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エルサルバドル “中米の日本と呼ばれる国” | ミュージック・ジャーニーvol.70

皆さん、民音ミュージック・ジャーニーへようこそ。

今回は、中央アメリカに位置する熱帯の国エルサルバドル共和国へ、駐日エルサルバドル共和国大使館の皆様とともにご案内いたします。

北太平洋に面するエルサルバドルは、美しい海岸線と複数の山脈を携える自然豊かな国です。面積は21,040平方km(日本の九州の約半分)と中米7ヶ国でもっとも小さいですが、国内には数々の魅力的な見どころがあり、観光客数は年々増加しています。

エルサルバドルの旅のしおり
・サンサルバドル市内の人気スポットを巡ろう
・サンサルバドルの市場で熱々の「ププサ」をほおばろう
・マヤ文明の遺跡を見に行こう
・エル・トゥンコビーチで美しい夕暮れを見よう

エルサルバドルってどんな国?

エルサルバドルは「中米の日本」とも呼ばれており、日本とはさまざまな共通点を持っています。旅をスタートする前に、まずはエルサルバドルの風土や国民性について見ていきましょう。

世界有数の火山国

エルサルバドルは25を超える火山を持つ世界有数の火山国です。これは、世界の活火山の約1割が集まる日本との大きな共通点と言えます。

イサルコ火山

なかでも「イサルコ火山」は、かつて中米でもっとも活発であった火山で、1770年から1960年までに50回以上の噴火を繰り返しました。はるか沖合からでも赤く燃えるような頂上が見えたことから、“太平洋の灯台”とも呼ばれていた特徴的なシンボルです。現在では噴火が収まっており、プロのガイドによる登山ツアーなどが行われています。

忍耐強く勤勉な国民性

エルサルバドルには、火山の噴火や地震、ハリケーンといった度重なる自然災害に見舞われた歴史があります。また、1980年に勃発した内戦をきっかけに貧富の差が拡大し、市街の治安も大幅に悪化していきました。しかし、2019年から課題解決へのさらなる取り組みに力を入れた結果、2022年には治安が大きく改善され、過去2年間で中米でもっとも観光客の多い国となりました。

加えて人口密度が高く、資源も限られていることから、国民は生きていくために厳しい労苦を背負わなければなりませんでした。そうした環境下で、エルサルバドルには自然と「忍耐強く真面目で働き者」な国民が増えていったとされています。

度重なる自然災害と限られた資源、高い人口密度という課題に忍耐強く向き合う風土も、日本と大きく共通する部分と言えるでしょう。

さて、今回の旅は、そんな雄壮で力強い国民性を象徴するエルサルバドル国歌「Himno Nacional de El Salvador」からスタートしましょう。

歴史地区でもある首都 サンサルバドル

玄関口のエルサルバドル国際空港に降りたったら、そのまま首都のサンサルバドルを散策するのがおすすめの観光ルートです。サンサルバドルは、スペイン語で「聖なる救世主」を意味する政治・経済の重点都市です。

人気の観光スポットが集まる中心街

サンサルバドルの中心街は、先進的なオフィスビルや商業施設が建ち並ぶ近代的なエリアになっています。一方、「国立劇場」や「国立宮殿」、「メトロポリタン大聖堂」、「エル・ロサリオ教会」といった数々の重要な建造物が残る歴史地区でもあります。

国立宮殿(左)とメトロポリタン大聖堂(右)

なかでもエル・ロサリオ教会は観光客にも人気のスポットであり、美しいステンドグラスから差し込む七色の太陽光が、時間を忘れさせてしまうほどの神秘的な空間を演出します。

また、国立劇場では国立交響楽団や国立バレエ団、国立民族舞踊団の公演が行われており、国内外作曲家のレパートリーや、クラシック音楽、現代音楽など、エルサルバドルの音楽を存分に楽しむことができます。

名物料理「ププサ」

日中の旧市街には、さまざまな露店や屋台が軒を連ねる市場があり、ショッピングや食事を楽しむ市民で賑わいを見せます。ここで是非食べておきたいのが、エルサルバドルの名物料理「ププサ」です。

ププサはトルティーヤと似た作り方の手料理で、小麦粉やとうもろこし粉を練って丸くした生地に豚肉や鶏肉、溶かしチーズ、豆のペーストなどを詰め、平たく伸ばしてグリルで焼きます。細切りの野菜や漬物と一緒に食べるのが一般的で、ベジタリアン向けのメニューもあります。

エルサルバドルの伝統的な民族音楽の中には、このププサという美食の習慣に影響を受けているものもあります。

コーヒーと山々の地域 サンタ・アナ

サンサルバドルからバスで約1時間30分北西に進むと、第2の都市サンタ・アナに着きます。サンタ・アナはコーヒーやサトウキビの重要な生産拠点でもあり、特にコーヒーの生産量は国内の農業生産の30%を占めるとされています。

エルサルバドルは、1985年に製造され世界的に広がったコーヒーの品種「パカマラ」の発祥地として有名です。エルサルバドル産のコーヒーは、「ハニープロセス」と呼ばれる独特な精製方法により、はちみつのように自然でまろやかな甘みを感じられるのが特徴です。

サンタ・アナには、ほかにも多くの観光スポットがあります。山歩きやコーヒー農園ツアーとともに、是非体験しておきたいのが、休火山内部に形成された「コアテペケ湖」で色とりどりに変化する絶景を堪能することです。

