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対数が得意になるには 240209

$${5.4\lt \log_{4}2022\lt 5.5}$$ であることを示してください。ただし、$${0.301\lt \log_{10}2\lt 0.3011}$$ であることを用いてもいいです。(2022 京都大)

3年生と演習問題に取り組んでいると、面白い問題に出会います。生徒の反応をみると、問題のねらいどおりに解答している人もいれば、ねらいが読み取れず苦労している人もいます。今年の共通テストもシンプルなのに対数のよさが出ている問題でした。ねらいが読み取れないということは、私たちが数学のよさを伝えていないということなので反省点になります。

対数は掛け算・割り算が足し算・引き算でできるよさがあります。特に割り算が引き算でできるのは超画期的なことだと思います。数学に発明は本来ないのですが、これは発明といってもいいかもしれないと思います。私が本を読んで対数の存在を知ったときの感動もそうでした。しかし、計算機が身近になった現在あまりありがたみを感じません。1.2 の n 乗が初めて10より大きくなる自然数 n を求めてほしい という問題で逆に高校2年生で小数の割り算をやるはめになります。google に聞けばすぐ答えてくれます。

$${\log_{a}MN=\log_{a}M+\log_{a}N}$$ などはもちろん大切です。
$${\log_{2}2x=\log_{2}x + 1}$$ つまり、底が 2 だったら、真数が2倍になると対数は1増える という見方のほうが現代ではより大切だと思っています。
片対数グラフを使うと、指数関数が直線で表されます。水素イオン指数(pH)、音などの大きさ(dB)、地震の大きさ(マグニチュード)、など現象を対数スケールでみたほうが人間の感覚に落ちることが多いです。

対数が1増えるのは真数が何倍になるときだろうか、というのはあまり本質な問いではないでしょう。対数が0であるというのは、それが基準値だということです。(線型スケール軸との交点です。)対数が1, 2, 3, … というのはすごく大きな数やすごく小さな数に対して、違いを人間が把握できるくらい(2桁くらい)で目盛りをつけているのです。pH 8.6のアルカリ性温泉とか、85デシベルの騒音とか、マグニチュード7.6の地震とか…
1, 4, 16, 64, 256, 1024, 4096, …という数列は
4を底とする対数をとってみると、0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, …
2を底とする対数をとってみると、0, 2, 4, 6, 8, 10, 12, …
底の違いは直線の傾きの違いということになります。ちゃんというと変換公式があって、
$${\log_ab=\dfrac{\log_cb}{\log_ca}}$$
底は本質的ではないということはこういうことで、どんな底でも対数のよさは変わらないということです。

さて、冒頭の問題、いろいろな見方があると思います。対数の定義を使って、$${4^{5.4}}$$, 2022, $${4^{5.5}}$$ を A, B, C とおいて比べてみたいと思います。底を 4 とする対数関数(指数関数)は、単調に増加する関数なので、大小関係を保存します。

まず、$${C=4^{\frac{11}{2}}=2^{11}=2048}$$ です。したがって、 $${B\lt C}$$ すなわち $${ \log_{4}2022\lt 5.5}$$ がいえました。

AとBを比べるのに常用対数をとりたいと思います。
$${\log_{10}A=5.4\log_{10}4=10.8\log_{10}2\lt 10.8\times 0.3011=3.25188}$$
一方 $${\log_{10}B\gt \log_{10}2000=3+\log_{10}2\gt 3.301}$$
したがって、$${\log_{10}A\lt\log_{10}B}$$ すなわち $${ 5.4\lt \log_{4}2022}$$ がいえました。

対数の定義と基本的な性質だけで示すことができました。
不等式が成り立つことを示すときにありがちなのですが、しっかりと組み立てられた論証よりも、間違ったことはしていない(これは大切なことです)組み立てで、最適解を得ています。どことなく探究活動に似ています。

さて、両対数グラフはどんなよさがあるでしょうか。
$${y=5x^3}$$ (3乗に比例する関数) を両対数グラフにしてみました。

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