点字の読み書きと点字ディスプレイOrbit

この記事は、Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar の12月14日の記事です。
https://adventar.org/calendars/3036

東京都八王子市に住んでいます。野々垣美名子と申します。
視覚障害の方のパソコンやスマホの利用を個人的に訪問などでサポートすることを仕事にしています。晴眼者です。
スクリーンリーダーNVDAのNVDA日本語チームやNVDAヘルプデスク、地域のパソコンボランティアに参加しています。
東京都内の視覚障害者支援施設で、パソコンの授業のアシスタントの仕事をしています。

今日の私の記事のテーマは、視覚障害者にとっての文字である点字と、点字ディスプレイOrbitについてです。
視覚障害の方にとって、点字の読み書きが出来たら便利だと思います。
ただ、私が聞くところによると、生まれた時から目が見えない(先天性全盲と呼ばれます)人は、子供の時に盲学校で点字を勉強して覚えるけれど、目が見えにくい弱視の方、大きくなってから、大人になってから目が見えなく、見えにくくなった中途視覚障害の方は、点字の読み書きをなかなか習得出来ないそうです。
私も、視覚障害の方のサポートをして行く中で、主にCD販売のために点字でお手紙を書く必要も生じて来たため、点字を覚えたいと思い、勉強を始めました。

点字は6つの点で表され、たてに3つ、横に2つ並んでいます。左上から下に1,2,3、右上から下に4,5,6の点と呼ばれます。文字は左から右へ順に並ぶ横書きです。
あいうえおは、1,12,14,124,24。
かきくけこは、あいうえおの点に6の点を加えた16,126,146,1246,246。
さしすせそは、あいうえおの点に5,6の点を加えた156,1256,1456,12456,2456。
という感じで、母音の点に子音の点を足すような決まりです。

点字を覚えようとすると、どのあたりが難しいでしょうか。
まず、触って読めるようにするのが難しいです。これは私は、目も使って読んでいるため、出来ていません。
次に、紙に点字を打つ時は、左右が逆になります。点字を書くには、点字器という道具を使います。点字を打つ位置に穴が開いた板と、点6つずつの位置を囲むように四角い穴(枠)が開いた板で、点字を打つ紙を挟みます。点筆という、安全のために先が丸くなった針で、紙をつついて点字を書きます。紙をつつく側と反対の面が飛び出すため、書く時は、読む時とは点字の左右を反対にして、右から左に書くことになっています。
点字を書いてすぐには、枠に紙が挟まっているため、どのように打てたかの確認が出来ません。目で見ていても、どこまで書いたかわからなくなりそうになります。見えない場合は、どこまで書いたか覚えておく必要がありそうです。紙をはずして確認を出来ますが、はずした後、また元の位置に戻したり、どの位置の点字を書き直さなければならないかを覚えていたりすることは、とても難しそうです。(点字は点をつぶして書き直すことが出来ます。また、紙を点字器の元の位置に戻すことは、挟んだ時に付く穴の位置を頼りにして可能かもしれません)

特に中途視覚障害の方が、新しく点字を覚えるために便利に使えそうだと思うのが、点字ディスプレイOrbitです。
http://www.amedia.co.jp/product/braille/display/Orbit20.html

点字ディスプレイは、セルと呼ばれる点字を表す領域に点字が出たり消えたりする機械です。点字を何度も書き直せるという意味で、英語では、refreshable braille displayと呼ばれます。一台に一行の点字表示用のセルが、機種により16個から40個くらい並んでいます。カーソルで次の文字へと繰り返し送りながら読みます。
点字ディスプレイは一台30万円から40万円くらい。自治体から日常生活給付費の交付を受けて、一部自己負担で購入することが出来ますが、交付には点字が読めることという条件があり、点字の試験がある自治体があるとも聞いたことがあります。点字をこれから覚えたい人が給付を受けるのは難しそうで、自費となると高額になります。
点字ディスプレイOrbitは、アメリカのOrbit Research社が、多くの視覚障害の方が点字ディスプレイを入手出来るようにと、機能をしぼり、コストダウンを主眼に研究して作り出した点字ディスプレイです。日本では、株式会社アメディアで、78000円(非課税)から購入することが出来ます。
点字ディスプレイOrbitには、単体としてのメモ機能、bluetoothやUSBを使用して他の機器に接続する機能があります。私が確認出来ている機器とスクリーンリーダーの組み合わせとしては、

