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新築の家

素敵な家にとても憧れていた。
小学四年生の時に両親が家を建てた。それまで借家を何か所も引っ越していたから嬉しかったと思うがあまりそういう記憶がない。多分転校したことに気を取られていたのだろう。それに小さな家だった。
結婚するまでずっとそこに住み、結婚してからはずっと同じ市内に住んでいる。商売をしていて住まいは仕事場の二階にある。義家族は母屋に住んでいる。結婚後すぐに母屋は建て替えられたけど私たちはずっと仕事場の二階に住み続け、子供たちは大きくなり進学を機に家を出て、今は私達夫婦だけそこに住んでいる。ずっとそこに住むとは思っていなかったがもう三十年も経った。
新築の家を見ると涙が出るようになった。最初は近所で建てている素敵な家。今はもうテレビに映る素敵な家を見ても、誰かに家を建てる話を聞いても涙が出る。私はレトロな建物が好きだから新築の家に住まなくても良いのに、でも涙が出て困って途方に暮れている。

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