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オトギリソウと洗礼者ヨハネ

オトギリソウが咲いています。黄色い花は光沢があって人目を引きます。
オトギリソウ属は数百種類もあるそうですが、このうちセイヨウオトギリソウは、英名をセント・ジョーンズ・ワート(St. John’s wort)といいます。セント・ジョーンとは、聖ヨハネ(洗礼者ヨハネ)のこと。イエス・キリストの先駆者であり、母方のはとこでもあったといわれる聖ヨハネの名前が付けられています。

セント・ジョーンズ・ワートは最近、ハーブティーやサプリメント、オイルなどの形で出回っていますね。昔は傷薬として使われていましたし、気持ちを明るくしてリラックスさせてくれる効能が注目されています。(妊娠中・授乳中の女性は摂取してはいけないようです!)

ちなみにハーブとなるのは、ヒペリクム・ペルフォラツムです。
スーパーで切り花として売っている赤い実のついたヒペリカムは、ヒペリカム・アンドロサエマム(日本名コボウズオトギリ)で、観賞用なのでご注意を。
ちなみに、買ってきたアンドロサエマムを挿し木すれば、比較的簡単に成功します。私が挿し木したものは高さ1メートル近くになって、たくさんの花と実をつけました。


とても可愛らしい植物ですが、怖いイメージも持っています。セイヨウオトギリソウの花や葉っぱには黒っぽい斑点(油点)があります。こすったり潰したりすると赤い汁が出てきて、それが血を思わせるのです。日本でもオトギリソウ(弟切草=兄が弟を斬る)ですし、西洋ではヨハネの血です。

聖ヨハネはヘロデ王によって悲劇の最期を迎えましたが、そのイメージがオトギリソウに結びついています(戯曲『サロメ』は有名ですね)。
オトギリソウは聖ヨハネの祝祭日(誕生日)である6月24日の少し前に花が咲きます。中世ヨーロッパでは、6月24日に1年分のオトギリソウをまとめて摘み取る風習があったそうです。

聖ヨハネに関するお話を見ていると、イエス・キリストと意図的に対比されているんだろうな、と感じます。聖ヨハネの誕生日が6月24日(夏至)なのに対して、イエス・キリストの誕生日が12月25日(冬至)。日照時間が1年で最も長い日(太陽が衰えていく日)と、最も短い日(太陽が復活する日)なのでしょう。
また、聖ヨハネは「私は【水で洗礼を授ける】が、イエスは【火で洗礼を授ける】」と言っています。記号で表すと水は▽、火は△で、2つを重ねると六芒星(ダビデスター)の形になります。
さらに、聖ヨハネの死にまつわる象徴は“剣”と“皿(お盆)”、イエスの死にまつわる象徴は“槍(ロンギヌス)”と“杯”です。この2種類の死のイメージは、古代(キリスト教以前)の王の代替わりの際のやり方だと、本で読んだ覚えがあります。

6月24日、もしヒペリカム・アンドロサエマムの切り花を見かけたら、聖ヨハネに思いを馳せつつ、お家に飾ってみてはいかがでしょうか。アンドロサエマムなら赤い汁は出ませんので、汚れる心配はありません。花言葉は「きらめき」や「悲しみは続かない」など。オトギリソウは魔除けになる、悪魔が逃げるとも言われてきた植物なので、怖がらずに積極的に活用してみてください。


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