小学校高学年の時の話。

私は社会科見学と言えば、ちびまる子ちゃんの「まるちゃん　社会科見学に行く」で見たお菓子工場のイメージがとても強かった。まるちゃんが出来立てのお菓子をおいしそうに食べているシーンにはすさまじく憧れた。自分たちも早く工場見学したいとワクワクした。

そんなある日、待ちに待った社会科見学の場所が決定した。

なんと未成年丸出しの小学生がビール工場。
クラスはどよめいた。しかし小学生の私たちが大人の決めた事に抗うことは到底できなかった。

社会科見学当日、クラスの人間たちは誰一人と目を輝かせることなく工場を見学していた。正直見てもよくわからないし、飲んだこともないし、ホップとヒップの違いもわからない。
工場の説明をしてくれる人がビールのできる工程を教えてくれたが、しばしば「大人になったら飲めるよ」「大人になったらわかるよ」と言っていた。その人もなんで子供がビール工場見学なんだと疑問が渦巻いていたと思う。

工場見学も終盤に差し掛かり、ビールのおつまみみたいなスナック菓子がみんなに配られた。まぁ、普通の子袋に入ったお菓子。工場に来た特別な感じとかも全くなかった。でも与えられたからには食べる。

そのお菓子を黙々と食べていると、次に衝撃的な光景を目にした。

飲んでやがる。

なぜビール工場見学だったのか謎が解けた瞬間だった。
隣のクラスの先生が苦笑いしてその光景を見ていたところを見ると、この先生が独断で行き先を決めたのだなと思った。

今だったらネットで炎上なんてこともあったのかも知れないけれど、昔はそんな時代じゃなかった。野放し。

って言うか子供の貴重な時間を使ってまでそんなにビール飲みたかったんかい！先生！

子供達にはビールよりもほろ苦い、先生がビールをおいしそうに飲んでいる顔が忘れられなくなる社会科見学であった。

#あの夏に乾杯