傘とビール。

寂れた飲屋街を慣れた足取りで進んでいく君を追いかける。待ってよ、なんて言葉は君には届かなくて。雨の中傘もささずに早足で歩く君はきっと泣いているのだろう。さっき振られたばかりのセンスのない男の事を想って。僕があいつなら、君に雨の中傘無しで歩かせたりしないのに、なんて思いながら君の後ろ姿を傘をさしながら追いかける。つまり、こういう所。僕じゃ君に追いつけない。寂れた飲屋街の端っこの傾きかけた焼き鳥屋のカウンターで君はいつも僕を待ってくれている。生ビールを2つ並べて。君より早く歩けるようになったら、君は僕を想って泣いてくれるだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?