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「サンタさんはいる」について、記憶に引っかかっているすてきな話

※はじめに

この話は、ぼくの完全な創作ではありません。

どこかで聞いたのか、見たのか、それが全く思い出せないのですが、いい話だな、と思って強烈に記憶に残っているお話に、細かい体裁を整えたものです。
どこかに残しておきたいという思いで文字にしました。

もしかしたら、幾人かの読んだ方は「ああ、聞いたことある」となるかもしれませんが、そういうわけですので、どうかご容赦ください。

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こうきくんは、6歳の元気でかしこい男の子です。
通っている保育園にもたくさん友だちがいて、いつも楽しく暮らしていました。

冬のある日。
保育園から帰ってきたこうきくんは、なんだか元気がありません。
心配に思ったおばあちゃんが、こうきくんに声をかけました。

「どうしたの、こうちゃん」

こうきくんはおばあちゃんに言いました。

「ねえ、おばあちゃん。」
「うん、なあに?」
「サンタさんは、いるよね?」
「ええ、いるよ。去年も、こうちゃんに絵本を持ってきてくれたでしょ?」
「うん…でも…」
「サンタさんがどうしたの?」
「みんなが『サンタさんなんかいない』っていうんだ」

こうきくんは今にも泣きそうです。

「あら、そうなの」
「ゆきちゃんが言ったんだ。『サンタさんはほんとうはパパとママで、プレゼントはおもちゃ屋さんで買ってきたんだ』って。それで、みんなも『そうだそうだ』って…」
「まあ…」
「ねえおばあちゃん、サンタさんはいるんだよね!?」

おばあちゃんは言いました。

「こうちゃん、みんながサンタさんはいないって言っても、こうちゃんはいるって信じてるんだから、それでいいじゃない」
「うん…でも、ぼくもサンタさんを見たことはないんだ。
赤いふくをきて、おひげがまっ白で、トナカイのそりでやってくるって絵本にはかいてあったけど、いつもぼくがねてるときにしかきてくれないから…」
「そっかそっか…それで心配になっちゃったんだね」
「うん…」

おばあちゃんは、こうきくんの頭をなでながら言いました。

「ねえこうちゃん、こうちゃんは、好きな女の子はいる?」
「え?」
「好きな女の子、いる?」
「…ぼくはさやかちゃんがすき」
「さやかちゃんが好きなんだね!いつから好きになったの?」
「うん…いつもいっしょにあそんでたんだけど、いつのまにかすきになった」
「そう…」

おばあちゃんはやさしく笑って、こう言いました。
「あのねこうちゃん、それは、『好き』が生まれたってことなの。何もないところに、ぴょこん、って」
「ぴょこんって?へんなの」
「そう、へんなの。でも、目には見えないけど、生まれてるのよ。だってこうちゃんは、前はなんともなかったのに、今はさやかちゃんが好きでしょ?」
「うん」
「サンタさんもおんなじ。見えなくてもちゃんといるもの、っていうのは、たあくさんあるのよ!」
「ぴょこん、って?」
「そう、ぴょこん、って!」

こうきくんとおばあちゃんは、いっしょに大きな声でわらいころげました。

おしまい

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