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デザイナー就活で気づいた「見えないものを測る問い」の重要性

20卒の新卒デザイナーとして動いていた就職活動を終えました。

2年前、Photoshopも使えない状態からデザイナーとしてのキャリアを志し、大学を休学してIT企業の長期のインターンとして、実務経験を通してデザインを学んできました。

2年のデザイン修行を終え、ようやくデザイナーとしてのキャリアを歩む決心がつき、受けた1社目はポンポン選考が進んでいったのですが、最後の最後でなぜか面接官の質問の意図が読み取れず焦りまくって、不採用に。

その後、美大生の圧倒的なポートフォリオ(過去の作品集)を目の当たりにしてしまい、アウトプットで競い合うデザイナーの就職活動に更に自信を失ってしまいました。

めちゃくちゃ準備して挑んだ面接でドキッとした質問

デザイナー就活の洗礼を受けつつも、これじゃいかん!と本腰を入れ直したのが今年の4月ごろです。ポートフォリオをしっかり作り直し、メモの魔力を読んでひたすらノートと向き合い、めちゃんこ自己分析をしました。

「よし、もう大丈夫だ!」と思えるまで準備して、いざ他の企業へ面接に臨みましたが、それだけ準備してもドキッとされてしまう面接官の質問がありました。その質問が、

「あなたのデザインは、どのように成功したと言えますか?」
「あなたのデザインは、どんな指標で評価されましたか?」

というもの。

大体聞かれるであろう質問に対して答えは準備していたのですが、この質問は全くの想定外。その時はそれとなく答え、現在就職活動は落ち着いたのですが、今もこの質問はずっと頭に残っています。

見えないものを測る問いの重要性

2018年経済産業省から「デザイン経営宣言」が発表され、デザインの重要性が注目される一方、デザインがもたらす効果を測るための指標を設けるのはは大きな議論の一つとなっています。

実際「デザイン経営宣言」の中で、「デザイン経営」のための具体的取組の7つ目に、デザインの指標策定が挙げられています。

感覚的なものになってしまうものだからこそ、なぜこのデザインが良いか?を説明することは、今後より一層デザイナーに求められるでしょう。

しかし、これはデザインに限った問題ではありません。デザインにおいて、ビジネスにおいて、そしてより良い人生を歩むに当たって、あの時の質問のように、自分にこう問いかける必要があります。

「これが成り立つためには何が言えればいいだろう?」

「これが成り立つためには何が言えればいい?」

ハーバードビジネススクール教授のクレイトンクリステンセンは、企業がいかに失敗するかの理論を、個人のキャリアに応用して解説する「イノベーション・オブ・ライフ」を執筆しました。

本書でクリステンセン教授は、企業の戦略と同じように、キャリアの選択で失敗しないための一つの方法として、以下の問いかけをすることを説いています。

それが「これが成り立つためには何が言えればいい?」という問いです。

ディズニーも怠ったシンプルで重要な問いかけ

これはとてもシンプルな問いかけです。しかし、この問いかけを怠ったために、大きな失敗が起きたケースがありました。その一例がディズニーです。

ディズニーは創業当初、南カリフォルニア、フロリダ、東京の3つにテーマパークを開設し、立て続けに成功しました。

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しかし、パリ郊外に建設された4つ目のパークは、開業後2年で累積10億ドルまでの赤字に膨れ上がる事態となってしまいました。3つの栄光を収めた後に、なぜディズニーは失敗してしまったのでしょうか?

パリ・ディズニーランドの事業計画

実は、パリのディズニーランドの事業計画は、1. 総入場者数と、2. 入場者数一人当たりの滞在日数の仮説に基づいていました。

具体的には、パリの人口密度、天候、所得水準をもとに、年間1100万人の入場者を見積もりました。また、他の3つのテーマパークでは、ゲストの平均滞在期間は3日でした。

そこで、1100万人に3日をかけ、年間「ゲスト日」を3300万日と見積もったのです。この計算を元にホテルやインフラを建設しました。

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しかし、蓋を開けてみると、確かに開業一年目の入場者数は1100万人に達しましたが、一人当たりの平均滞在期間はわずか1日でした。(他の3パークは平均滞在3日)結果的にこの誤算が赤字をもたらしたのです。

なぜパリのディズニーランドで、お客は1日しか滞在してくれなかったのでしょうか?

思いこみによる戦略ミス

実はパリ以外の3つのテーマパークには、45のアトラクションが設置されたため、入場者は1日で全てを回りきれず、平均3日間で楽しく過ごすことができました。

しかし、パリでは開園当初15のアトラクションしかなく、なんと1日もあれば制覇できてしまったのです。結果的にパリのディズニーは2年で10億ドルもの赤字を出してしまいました。

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もし、以下のような問いかけをしていたら、15個のアトラクションしかないパークに客が3日も滞在するはずがないことに、ディズニーは計画の初期に気づけたことでしょう。

「これが成り立つためには何が言えればいいだろう?」
「立証されなくてはいけない仮定のうち、どれが最も重要だろう?」
「どうやってそれを検証すればいいだろう?」

しかし、ディズニーのような大きな組織でも、このシンプルな問いかけを怠ってしまったために、戦略を誤ってしまったのです。

自分の選択を測るものさしを身につけよう

「これが成り立つためには、何が言えればいい?」

こんなにもシンプルな問いかけはない。しかし、この単純な質問に答えることは決して簡単ではありません。

特にこの不確実な世の中だからこそ、僕らはひたむきに自分と向き合い、何が自分を動かし、自分は何を求めるかを考え、答えを出そうとする努力をし続ける必要があります。

「理想の人生を歩むため、この企業は何を与えてくれるだろう?」

例えば就職活動において、もしあなたが将来的に海外で働きたいのであれば、そのチャンスを企業は提供してくれるでしょうか?もしくは、海外で活躍できるだけのスキルをつけさせてくれるでしょうか?

ワークライフバランスを重視するのであれば、家族と一緒に過ごす時間を与えてくれるでしょうか?恵まれた同期と出会えるチャンスはあるでしょうか?今後のキャリアの可能性を広げてくれる師には出会えるでしょうか?

就職活動だけではありません。人生において、僕たちは選択の連続に迫われます。そんな時、自分にとって何が重要かを明確にし、数ある選択の中から何が自分にとって成功かを測るモノサシを持ちつづけることが重要です。

「あなたのデザイン / ビジネス / キャリア / 人生は、どのようにしたら成功したと言えますか?」

あの面接で問われた質問は、今後のキャリアを歩む上で何度も自分に問うべき質問だと、社会人になる前の僕は学んだのでした。

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