊張もほぐれて、ゆったりと話している参加者が多かったように見受けられました。

画像3


ミニワーク:相互インタビューと他己紹介


その後、この場にいる人たちがよりお互いについて知り合うために、相互インタビューを通じた他己紹介のワークが行われました。このワークは、「せんだいみやぎNPOセンター」の元代表、故加藤哲夫さんから中野さんが習ったワークを応用した、とのこと。

<相互インタビューのやり方>
1. 二人組で、10分ずつ、相手の話をインタビュー形式で聴き合います。
2. 聴き手は聴いた内容をメモします。
3. さらに10分ほどかけてヒアリングした情報をA4用紙にまとめ、その情報をもとに、あたかもインタビューした相手になったようなつもりで、“他己紹介”を行ないます。

あらかじめ設けられた質問項目は、「どんな仕事をしているのか?」や「その仕事におけるワークショップの役割は?」といった、その人の普段の生活に関するものから、「気になる社会の課題は?」や「どんな社会を創りたいですか?その時、ワークショップはどう貢献しますか ?」といった社会への接続に関するものへと、徐々に移っていく構成となっていました。

画像4

画像5

インタビュー相手から得られた情報をもとに、その人になりきって行なわれる“他己紹介”では、自分の情報が他人によって整理され、発信されるという非日常的な感覚が味わえました。参加者からは、「自分の個人的な情報を客観的に見つめ直す機会として、新鮮だった」などの感想が話されていました。

画像6


幕間:食べる瞑想-食事としっかり向き合う


昼食の時には、「食べる瞑想」と呼ばれる、マインドフルネスの要素を問い入れた活動が行われました。用意されたオーガニック弁当に対して、一口一口ゆっくりじっくり(100回くらい噛むつもりで)無言で味わい、自分がいま何を食べているのか、この食材がどこから来たのか、といった点に思いを巡らせてきます。普段の何気ない行動の一つひとつにも内省の目を向けるゆとりを持つことで、素材の味を知ったり、お弁当を食べる時のおかずを選ぶ時の順番の癖がわかったりと、いくつもの気づきが得られていたようでした。

画像7


レクチャー:ファシリテーションとマインドフルネスの関係


午後は、中野さんによるファシリテーションとマインドフルネスの結びつきが解説されるレクチャーが行なわれました。「創造的な対話」を妨げる原因として、自分自身が抱えている思い込みやマインドセットを客観視することができず、固執し過ぎてしまうことを挙げた上で、「今この瞬間に起きていることに対する気づき」を促すマインドフルネスによって、“自分自身に何が起こっているのか気がつく”時間を設けることで、「創造的な対話」を行なうために必要な身体を整えていくことの重要性が語られていました。

画像8

画像9

他にも、ファシリテーターとして大事にしたい「在り様」や、それらの「在り様をいかに育てるのか?」など、中野さんが実践する上で大事にしているポイントが、じっくりと解説されていました。

メインワーク:真実の曼荼羅


その後、中野さんが、師・ジョアンナ・メイシー(Joanna Macy)から直接学んだとされる“真実の曼荼羅”のミニ体験へと移っていきました。まずは「安全な場」を作り、その後「絶望を分かち合う」儀式を行なうこの活動。参加者が安心して痛みを伴うような“真実”を場に共有できるように、ここで語られた内容は一切が他言無用というルールが徹底され、あらゆる記録機器を止めたなかで、始められました。

ここで詳しい内容について書くことはできませんが、本来であれば、よほど親密な関係性でない限り共有されないような内容の語りを、場にいる全員が真摯に受け止め、言葉ではなく静謐な態度で応じる場が形成されていて、私たちが普段行なっている「知性」や「思考」によるコミュニケーションとは確実に趣の異なる、独特の交流の在り方が生まれていたように感じます。「ワークショップは“時間”と“空間”を共にする活動である」という点がありありと実感できたと同時に、そうすることで初めて可能となる対話があることが、短い時間の中でも体験的に実感できました。

振り返り:えんたくんを用いたダイアローグ・セッション


そうしたディープな体験のあとは、人々が円座になって対話を行なうためのツール「えんたくん」を用いたダイアローグ・セッションが最後に開かれました。主なテーマは、以下の二つ。

1)「真実の曼荼羅」での体験を振り返る。
2)今日の体験を経て、「私のワークショップ・スピリット」に何か新たな発見や気づき、追加したいことは出てきましたか?

「真実の曼荼羅」で過ごした時間に対する意味づけが人によって本当に様々であり、聞き応えのあるコミュニケーションが展開されていました。

画像10

画像11

次回はミミクリデザイン代表・安斎勇樹を講師として、「創造性」というまた別の切り口から、ワークショップ・スピリットを探求していきます。どうぞお楽しみに!

■『Workshop Spirit』の今後のスケジュール

『Workshop Spirit』講座スケジュール
・4/13「キックオフ - ワークショップスピリットへの旅立ち
▶︎5/19「ワークショップのスピリットを体感する(中野民夫)」
・6/15「創造性からワークショップのスピリットを探る(安斎勇樹)
・6/29「組織開発からワークショップのスピリットを探る(中原淳)」 
・7/13「ワークショップのスピリットと自分」
・(ワークショップのスピリットを活かしたワークショップを公開・実施)
・9/28「ワークショップスピリットの開花-実践報告会」
※()内は担当講師。敬称略。
※下線部をクリックしていただくと、各回のイベントレポートへとジャンプします。

■『Workshop Spirit』に関するその他の記事はこちら。

本プログラムで取り扱う、ワークショップの“スピリット”について、中野先生・中原先生の企画上のこだわりのフォーカスを当てながら、安斎の視点から語られています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?