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この1年間で、キャッシュレスはどこまで進んだのか(前編)

2018年4月、経済産業省が発表したキャッシュレス・ビジョンにより、「キャッシュレス化」はオリンピック等を控える日本にとって、とても重要なアジェンダになったと思います。
その直後、どの自治体よりも早く旗振りをはじめたのが福岡市。2018年のGW明け初日の高島市長の会見で言及されたので、あれからちょうど1年を迎えようとしています。

このnoteは、私たちLINE、特にLINE Fukuokaがどのように福岡市のキャッシュレス化を推進してきたかを振り返ることにより、たった1年間で起きた大きな変化の波を皆さんに感じていただきたい。そしてその波に乗ってみたい、と思っていただくことを目的に書いています。


【2018年5月】福岡市の公募に向けた企画設計

福岡市には「実証実験フルサポート事業」という素晴らしい制度があります。簡単にいうと、社会課題の解決に向けた民間企業の取り組みを福岡市がフルサポートするという制度。
キャッシュレスも、その枠組みの中で実施されることになりました。

公共施設へのキャッシュレス推進事業:決済事業者「1社」採択
民間企業へのキャッシュレス推進事業:決済事業者「複数社」採択

公共施設であれば福岡市博物館や動物園などを、民間企業であれば屋台、空港、商店街など福岡市が一部関与している企業を、福岡市がキューピットとなって決済事業者とマッチングをはかってくれます。

※もちろんどの事業者でもそのような恩恵を受けられるわけではなく、きちんと企画書をつくり、プレゼンをし、ようやく採択に至るので決して楽な道ではありません。

実際にどのような提案をしたのか、少しだけ書きます。
下の図のように、当時はまだキャッシュレス初期(1.0)の状態だったので「適切なきっかけづくり」が重要であると考えました。
それを私たちは、
・たくさんの人に
・何度も
・安心して利用いただくことを重視し、
・そのメリットを実証する
というコンセプトで企画を設計しました。

シンプルにLINEの強みである、
・圧倒的なユーザー数
・LINE@という販促ツール
・システムトラブルの少ない安定的な運用
これらを中心に置いた提案を作成しました。

【2018年6月】福岡市の公募に採択

全国に先駆けて行われた、福岡市のキャッシュレス公募事業。立地的な魅力はもちろん、高島市長の磁力なども相まって、合計25社がエントリー。
既にこの1年間でサービス終了してしまったところも含め、ほぼ全ての決済事業者がエントリーしたと言える状態。
そのなかで私たちは、
・1社しか採択されない公共施設のキャッシュレス化プロジェクト

・8社採択された民間企業のキャッシュレス化プロジェクト

これら、どちらにも採択された唯一の企業になることができました。

そしていよいよ6月29日、福岡市博物館・福岡市動植物園にてキャッシュレス実証実験がスタートしたのです。

私はそのときTV等の取材対応をしたのですが、メディアの皆さんもスマホ決済を見るのが初めてで物珍しそうな感じでした。だからどうしても、「スマホに表示されたQRコードを端末で読み取るだけ」というちょっとつまらない映像ばかりで・・・今思うと、これだけじゃあなかなか新しいユーザーの獲得にはつながらないなと。

そのことに気がついたのは、7月に入ってデータのモニタリング環境がようやく整いはじめた頃でした。

【2018年7月】伸びない数字

まず自分自身の反省として、キャッシュレスはきっと容易に進むだろうと、TVや新聞のニュースにもなったしユーザーも増えるだろうと、無知ゆえに舐めていた部分もあったと思います。サービスへの過信とも言えるでしょうか。
一部の数値が公開されているためハッキリ言いますが、このときの利用はまだ超限定的でした。マーケティング用語の「イノベーター」という表現を使えばかっこいいですが、要するにまだ施策としてはNakedな状態だったので・・・ここから失敗も成功も含め、様々な施策を打っていくことになります。

ちなみに、7月下旬にはプロジェクトメンバーみんなで中国・深センに視察に行きました。色んな決済体験をし、良くも悪くも色々思うところあり、今後へのヒントを胸に帰国したのでした。


【2018年8月】半額キャッシュバックの衝撃

2019年4月現在、世間を賑わせている20%還元のキャンペーン。それをはるかに超える、衝撃のキャンペーンが昨年夏の福岡市で行われていました。
福岡市動植物園や屋台などでLINE Pay決済すると半額キャッシュバックされるキャンペーン。

これは確かに効果がありました。7月の数値よりも数倍に跳ね上がりました。またこの間、私たちのチームは真夏の炎天下、動物園で蚊にまみれながら、ユーザーの声を拾うことを実行しました。(その内容は秘伝のタレなので非公開です、ごめんなさい)
このような大胆なキャンペーンをやることにより、徐々に世間の認知を獲得。特に屋台の効果は抜群で、福岡だけでなく在京のメディアにも取り上げていただいたりもしました。

一見成功しているようですが、実はこれがキャンペーンの魔力。一時的なブースト効果に過ぎず、もっと根本的な改革が必要であることがわかってきたのです。

そこに踏み出すきっかけになったのが、8月23日に福岡市と締結した、「包括連携協定」でした。

(中編に続く)

中編で書こうと思っていることメモ
・ユーザー体験の向上に向け、決済+αの取り組みに着手
・推進組織のリデザイン
・局地的にキャッシュレス比率50%を実現

後編で書こうと思っていることメモ
・1年間の伸び率2,110%
・日本一キャッシュレスが進んでいる街は、日本一キャッシュレスの共創が進んでいる街だった

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