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復活ノ狼煙的蒸気機関車ノ汽笛

 この「ミナカミハートライターズ」は町内在住あるいは町内出身の5人の女性が、ユネスコエコパークに登録されたこのまちの価値と魅力を「水・森・人」のテーマで綴り、日常の暮らしの中で得た気づきや関心や感動を、生活者の目線で記して・伝えて・広める取り組みである。
今回はこの場をお借りし、筆者がいま一番伝え広めたい事柄を記させていただく。番外編として(番外編多めで恐縮です…)。

今年、みなかみに蒸気機関車が走る。

以前は積雪期を除いて毎週末高崎〜水上間で運行されていたが、コロナ禍となり観光客の減少もあってか、みなかみのまちで汽笛の音を聴くことがここ最近は少なくなっていた。

なので、この春久しぶりに「SLぐんま みなかみ」号が運行されることを知った時は心躍る思いがした。というのも実は筆者、この蒸気機関車には並々ならぬ想い入れがある。特段、鉄道ファンというわけではないのだが…

水上駅を出発する「SLぐんま みなかみ」号

まず、みなかみを走る蒸気機関車のことを知ったかぶり気味に紹介したい。

同じに見える蒸気機関車であっても群馬には実は2台存在している。正面の銘板と動輪の数、そしてよく聴くと汽笛の音が少しだけ異なる。
※C61の方が甲高い音、D51の方がずっしりとお腹に響く音、個人差あり

D51形498号機(1940年製造)

「デゴイチ」の愛称でよく知られるD51形は国内で最も多く製造された貨物をけん引するための力持ちの機関車である。4つの動輪が特徴。
※D51のDは動輪が4つであることからアルファベット4つ目の頭文字に由来する

出典:「風と蒸気」


C61形20号機(1949年製造)

「シロクイチ」は力持ちのデゴイチとは異なりスピードを重視した機関車で、主に旅客輸送で活躍した。大きな3つの動輪が特徴。
※動輪が3つだからC。C61形の20番目の機関車ということで「C61 20」となる

出典:「風と蒸気」

ここまでは資料を見ずとも空で言うことができる。
(自慢げで恐縮です…)

70~80年も前に製造された機関車が、何故今もなお現役で走り続けていられるのかと疑問を抱かれると思う。昔も今も整備や運転、検査に携わる方の技術や情熱はもちろんであるが、とりわけ最も大きな理由としては沿線地域の方々のおかげであるといわれている。当記事ではこの部分を一番のトピックとしてご紹介したいところである。


16年もの間、後閑駅前に静態保存されていた

D51 498は1940年に製造されてからずっと走り続けてきたわけでなく、一度は現役を退いて隠居をしていた過去がある。1972年に引退し、しばらくの間は上越線後閑駅の構内に展示保存されていた。地元の方には当時のその様子を知る人が多くおられると思う。その後、1988年に復活を遂げるのであるが、常識的に考えれば16年も動いていなかった鉄の塊が、火を入れたからと言ってまた動くなんて信じがたい。だが、これを可能にしたのは地元ボランティアによる熱心な保存活動のおかげだという!錆びやすく腐りやすい鉄は雨風に弱く、蒸気のとてつもない圧力を生み出しながらも人の手によって運行される機関車は精密機械に近いため、復元の作業は困難を極めるといわれている。たまたま筆者は当時保存活動のボランティアをされていたという方にインタビューをしたことがあるのだが、最も印象的だったのは以下の話である。

「戦中戦後の貧しい時にSLが汽笛をあげながら物資を届けに来てくれて、とても嬉しかったことを覚えている。いまも汽笛を聴くと、たまに当時の気持ちを思い出すんだよ。」

保存活動はその恩返しのようなものであったという。

D51 498は1988年の復活の際、来日していた世界でも有数の豪華列車「オリエント急行」の客車を上野~大宮間でけん引した。保存活動をされていた方が、もしその時の汽笛の音を聴いていたとしたら涙必至であったであろうことは想像に難くない。

一方でC61 20は伊勢崎市の華蔵寺公園遊園地に37年ものあいだ静態保存されていたが、2011年東日本大震災の年に復元を遂げた。復活運行では「がんばろう日本!」と書かれたヘッドマークを掲げ、震災復興の希望の光となった。



