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わたしとボカロ曲 - 『あめふるはこにわ』の話。

しあわせになりたい、とわたしは良く口にする。

別段具体的な"しあわせ"の想定があるわけではない。彼氏が欲しい?お金が欲しい?褒められたい?愛されたい?実際にそれがあったところで自分が幸せになれるのかなんて、それを持っていない今のわたしには分からない。
主題は"しあわせ" でなくてもいい。我々は常に、知っていることしか分からない。だからこそ、知らないものを求め、執着し、そこに憧れを覚えるのだ。

(前回同様、このnoteも自分語りが中心になる。それを承知の上で読んでほしい)

あめふるはこにわ 【初音ミクオリジナル】
http://nico.ms/sm7710213

ELECTROCUTICAの曲が好きだという人は、きっとこのnoteを読んでいる方にもたくさん居るだろう。音楽性の話はわたしの語るところではないし、先駆者もたくさん居る。なのでここでは語らない。
聴いたことがないという方はまずはなにも考えずにこの『あめふるはこにわ』を聴いてほしい。

箱庭療法、というものをご存知だろうか。

箱庭療法(はこにわりょうほう、独: Sandspiel Therapie、英: Sandplay Therapy)は、心理療法の一種で、箱の中にクライエントが、セラピストが見守る中で自由に部屋にあるおもちゃを入れていく手法。――Wikipediaより引用

多くの歌詞解釈者により、『あめふるはこにわ』は箱庭療法をモチーフにした曲だと綴られている。故に、ここでもその解釈を採用したいと思う。
心理療法が必要とされる人。というと、やはりなにかしら世間から外れた"普通ではない"人、なのだと考えられる。

普通ではない、ということ。
きっと誰もがこれについて考えたことがあるのではないだろうか。

例えば、学校。
例えば、会社。
例えば、家。友達。社会。世界。なんだっていい。

そこから自分は外れているのだ。そこにいるのに自分はそこに居ないのだ。分かり合えないのだ。自分は"普通ではない"のだ!
……そんなことを、ふと考えたことがないだろうか。

自分と他者の違い。普通だということ。自分は他者とは違うのだということ。
それは外見的な違いでも内面的な違いでも環境的な違いでも、なににしてもそうだ。
わたしたちは決定的に、どうしようもなく、違うのだということ。

普通を、目指してみました。

これが、この曲の投稿コメントであり
わたしの捉える『あめふるはこにわ』の主題である。

――

わたしが思うに、この世界は普通である方が生きやすく造られている。
というよりも、生きやすいことが普通であるという証拠であるように思う。そもそも、観測者であるわたしの周囲の環境により普通は変動する。わたしの周囲だけの世界においてきっとわたしは普通である。例えばTwitterのタイムラインとか、だ。
しかし、それはわたしの世界であり、普遍的なこの世界ではない。

誰だってしあわせになりたい。生きやすく生きたい。故に、"普通ではない"我々は普通であることを目指そうとする。

ところで、これを読んでいる"普通ではない"方々。
ねえ、君たちは本当に「普通になりたい」なんて考えているのか?

もっと求めたい もっと光りたい 
もっと愛したいけれど 
この世界は 誰かが造っているんだ 
誰かの悪夢が覚めるなら 従わなくちゃ 
こころを殺せば、楽だから

『あめふるはこにわ』で初音ミクはこう語る。

もっと、もっと、もっとしたいことがある。
けれどここはわたしの世界ではない。だから仕方ない、仕方ないから、楽だから、『あめふるはこにわ』の初音ミクは、普通を目指そうとする。

ねえ、君たちの、我々の本当の願いはなんなんだ?
普通を目指してみた彼女はしあわせになれたか?
本当に求めているのは、自分を曲げないままにしあわせになること、ではないのか?

雨の中で唄えば幸せになれるの? 
生まれた事が暴力で、過ぎ往く事が苦痛でも 
嘲笑を浮かべていられるよ! 
なんてかたるのが人間なら 
それなら、私は機械がよかった。

我々は常に、知ってることしか分からない。だからこそ知らないものを求める。たとえば普通を。たとえば生きることを止めることを。機械になることを。しかし求めても求めても、この初音ミクも我々も、所詮は求めたなにかにはなることができない。『あめふるはこにわ』の初音ミクは、最後まで救われない。

だからこそ、わたしはこの曲を愛している。

――

ところで、このnoteの主役はボカロである。機械である。『あめふるはこにわ』で機械になりたいと叫ぶのもまた、機械である初音ミクなのだ。

全体を通して本気で自分語りしかしていない中で今更野暮だとかなんだとか言うのもちゃんちゃらおかしいのだが、これ以上の野暮なことを語るよりも、こう問う方がいいだろう。

人間を憎み機械になりたいと叫ぶ機械の初音ミクは、一体本当は何を望んでいるんだ?

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