bluetoothでiPhoneとVoiceover
bluetoothでWindowsパソコンとNVDA
USBでWindowsパソコンとNVDA

です。

単体のメモ機能を使うと、点字ディスプレイOrbitについている6点入力キーを利用して、点字を入力することが出来ます。左から右に6つ並んでいて、左から、3,2,1,4,5,6の点の入力が出来ます(パーキンス式)。同時に押した点が1セル分として入力されます。紙に点字を打つ時と違い、左右をひっくり返す必要がありません。打った文字は点字ディスプレイの点字表示セルに表示され、手で確認することが出来ます。
点字ディスプレイをiPhoneやパソコンに接続すると、iPhoneのVoiceOverの読み上げがそのまま点字ディスプレイに表示されます。iPhoneなら、Voiceoverをオンにしてアプリアイコンをたどると、「カメラ」「友達を探す」「メール」などの読み上げがされますが、それと同じタイミングで点字ディスプレイに「かめら」「ともだちをさがす」「めーる」など表示され、点字で何と書かれているかが音でもわかるため、点字を覚え始めの人には便利です。iPhoneなら例えば新規メール作成、Windowsならメモ帳などで編集モードにすれば、6点入力キーで点字を入力すると、1なら「あ」、124なら「え」など、スクリーンリーダーが読み上げをしますので、点字入力の練習が易しくなります。

以上のような理由で、点字ディスプレイOrbitは、特に中途視覚障害の方が新しく点字を覚えるのに、とても便利な物と思います。

点字ディスプレイと組み合わせて使うのに便利そうな物として、新しいタイプの点字器、「とつてんくん」もおすすめです。紙を敷く板に凸、点筆の針に凹みがあることによって、紙の点字を打つ側が凸になるため、打つ時も左右を逆にする必要がありません。点字ディスプレイに自分の名前や連絡先を記録しておけば、それを確認しながら同じように書き写せば、紙に点字で自分の名前や連絡先を書くことが出来るようになります。
https://www.d-kobo.jp/news/totsuten/

点字ディスプレイOrbitは、他に、盲ろうの方がiPhoneやWindowsパソコンと接続して使うことでも、いろいろなことが出来るようになりそうです。
iPhoneのアプリ、UDトークを使うと、音声認識で文字になった内容を点字ディスプレイOrbitに点字で表示することが出来ます。盲ろうの方がiPhoneを持っていなくても、Orbitを持っていたら、他の人のiPhoneにUDトークをインストールしてもらって(無料アプリなので)、接続させてもらうという使い方も良いと思います。
http://udtalk.jp/

盲ろうの方がLINEを使いたいと思ったら、iPhoneとVoiceover、Orbitの組み合わせが結構筋が良いのではないかと感じています。(点字ディスプレイは必ずしもOrbitでなくても、iPhoneと接続出来る物なら良いと思います。理由は、LINEアプリは、Windows版よりも、iPhone版の方がスクリーンリーダーとの対応が良いからです)

点字ディスプレイOrbitを使い、私も点字を覚えたいと思います。
今、あいうえお、がぎぐげご、きゃきゅきょ、ぎゃぎゅぎょ、ぴゃぴゅぴょ、数字、くらいまで覚えました。

点字ディスプレイOrbitの紹介や利用方法について、ご相談や講習のご依頼を個人的にお受けいたします。
下記までご連絡下さい。

野々垣美名子
電話 090-7186-4265
メール minakonono3519@gmail.com

所属団体
NVDA日本語チーム
https://www.nvda.jp/
NVDAヘルプデスク
https://nvda.help/services
情報ボランティア障害者支援の会
http://ivdss.org/
八王子BPワークス
http://www.hachikomi.genki365.net/gnkh19/mypage/mypage_group_info.php?gid=G0000389
ブラインドオンラインサービス
https://sites.google.com/view/blindonlineservice

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