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スタイリストに一般の人の「似合う服」は分からない

注)スタイリストの仕事と「似合うファッションの提案」という視点での意見です。スタイリストという仕事そのものを否定しているわけではありませんので悪しからず。

「はっきり言って、洋服代の他にお金を払ってまで服を選んでほしいニーズなんて一部の富裕層にしかないよ」

シンデレラプランニングhttp://cinderella-planning.com/創業当時、一般顧客向けのファッション提案を模索する最中、起業の専門家を生業とする方からビシッと言われました。
「ファッションのアテンドサービスをやるなら富裕層向けに高額にして、ブランドからもマージンを取る仕組みにしないと無理」と一蹴。
「私がやりたいのは一般の方向けです。私くらいの歳の子でも、服を選ぶ事が苦手でプロに見てもらいたい人はいるし、その数は決して少なくないです!」と訴えましたが、「それエビデンスとれてるの?」と言われて押し黙り、悶々とした酸っぱい思い出です。笑

周りを納得させられるようなエビデンスもなんもとれず、ただ、世の流れがそうなっていると感じる嗅覚を頼りに手探りで起業して今に至りますが

あれから7年、やはり予想していた通りの時代になってきました。

今は「体験」にお金を払うことも当たり前になり、個の特性に特化した技術やサービスの提供が普及してきたと思います。例えばフィットネスの分野も個人の特性に合わせたコーチングが当たり前になってきたし、ファッションスタイリングを提供するサービスは年々増加し続けています。
そして「似合う」というキーワードがいたる雑誌やメディアでも使われるようになりました。

量産型の大衆向けから人それぞれに沿ったものへと変化してきている印象です。
(美容以外の業界でも起こっている変化も含めた こんな対談https://plusonelife-lab.jp/special/plus_u/talk/もしました。)

そんな中で、ファッションの分野では「似合う」を実現できる存在として「スタイリスト」を現場に投入する流れがあります。

しかし、私はこれに無理があると感じています。

実はこの、「ファッションスタイリストによる似合うファッションの提案」は私が創業時にやってみて「限界がある」という結論に至った形なのです。

感性は大切だけど、それが足枷にもなる

スタイリストが「似合うファッション」を提案できない要因、それは

感性がベースの提案だから

です。

ビフォーアフターをやっていって分かったのが、スタイリストの似合うと「思う」感覚でファッションを提案すると、必ず、そのスタイリストの好きな世界観がベースになるのです。

人間には感性があります。
それは「絵を描いて」と言われて、描きあげる作品が人それぞれ違うように、人それぞれ、素敵だと思い、形にしたいものは違います。

透けるような透明感、幽玄的な雰囲気を好む人もいれば、荒々しく野生的な健康美が好きな人もいます。

良い悪いで判断できない世界こそ「感性」です。

ピカソの絵を見て、芸術家たちが素晴らしいと評価する感覚が一般の私たちには簡単に理解出来ません。

その素晴らしいという感覚に正解不正解はありません。あえていうなら、より多くの人の印象に残り、心を揺さぶる芸術が「素晴らしい」なのでしょう。

そして、ファッションスタイリストは自身の感性を具現化するプロです。

だからクライアントが依頼する時、そのスタイリストが過去にどんな作品を作り上げてきたのか、ポートフォリオを確認します。

自分たちの求めるイメージと、そのスタイリストが持つ感性が近いかどうかが重要だからです。

では、今流行ってきている「似合うファッションの提案」はどうでしょうか?

依頼する個人はどこまで、そのスタイリストの過去の作品を追っているのか?
その作品と自分自身の相性は考えているのか?

シンデレラプランニングも、感性をベースとした「似合う」でビフォーアフターを提供していた頃は、たしかにお洒落な雰囲気にはなるけれど、お客様がみんな似たり寄ったりに仕上がっていました。

そして、お客様が体験後に自分で洋服が選べるようになったかといえば、これもノーで、選んでもらった服は着られるけど自分で選ぶことができない問題が生まれました。

考えてみたら当たり前で、お客様自身が落ち着くところ(=似合うファッション)と、スタイリストが良いと判断するもの(=感性で提案したファッション)が違うから、後者に合わせてその後のファッションを探していくのは困難なわけです。

スタイリストの提案を受けて買った服とワードローブが組み合わせられないという悩みも生まれました。テイストの違う服とアイテムを組み合わせても纏まらないのは当たり前ですよね。

そんなこんなで、お客様の「自分に似合う服を知りたい」というニーズがスタイリストの感性頼りでは叶えられなかったのです。

かといって、

パーソナルカラーも超微妙💦

と私は思っていました。

色が似合っても柄や素材によって微妙な気が...



典型的なパーソナルカラリストたち。
いつも同じような色の服を着て、首にスカーフを巻いて手を前に組んで、「似合う色でファッションコーディネートを提案します」と宣伝する妙齢の女性たちの集団が私には決してオシャレに見えませんでした。

そもそも、色だけで似合うファッションを提案するのが変だと思っていました。柄や素材で見え方って全然違うから。

最近はパーソナルカラーも若い子たちが学び始めてオシャレなカラリストさんが増えてきました。世代交代が起こっていると感じます。
でも今度は「パーソナルカラーだけで似合うファッションは提案できない」という認識も広まりつつあり、そこで新たな技術として骨格などの診断が注目されているのが、この市場です。

個人的な見解として、骨格をベースとした提案、体型を主としたアドバイスは着痩せの効果など一定の効果を期待出来ると思いますが、それ以上は難しいと判断しています。

似合わない服を着てる人って上半身だけでも大きな違和感があるもので、それはもうシルエットだけで語れない領域ですよね。

その点、88診断は色が4割、残り6割に形、柄、素材が含まれるので、パーソナルカラーで似合う色であっても、残りの形、柄、素材の要素が合わないと似合って見えないし、似合わない色でも残りの要因でバランス取れたら似合って見える。

その理屈が自分の中で、すごくしっくりきています。

実際に面白いのが、88診断を採用してからお客様が「こういうファッション、昔すごく好きでした」とか、「家にこういう雰囲気のアクセサリーあります」といった、もともとその人が無意識に好み、選んできたものに正解があるケースが殆どになりました。

「似合う、似合わない」はその人の歴史のどこか手がかりがあるものなのです。何故か惹かれる色、素敵だと思う空間と「似合う服」は繋がっています。

世の中に色んな技術があるけれど、自分が接して最も納得して支持できるものを私は推進しています。

最後になりますがタイトルの通り、スタイリストの仕事は「似合うファッションの提案」でないので、そのまま感性ベースでは、似合うファッションは分かりません。

ですが、やはりこの業界はファッションが大好きで、愛のある人が最も適任です。

だから、スタイリストが「似合う」を分析して提案できる技術を身につけるのは鬼に金棒だと心から思います。

これはメイクレッスンの実績からも確信している事なのですが、、またおいおい語りたいと思います😌





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