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強くなれるもの

私は普段仕事に行くとき、割とおしゃれをしている。割と、「生活感ないよね」と言われるくらいにはおしゃれをしている。それでいい。私は全部外食だし、掃除や洗濯なんてみんな召使いがやってくれるわよ。って顔をして歩いてるし、仕事してる。(カンジ悪い)

しかし、これを買った日だけはダメだ。長ネギだ。どうしても、スーパーのレジ袋から露出した長ネギのパワーには負けてしまう。どうがんばっても、レジ袋から飛び出た長ネギは、生活感丸出しだ。さしずめ今日の夕飯は鍋かなんかだろう。「料理できなそう」といわれてきた私に、一気に「この人料理します」というレッテルを貼ってくれる、レジ袋から露出した、長ネギ。

こちらの羞恥心などおかまいなしに、凜とのびゆく長ネギ。

ここで長ネギ以外がひどく暗闇なことに気がついてくれただろうか。

そう、夜だ。(見ればわかる)

私は、夜の暗く何もない道を歩くのが非常に苦手だ。怖いのでいつも歌いながら帰る。正当防衛だ。何もわたしは悪くない。しかも、最近ただでさえ怖かった線路沿いの道に、こんな恐ろしい看板が立てられた。

鬼やん.......................

なんてことをしてくれたんだろう、ここの家主は。

ただでさえなんかゴミとかで荒れてて「ヤバイ」感はあったのに、線路の踏切の赤いライトのせいで「ヤバイ」感がさらに増している。

この道を通る時はなるべく空をどこまでも高く見つめて大きな声で歌いながら通るようにしている。なるべく明るい曲で。そして、今日もその道を通って帰らなければいけない。

しかし、なんだろう。今日は長ネギを買ったんだ。

なんだろう......この湧き上がる思い......このパワーはなんだろう....

今日なら....いやこの長ネギを持っていればあの道も通れる気がする.....

刻一刻と、鬼の掲げられたその道に差し掛かってゆくも、私の心は弾まない。むしろ、穏やかだ。(いつもなら、遠くに鬼が見えた瞬間ドキドキしている)

いける気がする。

今日は歌でごまかしたり、星が綺麗だねとかでごまかさずともその道を通れる気しかしなかった。

鬼まであと....5m......3m..........1m..........ふぁっっっっふぁっっ!!ふぁっっっ


ちょーヨユー☆


まじ卍


長ネギまじ卍。

長ネギを持っていると、もしかしたら強くなれるのかもしれない。ずっと、「風邪の時にはネギ。」と言い聞かされていたが、長ネギはなんと、心身共に強くしてくれる(食べずとも)可能性が非常に高い。考えてみればレジ袋から長ネギを露出させながら歩いて、ナンパされたりレイプされたり、その他怖い目にあった事はない。

では、他の食材ならどうだろう?

例えば、オイスターと豆板醤で炒めれば最強の、無味無臭代表この方

キャベツだ。

味気のなさと、たまに葉っぱの間からでてくる虫のおかげで野菜ランクとしては下層のこの方を、小脇に挟んで、あの鬼の道を歩いてみた。

看板の下にキャベツをお供えしたかった。(ふざけてすいません。という意)普通に怖かった。普通に呪われそうだった。「ふんっっそんなキャベツで俺に勝てると思ったのか?」と鬼に言われた。絶対言った。絶対言われた。私からキャベツにも、「無理させてごめんな。」と言ってやりたい気持ちになった。肩を叩いてなぐさめてやりたい。「やるだけやったよ、お前は。でも無理だ、お前のその無味無臭具合であの鬼に抵抗しようなんて。」


続いて、貧乏酒飲みの間に絶大な人気を誇る、チリワイン「アルパカ」

みんな大好きアルパカ。

を小脇に抱えて、あの鬼の道を歩いてみようと思った。

怖くて

3m手前くらいでアルパカを開けてラッパ飲みをしてしまった。ハハ。

ダメだった。だいたい、貧乏が食らいつくように求める安ワインなんかでこの鬼に太刀打ちできるはずがない。キリストの血じゃなきゃ意味がないんだ。(は?)

他にも実はトマトや、チーズなどを小脇に抱えて通ってみたこともある。写真映えしなすぎたので、撮ってないだけだ。でも、写真映えしないだけあってどれも役不足だった。

やはり、どんなレジ袋にも一生はまらないアウトローさと、食べればたちまち息を臭くさせる傲慢さをもちあわせた長ネギ。君じゃないとダメなんだ。

君がいないと、強くなんて、なれないんだよ。


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