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シャツ専門アパレル各社の生き残りと消滅を回顧する

 先日、ある人から「山喜(やまき)」というシャツメーカーの名前を聞きました。久しぶりに耳にした名前です。

かつて国内にはメンズのワイシャツを専門に作る専業大手アパレルが何社もありました。いずれも経営破綻して消滅または縮小してしまっており、山喜はその中の最後の1社といえます。

20年前に業界新聞記者となりましたが、その当時あったシャツアパレルの中で山喜が最後まで残るとは予想だにしませんでした。この業界新聞はシャツアパレルを比較的得意としていました。理由は、紡績とシャツアパレルは関係性が密接だったからです。この業界新聞は素材メーカー、とくに紡績を得意としていたので、素材と商品がワンセットになりやすいシャツアパレルが得意だったのです。同じ理由でジーンズアパレルやユニフォームアパレルも得意でした。合繊メーカーと関係性が密接なスポーツウェアも比較的得意でした。

シャツアパレル各社は9年~2005年くらいまでの間に次々と経営破綻してしまいました。まず最初は松屋シャツでした。ここは大手ではありませんが百貨店専門に卸していた老舗でしたから、業界内では衝撃が走りました。日経ビジネスという雑誌が失敗した経営者のコメントを載せる「敗軍の将兵を語る」というページがありますが、そこに松屋シャツの社長のコメントが掲載されたことを今でも鮮明に覚えています。

次はカネタです。ここは本当に大手でしたし、担当記者としても頻繁に行き来していましたから本当に驚きました。民事再生法を申請し、その何か月か後に破産整理され完全に消滅しました。

その次が信和シャツ。ここは中堅という立ち位置で量販店向けが強いシャツメーカーだったと記憶しています。

アパレル関係者にはあまり知られていませんが、紡績の中でも得意不得意があり、シキボウや東洋紡はシャツ生地が強く、倒産したカネボウも比較的シャツ生地が得意でした。クラボウはデニム生地が強く、日清紡はシャツ生地、デニム生地ともに得意でした。

シャツメーカーの倒産が相次いだのは、一つには大口取引先だったダイエー、マイカル、ナガサキヤの倒産があると考えられます。また百貨店でも、2000年のそごうの経営破綻もありました。

97年以前のワイシャツの買い場について考えてみましょう。今、皆さんがワイシャツを買うとするとどこで買いますか?ツープライススーツショップ、青山やAokiなどの紳士服専門チェーン店、鎌倉シャツ、百貨店シャツ売り場、量販店シャツ売り場、百貨店やファッションビル内にあるブランドショップ、ユニクロなどではないかと思います。

しかし、97年以前は、百貨店シャツ売り場、量販店シャツ売り場、紳士服専門チェーン店くらいしかシャツの買い場はなかったのです。ツープライススーツショップの登場は99年まで待たねばなりませんし、鎌倉シャツもこの当時は存在していません。ユニクロがブームとなるのは98年以降のことです。百貨店内・ファッションビル内にあるブランドショップもワイシャツ売り場としてはあまり認知されていません。

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