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マンガでわかる認知症 人生終わりではない

内門大丈監修 吉田美紀子マンガ 池田書店 2022/10/25出版 2023/3/28読了

家族とのやりとりを通じて、認知症の人の気持ちにフォーカスしたマンガ。
認知症の患者のありがちな迷惑行動や不快な発言への理解を促す。

2025年には、65歳以上の5人に1人(約700万人)が認知症になる

家族を含めて認知症の人が周囲に増えることを考えれば、自分ごととして捉えるべきであるが、現状では認知症に対する誤解は少なくない。

認知症とは、何らかの病気により脳がダメージを受け、認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態を指す。
早めに適切なケアを始めれば、その分自分らしく生きる時間を長く持つことが可能。

・アルツハイマー型認知症
物忘れから始まり、少しずつ思考力や判断力、物事を記憶する力が落ちていく。
個人差はあるが発症から2〜8年で半数が寝たきりになる。

・血管性認知症
脳出血、蜘蛛膜下出血、脳梗塞など、脳の血管に起きた病気が原因で発症する。
男性に多く、アルツハイマー型と併発するケースもあり、初期から運動麻痺や失禁が見られることもある。

・レビー小体型認知症
「レビー小体」というタンパク質が脳に溜まることで、脳がアルツハイマー型同様に萎縮する。物忘れなどの記憶障害よりも先に、便秘、立ちくらみ、嗅覚障害、うつといった全身の不調から始まるという特徴がある。

・前頭側頭型認知症
前頭側頭葉変性症によって前頭葉と側頭葉を障害することで発症する。意志や感情を司る前頭葉、言葉を司る側頭葉のダメージで、万引きや無銭飲食といった社会規範に反した行動をしたり、言葉で思いが伝えられず暴力的になったりすることがある。

認知症の中核症状・・・記憶障害、見識障害、実行機能障害、失行、失認など認知機能の低下による症状を表す。
認知症の周辺症状・・・中核症状が原因で起こる二次的症状で、行動や心理に現れるもの。不安、焦り、徘徊、作話、暴言、暴力、幻覚、妄想、性的衝動など。

特に周辺症状などは本人の性格や歩んできた人生、生活環境により現れ方が異なる。
ケアする人にとっては、脳の障害によって起こるもので、本人の性格ではないことを理解することが重要。

加齢による物忘れでは、記憶のメカニズムで「想起」、つまり思い出す力が衰えている状態。
一方、認知症による物忘れでは、記憶のメカニズムで「記銘」ができないこと、つまり脳が新しい情報を受け取れない状態を指す。

<記憶の3ステップ>
①記銘 → ②保持 → ③想起

「何度も同じことを聞く」のはどうして?
認知症の人が同じことを何度も聞くのは、中核症状の記憶障害が関係している。
記銘する力が弱っているため、数分前のことを覚えていられない。
何度も聞いてくることは、「重要なこと」であることが多い。
本人が何を不安に思っているのかを理解して、その不安が解消できる手立てを打つのが良い。
毎回初めて聞いたかのように答えて、その後で話題を変えてみるのも良い。

「財布を盗まれた」と言うのはどうして?
もの取られ妄想は、記憶障害と性格や人生の背景などの社会的要因が絡み合って起こる。失敗を認めたくない一心から、事実ではないことを妄想する。
頭ごなしに否定せず、「困ったね」と不安に寄り添うのが良い。

「レジでの支払いに時間がかかる」のはどうして?
認知症の人は覚えるのが苦手なので、財布からお金を取り出そうとしている間に金額を忘れたり、数字の読み方がわからなくなってしまったりする。
加齢で目や指先も衰えているので、財布から小銭を取り出すのも一苦労。
本人が買い物を楽しんでるのであれば、おおらかな気持ちで見守るのが良い。
計算問題を出すなど、試すような行為は本人の自尊心を傷つけることになるので禁物。

「なんで怒られるの?」起こした行動を責められ混乱する。
もともとしっかりしていた人に、そのイメージが崩れるような言動が増えれば、誰だって心が苦しくなる。ありのままを受け入れられるようになるまでは、行き場のない怒りを本人にぶつけてしまいたくなるもの。しかし、不安や怒りでいっぱいなのは本人も同じ。叱責されることが続くと、人は自尊心を失う。認知症の人が自尊心を失うと、不安や無気力といった周辺症状が強まる。

「うれしい」「悲しい」の感情は心に長く残り続ける。
感情は、海馬のすぐ横にある扁桃体から生まれる。扁桃体は認知症になっても障害を受けにくく、そのため感情も失われにくいと考えられる。記憶障害によって目の前の出来事は忘れてしまうが、その時に湧きあがった感情は心に長く残る。
認知症の人と接するときは、感謝、共感、褒めるなどを心がけて、プラスの感情に働きかけることが大切である。

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