筆者の想い入れとは、この2台の蒸気機関車を宣伝したり、関連するイベントを企画したり、現SL広場をリニューアル設計するなどの仕事を担当することとなり、それらの仕事を通じて上記の物語を知ったことで、ますますこの仕事に興味を持ち、その関係でみなかみの地を訪れる機会が多くなり、そのまま移住に至ることとなった。この一連のストーリーに対してである。

蒸気機関車と地域との関りをもっと知りたくなり、本場英国の保存鉄道を見に行ったこともある。

英国では「Heritage Railwayヘリテイジレイルウェイ)」と呼ばれ、昔の蒸気機関車を復元し、私有の鉄道を走らせながら動態保存を行っている。観光目的でも運行させることで、観光による地域の外貨獲得にも寄与している。これらすべての管理運営を地元ボランティアが組織的に行っているという。蒸気機関による産業革命の発祥、英国人の鉄道遺産に対するリスペクトと情熱には大変驚いた。

コッツウォルズ地方を走る保存鉄道
車掌も運転士もすべてボランティアだという!


みなかみにも宿る「蒸気機関車と地域との関り」を「私たちのPRIDE」というニュアンスで表現したポスターを2017年に制作したのだが、栄えある広告賞をいくつかいただくこととなり、この地と蒸気機関車に対する想い入れがますます深まることとなった。

2017年に制作した「SLぐんま」の物語を伝え広めるポスター
SLは地域みんなの誇りであるということを伝えたい

第65回「日本観光ポスターコンクール」
【日本観光振興協会 会長賞】受賞

https://www.nihon-kankou.or.jp/home/userfiles/files/autoupload/20170524130317.pdf

手前味噌で恐縮です…。

上掲は5年も昔の話であるのだが、不撓不屈の精神や、地域への誇りや愛着を体現した蒸気機関車の汽笛の音は、今も変わらず心を揺さぶるものがある。

移住を検討し出したとき、
家で汽笛の音が聴こえること…
は優先順位の高い条件でもあった。

何が言いたいかというと、、、

この春
4.29祝・金
5.4祝・水
5.7土

の3日間は、
久しぶりに蒸気機関車がみなかみを走り、
久しぶりに汽笛をこのまちへ奏でるということ。

それが、単純にとても嬉しく、このまちに暮らしていてよかったなと実感できる事柄であり、ついつい記してしまった。

蒸気機関車の運行がきっかけとなり、コロナ禍でかげりを見せた観光の起爆剤となれば、もっと嬉しい。

筆者にとって蒸気機関車は、ユネスコエコパークに象徴するこのまちの森と水と人と同じくらい、誇らしく愛着を感じる存在なのである。


■INFOMATION

SLの運行再開を記念して、
SLが水上駅へ到着したときにだけ開店するポップアップイベント

『水上駅前汽笛商店』@水上駅前SL広場

を開催します。

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水上のおいしくてたのしいお店が勢ぞろい!

【4.29祝・金】出店
■手づくりおにぎり|谷川岳の麓のおにぎりやfutamimi
■自家製パン|G☆TRY BAKERY
■自家焙煎コーヒー|Tanigawa Coffee Roastery
■セレクト雑貨|GENRYU

【5.4祝・水】出店
■手づくりおにぎり|谷川岳の麓のおにぎりやfutamimi
■焼き菓子|旅する台所
■ハンドドリップコーヒー|谷川岳の麓のおにぎりやfutamimi
■セレクト雑貨|ナヘレ

【5.7土】出店
■ホットドッグ|yuju company
■焼き菓子|旅する台所
■ハンドドリップコーヒー|DOAI VILLAGE
■おみやげ・雑貨|道の駅 水紀行館

※商品メニュー・店舗は予告なく変更の場合あり

汽笛の音が聴こえたら、SL広場へGO📣
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イベント情報はこちらから
http://www.enjoy-minakami.jp/event.php?itemid=2014

主催:(一社)みなかみ町観光協会、土合朝市実行委員会、GENRYU


◎文・写真:Kengo Shibusawa(GENRYU


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