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空気、読むか読まないか問題

今日は代休の小学生女子たちを連れて、スーパー銭湯に来ている。

昼間のスーパー銭湯は天国だ。

好きなだけお風呂につかり、飽きたらあがって漫画を読みあさる。快適なリクライニングシートは手元のボタンひとつでドリンクやデザートを注文できるし、本格的にお腹が空いたら部屋着のままレストランへ移動して、ガッツリご飯も食べられる。

そろそろお湯が恋しいな…と思ったら好きなタイミングでお風呂に入りに行き、ほかほかになって戻って、またのんびりと珈琲片手に映画でも観る。

タオルも完備されていて何枚でも使い放題だし、利用したものはすべて手元のリストバンドに記録されているため、館内どこへ行くにも手ぶらでOKだ。


まあ、最後の最後、支払いの際に一気に現実に引き戻されることだけが、唯一の欠点といえば欠点かな。

何時間いても料金は同じなので、午前中から満を持してやって来て、それぞれ好きなことをしながら一日中ゆっくりするのがうちの一家の贅沢な休日の過ごし方だ。

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そんなパラダイスであるべきところのいつもの銭湯なのだが、今日はなかなか混んでいて、リクライニングシートの空きがほとんどなかった。こどもたちが頑張って探してくれた唯一の空きスペースに滑り込んだら、なんと隣のオバサンが爆音でクイーンのライブビデオを観ているではないか。


音漏れがエグい。


なんでこんなものをコンテンツメニューに入れたんだろう。ここの担当者よ。

クイーンはアカンやろ、クイーンは。

この空間で音漏れを許される楽曲なんて、エンヤくらいしかないでしょうに。

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そう、このリクライニングシートの難点は、オーディオシステムがヘッドフォン接続ではなく、頭の部分の両サイドにスピーカーがついていて、音が外に漏れてしまうところなのだ。

みんながそれぞれのコンテンツを楽しむためには、自分の出している音レベルの把握が必要なのだが、世の中にはそれができない種類のひとが一定数いる。そのため、ここで騒音問題が発生しているところにちょいちょい出くわす。リラックスしに来ているはずの銭湯で、こんなストレスに囲まれて過ごすなんて絶対にお断りだ。


私は空気を読むのがわりと得意なほうだけど、周囲のひとがどうしようもなく困っている状況を見ると黙っておけないたちなので、そういう時はあえて空気を読まずに斬り込みに行く。頼まれたわけでもないのに。

うん、完全にただのおせっかいおばさんですよ。


過去にも、音漏れがひどくてモーゼの十戒なみに避けられていたお兄さんの席を即刻チクってスタッフに注意してもらったり、ある日爆音で漫才番組を観ながら熟睡してしまった隣のオッサンにいたっては、我慢の限界でテレビの主電源ごと強制終了してさしあげたこともあるくらいだ。

モニターの右下にはちっちゃい文字で遠慮がちに『音量は40まででお願いします』とテプラで貼ってあるのだが、肝心な40を超えているのかどうか、はパッと見ても分からない。本人がリモコンの音量ボタンを押した時にしか表示されないのだ。

音量が可視化されていて明らかに40を超えているのなら「ちょっと音量下げてもらえますか?」と声をかけられるのだけれど、いちかばちか言ってみて39だったりしたらどうしてくれるんだ、っていうこのシステム。もう早急に改正してほしい。

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こどもたちが映画を見ようとモニターをつけたので、ここぞとばかりに「音量は40までって書いてるからね?いくつになってるかちゃんと見てね?」とだいぶ大きめの声で注意しつつ、オバサンの方をチラチラと何度も見てみる。

うん。聞こえてんだか聞こえてないんだか、ふてぶてしくまあ微動だにしないよね。


そら、そうよねー。そういう種類の、お方ですよね。

わかってます。そのくらいこっちも。


おいオバハン、見えてんのんか?この但し書き。

いったい視力ナンボやねん!

オマエの耳、日曜か!←あ、アカン、これは歳がバレる言い回し(^0^;)


音量がいまいくつなのか、襟首つかんで問い詰めたい衝動に駆られる。


ダメダメ、こどもの前やでー、お母さん。

ここは穏便にね、穏便に。話せばわかる。


わかるんか!?あいつに。


どうしよう、ここは空気を読むべきか、あえて読まざるべきか。

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とりあえずちょっと落ち着こうと、問題をいったん棚あげして、イヤフォンを耳に詰め込み、持参したタブレットのウインドウを開いてみる。

いつもブラウザの片隅にいるnoteのTOPページを訪ねたら、坂爪圭吾さんのこの投稿があがってきた。


もう、出だしから吹いた。


なんて素晴らしい感性のひとなんだろう。

おむすび 投げつけろ??

???


なんなんだろう。意味はまったく不明だが、いまの私の気持ちにピッタリだ!!

痛快な気持ちで少し心が軽くなる。


よし、この調子でネットの世界に潜り込めば、あのオバハンのことも気にならんようになるかもしれへん!没入や!没入!!

心頭を滅却すれば火もまた涼しって言うしな。

うん。そやそや。なんでも気の持ちようや!


しかし、イヤフォンをしているのにも関わらず、左側から容赦なくフレディの全力の歌声が響いてくる。どうやらライブは佳境を迎えているらしく、観客のボルテージがどんどんあがっていく様子がチラリとモニター越しに目に入る。


くっそぉ、オバハンめー、負けへんぞぉ!!


心の中でふてぶてしいオバハンの顔面に特大おむすびを2・3個ぶつけながら、タブレットのボリュームを、どんどんあげる。

新しく結成されたAgapeの別ユニット、ヒップホップ担当のハイパーカミオカンデ。

すげー、いい!!

お寿司食べたい!!!

ってなるね。影響力マジすごい。


こっちも。

↓↓↓


よく行く焼肉屋なんだけど、「中ライスお待たせしましたー!」って運ばれてきた瞬間に、このセリフめっちゃ言いたい。

『これぜってー大盛りです!!』

知らないひとからしたら誰?この子たち?ってなるのかもしれないけど、この勢いとパワーを失わず、そのままどんどん突っ走ってほしい。

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ひとりでニヤニヤしながらハイカミのMVを見ていたら、いつの間にかクイーンライブが終焉を迎えたらしく、オバハンが席を立とうとしていた。


よっしゃ!なんや知らんけど、勝った!!勝ったで!!

あたしの勝ちやで!!

ウィー、ウィール、ウィー、ウィール、ロッキュー!ロッキュー!!!


ふぅー、よし、もっかいお風呂入ってこよっと。


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え?もしかしてクソババアはこっちなのか!?

自戒を込めて!!

ゴー!ウェスト!!!

サポートというかたちの愛が嬉しいです。素直に受け取って、大切なひとや届けたい気持ちのために、循環させてもらいますね。読んでくださったあなたに、幸ありますよう。