記事をお金としか考えられなくなったとき、私はライターではなくなった

Webライターは記事を書けばお金がもらえる仕事であり、大抵は文字単価のことが多いので記事数を増やせば増やすほど収入は上がるという簡単な仕組みになっている。

だから「ライターは誰でもできる仕事」「即金性がある」なんて言われるけれど、私は正直にいうとお金稼ぎだけを目的にやってはいけない仕事だと思っている。

なぜなら、ライターの仕事も他の仕事と同様に「クライアントへの貢献度」が大切な点だからだ。

お金稼ぎに注力したらライターとして大事な視点を見失った

Webライターは、書く仕事だ。しかし、ただ文章を長々と書き連ねればよいというわけではない。読者が求める情報を的確にわかりやすく伝えるのがライターの本来の仕事だ。

そのためには、どんな情報が求められているのかをリサーチしなくてはいけないし、どのように書けば伝わりやすいか、入稿までするのであれば見やすさも考えなくてはならない。

私もそんなことはわかりきっていたはずだった。ただ、ある程度仕事をこなせるようになった頃、私は収入を上げたいと思いライターとしての収入目標を掲げるようになった。

月収〇万円チャレンジのようなことをしたこともあるし、年間目標に月収〇万円達成と記載したこともある。

去年は、月収30万円を安定的に稼ぐという目標を記載した。そのおかげかわからないが、昨年の途中から月収30万円を安定的に稼げるようになった。

そのため、私は今年も売上の目標を立てていた。当初は「50万円稼ぐ」にしたけれど、途中で100万円稼ぎたいなぁと思い目標を100万円に変更した。

そして目標を宣言したからには達成しなければ…!という気持ちになり、私は年明け早々仕事量を増やし始めた。

3月には今までに経験したことのない膨大な作業量をこなした。その数は6000字×40記事+3000字×10記事程度。ほかにも数件請け負っていて、文字数は30万文字程度・本数でいうと50本を超える量だった。

今の私なら、そんな無謀なことはやめろと言いたいところだが、当時の私は「やればできる!これが達成できたら50万円突破だ~!」と、お金にしか着目していなかった。

そして、執筆にあたるうち私は書くのが楽しくなくなってきてしまった。それは、私がライターを心の底から"好き"で誇りを持っている仕事だったからだと思う。

お金はたしかに欲しい。だけど、それよりも私はライターという仕事を通して感謝されたり、上位表示されているという事実を見たりすることが嬉しくて仕事を続けていたのだ。

ただ、お金を稼ぐという自分の欲が前へ前へと出ていくたび、私は記事への熱量がこめられなくなっていた。なぜなら、どれだけ少ない工数で記事を書き終えられるかに焦点を当てるようになっていたからだ。

単価が変わらなくても記事の量を増やせば収入は増える、そんな甘ったれた考えで行動をした私は成果の出る記事が次第に書けなくなっていった。

お金を目標にする前は、クライアントさんに「今月書いてもらった記事も上位に表示されています。いつもありがとうございます」という連絡がたくさんあった。

私はそれがとても嬉しくて、どんどん良い記事を書きまくろう!と執筆に前向きになれていた。

ただ、たくさんの記事をそれ以前の品質と同等レベルで仕上げるのは並大抵のことではなかった。私は毎日1万5,000~2万文字近くを執筆することになり、何日も徹夜で作業をすることが続いた。

ストレスで作業効率は落ち修正依頼も多くなった。また少ない時間で仕上げなければならないため、以前と同じ品質の記事を書くことも難しくなっていた。この記事では上位表示されないだろう…と心の中で気づいていても、それをどうにかできない状況に歯がゆさと罪悪感を抱いた。

納期に追われながらも納品を果たした私は、3月に50万円を突破した。収入だけを見ると、喜んでよい数字だ。ただ、私はまったくもって喜べなかった。むしろクライアントさんにそのお金のすべてを返金したいとさえ思った。

それくらい私のなかでは納得のいかない記事になってしまっていたし、はっきり言ってこんな仕事をする自分はライター失格だと思った。

読者が求めている情報をわかりやすく正確に伝える、ときには面白おかしく情報を発信できる、そんなライターの醍醐味を自身の収入を上げたいというエゴの塊でどこか遠くに忘れてしまっていたからだ。

そんな底辺のような仕事の仕方でクライアントさんからお金をもらっている自分が憎くてしかたなかった。

お金はあっという間に思考を変えてしまう、危険なものだと改めて実感した。

収入ではなく「クライアントへの貢献度」を目標にする

世の中には収入を上げることを目標に置いたとしても、しっかりと成果を出すことに注力できる人も多くいると思う。たぶん、2つのことを同時に考えられる器用な人なのだろう。ただ、私にはそういう思考を持つことが難しかった。

だから、私は3月以降収入を目標として掲げることを今後一切やめることにした。(もちろんこのくらいになれればいいなという基準はあるが。)その代わりに渾身の記事を制作して、クライアントへの貢献度を高めることを目標にした。

クライアントへの貢献度を高くすれば、仕事量を増やさずとも収入は上がることが多い。なぜなら、成果の出る記事が書けるライターをクライアントは求めているからだ。

だから、とにかく質にこだわっていれば自分から収入を追う必要はそもそもないのではないかと気づいた。

その後、私はより質の高い記事を書けるようにするため空いた時間には担当ジャンルに関する知識を身に付けられる本を読んだり、わかりやすいと思った記事を写経したりした。

また、ライターだけ続けていても多角的な視点を得られないと思ったためディレクターに挑戦したり、まだ携わったことのないジャンルの案件に携わったりしている。

おかげで、少しずつではあるが成果の出る記事を書けるようになってきた。先月書いた記事はすべて上位表示されているようで、クライアントからもお褒めの言葉をいただけ、色々な仕事も任せてもらえるようになっている。

正直、ライター3年目なのにこんな失態を犯している自分が情けなくて仕方ない。ただ、今回の一件で私が収入を第一目標に掲げると質の高い仕事ができなくなることがわかったのは、良い経験だったのではないかとも思う。

フリーランスの収入は青天井で、Twitterには毎月50万とか100万とか稼いでいる人がうようよいる。月収報告をしている人もたくさんいるから、そこにたどり着きたいと思ってしまうこともあるかもしれない。

ただ、その人達は成果をしっかり出しているからそれだけの収入がついてきているのだということを忘れてはいけないのだ。そして、その仕事をするのは並大抵ではない。

お金を稼ぐことしか見えなくなってしまったのだとしたら、クライアントはもちろん自分のためにも一旦手を止めて、本当にそれでよいのかよく考えた方がよいかもしれない。

何も考えずにお金のためと思って続けていると、クライアントの信頼を失い仕事がなくなってしまったり仕事の楽しさを見失ったりする可能性があるから。実際、私は仕事の楽しさがわからなくなっていたし、信頼も失っていたと思う。ただ私の場合はそこで一度立ち止まり、早い段階で軌道修正ができたから仕事を続けられているだけ。

もし、あの一件の後も変わらずにただただ売上を第一目標に掲げて行動していたら、私はあっという間に仕事がなくなっていただろう。今でも信頼を回復できているのかわからないけれど、依頼はたくさんいただけている。しかも、ありがたいことに収入を第一に考えていた当時よりも現在の方が収入は多い。

収入はたしかに大事な点だけれど、私はこれからも売上を第一目標に掲げることなく、質の高い記事作成などクライアントのために私ができる精一杯の対応は何か常に考えながら、仕事をしていきたいと思う。


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