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レペゼン母 現代家族おもしろドラマ

宇野碧著 講談社 2022/8/8出版 2023/5/14読了

和歌山の高齢化した町で梅農家を営む明子。
夫を早くに亡くし、女一人手で息子の雄大を育て上げ、
経営を安定させるまでとにかく必死でやってきた。
今では収穫の繁忙期に頼れるアルバイトの仲間もでき、
特に近所で一人息子を持つ同じ境遇の円には長年一緒に手伝ってもらっている。

子育てというのは本当に思うようにいかず、息子の裏切りや反抗に呆れている。
35歳にもなって定職にもつかずフラフラしていた息子が、
梅農家を真面目に継ぎたい と19歳の嫁を連れて帰ってきたのは3年前。
半信半疑で応援したものの、1ヶ月もしないうちに肉体労働に飽きたのか、
地元の選挙に出ると言い出す。
選挙資金として300万円もの借金をする息子に頼み込まれ、
仕方なく借金の連帯保証人になっている。

地道にコツコツと努力ができない息子が理解できない。
物心ついた頃から、事後報告で母を困らせるか、
警察からの連絡で尻拭いをさせるので、
音沙汰がない時は決まって危ない出来事の前兆であった。
逃げた息子の嫁沙羅に「お義母さん」と慕われ、
梅農園の経営も手伝ってもらう日常で、明子のストレスは溜まっていく。

そんな中、沙羅の出場するRMBを観覧し、自身もラップの世界にハマっていく。
ビートに乗せて繰り出される言葉から、相手の心情や背景を理解し、
それに対し真っ向から自分の思いをぶつけるパンチライン。
MCの持ち合わせるバイブス、会場の空気など、
黒人カルチャーが発祥なだけあり、普段は若者・ギャングスタが中心である。

独自の文化と普通のおばさんとが掛け合うことがいかにも斬新で、
新たなおもしろさを生み出している。
お母さん目線でラップを刻む明子が、ドラ息子の雄大とのつながりを客観的に徐々に思い直していく感動コメディ。

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