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8020?20本歯があると長生きできるのか?その1

今から30年ほど前に、厚労省と日本歯科医師会の活動として「8020運動」というものがあるのをご存じだろうか?「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」というものだ。

では、みなさん。ここでクイズです。「おやしらず」と言われるものを除いて、わたしたちにはふつう何本歯があるでしょう??





答えは28本です。

しかし歯の矯正というものをしている人は、24本(何本抜いたかによりさまざま。)ということもあるし、先天欠損もありえるから、健康であるが28本に達していない場合もあるのでご心配なく。

では、なぜ20本という数がえらばれたのか?

それは、歯が20本あれば機能的に美味しく物が食べれるから→健康に生きれる→良い人生が送れる、というような流れらしい。

一理ある。20本というのは規定の数のほぼ3分の2である。大多数残ってますね、ということになる。

噛める歯があることは本当に素晴らしい。もしそれらが治療していない歯であればもっと素晴らしい。

ある程度の年齢の患者さんがわたしに「今、自分の歯は何本あるのでしょうか?」とお尋ねになることはよくある。そういう場合、わたしはレントゲンを見せながらコメントを加えつつ、歯をいっしょに数えていく。「。。。というわけで22本ですよ。」などと答えると、少しほっとされた様子で「20本はありますね。」とおっしゃったりする。
たぶん8020という数字はご存じなのだ。
そういう場合、わたしは「そうですね!20本ありますよ!」と言って笑顔で終わる。
しかし、逆に20本には足りないということをお伝えしなければならない場合、患者さんは落胆気な様子をみせることもある。
そういう場合、わたしは「そうですね!〇〇さんの歯は20本に足りないけれど、数が問題じゃないですよ!」と笑顔で説明を加える。

そう、数ではない。
問題はその残っている歯の内訳。その状態。それからその方がどういう風に歯をケアしているのか。どんな生活習慣なのか。基礎疾患はあるか。etc.

つまり、数字は単なる目安です!そして20本ある、という事実で喜ぶのはまだ甘い・・・とわたしは思っている。

口の中の状態は、その人をよく語ってくれる。
現在、過去、育った環境、経済状態、健康状態・・・

一般的に60歳以上で28本すべて残っている人は、たいてい「丁寧に生きてきた方」とわたしは思っている。もちろん、事故など、仕方ない理由で歯を失った人もいるだろう。でも、あまり治療のあともなく、歯医者に定期的に通うという習慣をもっており、しっかりケアをしながら60歳以上になっている方には本当に頭が下がる。
わたしも60歳近くになっており、28本歯があるが、治療のあとは多い。あ、違った。少し矯正するので一本歯を抜いたので27本でした(笑)。
でも、自身が歯科医という道を進んでいなければきっと今頃ちゃんと歯は今ほど残っていたろうか?とたまにぼんやり考えてしまう。
だから歯科医療とは何ら関係ない方で、きれいに歯を残している方は、本当に尊敬してしまう。

反対に、20代、30代という若さで歯に大きな問題を抱えている人に対しては、本当になんとかそこで問題を食い止めたいと強く思ってしまう。でもそういう人たちはたいていプライベートでいろいろと問題を抱えていて、通い続けてくれる人はいいのだが、途中でやはり中断してしまう。彼らが60歳になるころは・・・どうなってしまうのかな、と思う。
そのころはもっと歯科医療の技術は進歩しているうだろうが、保険医療でまかなわれる治療範囲が拡大することには疑問があるし。そうなると、失った歯に対する治療には、ものすごい高い金額を払ってなんとか自費治療をするのか。または、ローコストの保険治療だときっととりはずしの入れ歯などしかまだ選択肢はないのかも・・・
どちらにせよ、歯は自分で治ってくれないので、歯に大きな問題抱えた若者の未来は明るくはない、と思っちゃうのだ。

やはり若いころから「丁寧に生きる」に限る。

次回は、歯に問題があると困ること、などについて書こうと思う。



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