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不幸な認知症 幸せな認知症 周囲の人次第

上田諭著 マガジンハウス 2014/11/13出版 2023/4/5読了

日本医科大学高齢者専門医である著者が認知症についての正しい認識を薦める。

認知症には根本治療がない。
治らない病気である上、誰が罹ってもおかしくないことから人々は恐怖を抱いている。
治療法を求めることで袋小路に陥るのではなく、周囲の接し方や理解を深めることで認知症患者本人の幸せを追求することが重要と説く。

・家族の顔を見ても分からない、どこにいるのか分からない、徘徊をする、というのは認知症でも重度の人の症状。最初の兆候から周囲の人がおかしいなと感じるまでが半年から1年くらい。そこから重度になるまで10年から15年かかる。

・ボケたら困る、ボケないようにしようと思っていますか?
ボケたっていいではないですか。90歳になれば6割は認知症。病気を恐れず、それまで楽しく暮らす方がいい。

・一人暮らしだから認知症になっても誰も気づいてくれないと不安に思っても、周囲が何かおかしいと感じるから大丈夫。
その助言に耳を傾けて。
認知症と診断されたら介護保険の手続きをして、地域にサポートしてくれる人をつくる。

・打ち込める趣味や楽しみ、ときめく気持ちになるような人がいたら、ずっと手放さずにいてください。
これからのあなたの人生を豊かにし、あなたを輝かせる大切なこと、人だから。

・デイサービスに行きなさいと言われて嫌だなーと思ったことがありますか?
一度でもいいから行ってみてください。
あなたが来ると喜ぶ人がきっといる。

・家族や友人が認知症と診断されたとき、対応の鉄則が3つ
「指摘しない、議論しない、怒らない」
気持ちを切り替え、生活を変え、これから共にいきいきと生きていくのだ、と心を決める。

・アルツハイマー病に発生しやすい「物盗られ妄想」「嫉妬妄想」。
多くの医師は薬で解決しようとするが、そこには本人の孤立感や不安感が隠されている。
張り合いのある生活を送ることで妄想が生じなくなるケースがある

・認知症初期の方には書くことを推める。
ノートにその日あったことを書き、後日、読んで生活に役立ててもらう。
それができる認知機能を維持するには、人と関わり、人に認められることが大事。

・抗精神病薬には過鎮静や鎮座不能症といった副作用があり、イライラや暴言、暴力を増長することがある。
安易に薬で解決しようという姿勢、介護がラクになるという理由で処方するのは反対。

・昔の話を思い出して語ってもらう回想療法では、普段胸にしまっている本音を本人が口にすることがある。
体を動かすことで認知機能を維持しようとするリハビリテーション療法でも笑顔が増えるケースがある。

・うつ病と認知症は高齢者の二大疾患だが、うつ病は治り、認知症は治らない。
周囲が治そうとすればするほど本人の負担は増えていく。
今のままで構わない、治らなくていいと思うことで心が穏やかになる。

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