見出し画像

梅雨を感じるものたち

今週末あたりに近畿地方も梅雨入りらしい。
梅雨は家にいるとジメジメしてうっとうしいけれど、雨の中外に出るとしっとりとした空気の中で五感を刺激するいろんなものに出会える。

何といっても美しいのがアジサイの色彩。単純に赤、青だけではなくて、ピンクや水色、青紫、赤紫、白や黄色っぽいもの、クリーム色、一つ一つのガクが2色になっているものと豊富な色で楽しませてくれる。
そして、アジサイは花の種類が豊富。よく見るとガクの形がとがっていたり、くるんと丸くなっていたり、八重になっていたり、細かったり。
色と形の組み合わせは数知れず。

梅雨の香りと言えば、クチナシのあのむせぶような強い芳香。西洋ではガーデニアという名でよばれるそうだが、あの香りにふさわしい名前は「クチナシ」しかない。降りしきる雨の中、甘く漂ってくるクチナシの香りに包まれると、別世界に来たような不思議な気分になるものだ。

雨の中を歩くといろんな音が聞こえるが、子どものころから好きなのは雨が雨傘に当たるあのポツポツという音。傘の下でこの音を聞くと、まわりを雨に閉ざされた自分だけの空間を感じて、余計に雨の音が大きく聞こえた。

そして、もう一つ好きなのは、水田に降りそそぐ雨の音。周りの雑音がかき消してしまうような静かな音だけれど、よく耳を澄ますと聞こえる。もう、田植えを待つばかり。満々とたたえられた水面を雨がリンリンと打つ。
私にはその音が鈴の音のように聞こえ、田んぼの畔にたたずんではこの音を楽しむのが好きだ。

あとは蛙の鳴き声。昼間よりも夜によく聞こえる。そして、不思議なことに、たくさん鳴いていても、一斉に鳴くのをやめる瞬間がある。何かが近づく気配を感じたから?それとも、鳴き疲れたから?
あの大合唱がやんだ瞬間の、暗闇に漂う静けさと湿り気を帯びた密度の濃い空気は、梅雨ならではと思うのだ。

そうそう、梅雨の夜と言えば蛍を忘れてはいけない。蛍の光は一粒、二粒と呼ぶのがふさわしい気がする。それくらい小さくて、今にも消えそうにはかなげで。でも、そこにいるよ、と主張するように舞っている。
手の平にのせると這いまわる感覚がくすぐったくて、本当に虫なんだな、と感じるけれど、闇の中をゆらゆらと飛び回る光は虫ではなく、妖精じゃないかと思うことがある。

梅雨時期に食べるものならやはりビワ。するりと皮をむいてかぶりつく。ビワの時期は短くて、たくさんは食べられないので、甘くて深い味がすると満足。味が薄いと残念。
ああ、サクランボもあった。赤というよりもどす黒くさえ思えるアメリカンチェリー。見栄えほど味はしつこくない。でも、日本の佐藤錦を初めて食べた時、その素敵な味が見た目とぴったりすぎて、これぞサクランボ、いやこれはひらがなで「さくらんぼ」だな、と感じたのだった。

もうすぐ梅雨だ。今年も同じことを同じように感じながら過ごすのだろう。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!