素晴らしき家族旅行 上・下
1994年に毎日新聞に連載された小説。
20年前の日本社会が抱えていた家族問題を面白おかしく物語化することで網羅している。
当時から高齢化社会に向かっていること、介護問題が各家庭の喫緊の課題であること、歳上の妻をもらうことへの社会的反発、30歳近い未婚女性への社会的圧迫感、嫁姑問題、相続問題、集合住宅でのご近所付き合い、郊外の大型モール建設による中小商店街の衰退などなど・・・
多くは現代日本にも通づる共通課題である。
三世帯間の同居を通じて親子間、夫婦間、兄弟間のすれ違いなど日々心がざわつく出来事ばかり。
プライドが高くて頑固な上に潔癖症な姑、家庭のことにはほとんど一際口を出さない舅、自分の家族には甘く色眼鏡で見ている夫、ろくに家事もしないで一人暮らしを満喫している義理の妹、商社勤めで高級取りの高慢な叔父に性格のきつい叔母、唯一味方をしてくれる寝たきりの義理の祖母。
好きで選んだ夫の家庭だけど、自分だけがいつも貧乏くじを引いてしまう、という嫁目線の語り口が出る場面や、どこの家庭でも共感できる背景に笑みが溢れる。
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