コアテペケ湖

“サーフィンの聖地”が点在する美しい海岸線

エルサルバドルの海岸線は、良質な波とアメリカからのアクセス性の高さから、“サーフィンの聖地”とも呼ばれるビーチが点在しています。五輪の予選を兼ねた国際的な大会も開催されるなど、エルサルバドルは「サーフシティ」としても世界中の注目を集め始めています。

サンサルバドルからほど近い「エル・トゥンコビーチ」は、海に半分沈んだ大きな岩がトレードマークの国内を代表するサーフスポットです。そのほかにも、2021年にISA(国際サーフィン連盟)の世界大会が開催された「エル・スンザル」や「ラ・ボカナ」、“ビットコインビーチ”の異名を持つ「エル・ゾンテ」など、波質の異なるビーチが多数存在しています。

エル・トゥンコビーチ

エルサルバドルの海岸では、クンビアやサルサといった国内外のトロピカルなリズムが流れています。ビーチフェスティバルやコンサートなども開催されており、クンビアやサルサとレゲトンのスタイルと融合させた音楽を披露する現代アーティストも活躍しています。

エル・ゾンテ

エルサルバドルの文化・芸術

エルサルバドルは周辺の中米諸国と同じく、植民地時代にさまざまな民族や文化の影響を受けています。しかし、1821年に独立を果たして以来、従来の文化と新しい息吹を織り交ぜながら、独自の文化が醸成されてきたのもエルサルバドルの特徴です。

マヤ文明の古代遺跡

中米諸国にはマヤ文明の遺跡が数多く残されていますが、マヤ文化圏の東南端にあたるエルサルバドルには、中心地とは異なる個性的な遺跡も存在しています。なかでも、1976年に発見されるまで1300年以上も眠り続けていた「ホヤ・デ・セレン遺跡」は、アメリカ大陸のポンペイと呼ばれるように、火山の噴火で埋もれた古代の村がそのまま残され、当時の生活が鮮やかに読み取れる保存状態の良さから、1993年にはユネスコ世界遺産にも登録された貴重な遺跡です。

多様な文化イベント

サンサルバドルの北東約47kmに位置する古都スチトトは、国内を代表するコロニアル都市で、同国最大の人工湖を擁するとともに、さまざまなイベントが開催される文化の街でもあります。毎年2月に開催される「国際芸術文化祭」や、8月に行われる「コーンフェスティバル」、11月の「スチトト国際映画祭」など、国際的な文化イベントが毎年開かれています。

古都スチトトの街並み

また、スチトトは伝統的な藍染めの町としても知られており、工場では藍染めが高級な服やバッグ、靴などの現代的な製品にどのように使われているかなどを実際に見学することもできます。

エルサルバドルのお祭りを語るうえで見逃せないイベントとしては、スチトトの近くに位置するネハパで1922年から行われてきた「火の玉祭り」が挙げられます。これは、その名の通り、布を丸めた玉に火をつけて投げ合うユニークなイベントです。

火の玉祭りの起源は、1658年に起きたサンサルバドル火山の噴火にあるとされており、そのときの被害を忘れずに記憶しておくための伝統行事という説が有力です。

ラ・パルマの手工芸品

ラ・パルマはエルサルバドル北部に位置する手工芸品で有名な職人の村です。この村には、100を超える工房があり、木や陶器、革製品にカラフルな幾何学模様を描く作業が行われています。

この模様を村民に教えたのは、エルサルバドル出身の世界的な芸術家「フェルナンド・ジョルト(1949-2018)」です。ラ・パルマにギャラリー「セミージャ・デ・ディオス」を立ち上げた彼は、文化活動として民芸品の作成手法を村民に広めるコミュニティを築きました。

その結果、ラ・パルマの手工芸品はエルサルバドルを代表する産業品の1つにまで発展を遂げました。現在ではお土産として愛されているのはもちろん、実際に手工芸品を作れるワークショップも観光客に人気です。

大使館推薦音楽家

最後に、駐日エルサルバドル共和国大使館が推薦する音楽家をご紹介いたします。

SI, MI CHIAMANO MIMI (OPERA LA BOHEME)-Gracia González

<Gracia González>
エルサルバドル出身のソプラノ歌手。難易度の高い声楽パートを担い、国内外の数多くのコンサート、リサイタル、オペラなどに出演している。

EL CARBONERO (THECOAL PICKER, FOLKLORIC SONG OF EL SALVADOR)-OPUS 503(Lyrical Pop Trio)

<OPUS 503>
ホセ・ゲレロ、マウロ・イグレシアス、エサウ・オソリオで結成されたポップストリオ。さまざまな音楽賞を受賞し、ニューヨーク、ロサンゼルス、セビリア、マドリードなど世界の主要都市でコンサートを開催している。

EL ATOL DE ELOTE (CORN PUDDING, TROPICAL MUSIC)-Jhosse Lora

<Jhosse Lora>
エルサルバドルのサルサ、メレンゲ、クンビア音楽を代表する歌手。50年を超える音楽キャリアを通じて30枚以上のアルバム制作、175曲以上の作曲を行い、国内で多くの賞を受賞している。

皆さん、エルサルバドルへの音楽の旅はいかがでしたでしょうか。
音楽の旅はまだまだ続きます。次回もどうぞお楽しみに。

協力:駐日エルサルバドル共和国大使館

写真提供:El Salvador Travel、Ministerio de Cultura de El Salvador、MITUR El Salvador

Min-On Concert Association
-Music Binds Our Hearts-

ご案内

この記事は英文での提供もしています。
https://www.min-on.org/14884/min-on-music-journey-no-70-el-salvador/

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