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「数字だけ」を見て失敗したアパレル経営者たちの事例

 アパレル業界は経営者といえども数字に弱く「感覚派」の人々が多くいます。むしろ、そちらの方が主流といえます。「見た目だけのかっこよさ」や「わけのわからん空気感」や「ムード」のみを重視する人がアパレル業界では主流です。「数字?何それ?美味しいの?」という人がトップから現場まで占めているのがアパレル業界です。ですから斜陽産業と揶揄されるまでに落ちぶれたのです。

しかし、中には逆に「数字」しか見ていない経営者も少なからずいます。数字だけしか見ていない経営者も成功することはあまりありません。そのあたりがアパレルビジネスの難しさといえるのではないでしょうか。

もう、過ぎ去ったことなので、当方が実際に見かけた「数字だけしか見ていない経営者」の事例をご紹介したいと思います。

ヴィクの場合

2005年ごろそれなりに人気があった「クリア」という関西発のレディースセレクトショップがありました。2~3年前からショッピングセンター内に積極的に出店をしていますが、これは当時と運営会社が異なります。今の会社が「クリア」の商標権を買い取って、再出発したのが、現在の姿です。それまで運営していた会社はヴィクといいます。年配の関西人ならご存知だと思いますが、アメリカ村で「サンヴィレッジ」というジーンズカジュアル専門店を経営していた会社でもあります。

若い方はご存知ないでしょうが、80年代・90年代はリーバイス、エドウインを筆頭に大手ジーンズブランドの商品が軒並みそろっていたアメリカ村の有名店でした。当方も含めて、業界紙記者はジーンズの売れ行きを定期的に取材に行っていました。単独店でしたがそれほどに知名度と実績のある有力店だったのです。ビッグジョン、ボブソン、ブルーウェイ、ラングラー、リーなどのジーンズブランドが豊富にそろっていた店内を今でも思い出すことができます。残念ながら撤退してしまいましたが、そのヴィクが新業態として始めたのがレディースセレクトショップ「クリア」です。

当初はえらく、毛色の違う路線に驚きましたが、取材をしてみると社長の娘婿が旗振り役で始めたとのことでした。神戸コレクションにも何年も連続して出展していました。関西だけではなく、名古屋や関東にも出店しており、当時はかなりの勢いがありました。

そうこうしているうちにこの娘婿とも面識を得ることができ、定期的に話を伺うようにもなりました。企画担当者にも何度かお会いしたこともあり、製造業者やOEM業者を紹介したこともあります。そんなある日、2009年ごろのことだったと記憶しています。その娘婿から連絡があり、「なんだろうな?」と思いながら話を聞きに出かけました。すると驚いたことに「退職することになりました」と言うではありませんか。

少し勢いが陰り始めていたとはいえ、「クリア」の責任者がいきなり退職するとはどういうことなのかと詳しく話を聞いたところ、義父である社長との確執が強まったためだというではありませんか。経営方針をめぐっての対立だとのことで、社長は勢いが陰ってきた「クリア」を縮小したいという意向で、娘婿は再浮上するために新たな取り組みをしたいという意向で、真っ向から対立してしまったそうです。

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