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アパレル業界は丸投げ体質か?

 アパレルブランドの同質化の原因の一つに、商品企画を外部へ丸投げしていることが挙げられます。OEM(生産の請負)だけではなく、ODM(デザインからの請負)が増えており、業界では今、「OEM業者」というとデザインからの生産請負を指すのが主流となっています。

 最近はちょっと聞かなくなりましたが、2009年ごろにはOBMという言葉も生み出されました。これは「ブランド設計からの請負」を意味しており、そうなると発注したブランド側の仕事は何もなくなるわけです。ブランドのコンセプトやらターゲットやらまでを外注するのですから究極の丸投げです。OBMという言葉は最近あまり聞かなくなりましたが、実際のところは、大手商社がブランドから請け負っているのはOBMにほかなりません。

 個人・零細のOEM企業だけではなく、伊藤忠商事をはじめとする大手商社、豊島やヤギのような中堅の繊維専門商社も盛んにアパレルブランドの製品製造請負を手掛けています。例えば、ヤギの2017年3月期連結ですが、売上高は対前年比2・5%減の1128億5400万円に終わりましたが、部門別でみると二次製品は対前期比1・8%増の757億3500万円の増収となっています。この「二次製品」というのはアパレルブランドからの製品製造請負で、いわゆる「OEM」事業で、いかにOEM事業が好調だったかということがわかります。またヤギでは決算会見の席上で、「今後はさらにOEM・ODMを強化する」とも宣言していて、多くの商社も今後、同じようにOEM・ODMをさらに強化するというのが業界内での常識となっています。そして商社のOEMとは実質的にはODM・OBMであることは言うまでもありません。もう単なる「製造請負」だけでカネが取れる時代ではなくなっています。

アパレル業界の丸投げ体質

 自分たちで商品企画をしているアパレルブランドが皆無かというとそうではありません。小規模・零細ブランドの多くは自社で企画しています。というより、彼らは自社ブランドを企画しつつ、大手ブランドの下請けでデザイン企画を手掛けている場合も多くあります。また、ジーンズ専業アパレルメーカーは比較的自社企画が多くあります。(すべて自社企画ではありませんが)

 アパレルブランドの丸投げは商品企画だけなのでしょうか?いいえ、残念ながら他の分野でも丸投げ気質が強いというのが正直な感想です。例えば、パンフレットやリーフレット、フライヤー製作、ウェブサイト製作、販促物企画なんかもかなり丸投げ体質です。

 個人的な経験でいうと、一時期、繊維業界新聞から離れ、展示会営業や編集プロダクションに勤務して、広告制作のディレクションやパンフレットづくりなども手掛けた(といってもへなちょこな企画しかできませんでしたが)ことがあります。その時は、当然ながら繊維やファッションとは関係のない業界の広告やパンフレットなども手掛けたわけですが、異業種企業はそれに対する要望がかなり「カッチリ」していることが多かったです。一方、繊維・アパレル企業は今でもそうですが、そういうものの要望もかなり「バクっと」しています。繊維・アパレル企業の多くは「かっこよくしといてよ」とか「イイ感じでお願いします」という謎の一言だけで要望を伝えます。

 おいおい、ちょっと待てよ。というほかありません。「どのようにかっこよく」するのか、「どのようにイイ感じ」にするのかが皆目わかりません。また、相手の思っている「かっこいい」「イイ感じ」とこちらが思っている「かっこいい」「イイ感じ」が同じだという確率はかなり低いのです。先方は「ガンダムみたいなかっこよさ」を想像しているのに、こちらは「ウルトラマンみたいなかっこよさ」を想像しているなんていうのは、日常茶飯事です。そんな「バクっ」とした要望を手探り状態で形にしていくというのが、繊維・ファッション業界での仕事と言えます。

 しかし、関西という一地方で中小・零細企業ばかりを相手にしているからこういうことが頻発するのであり、中心地である東京を拠点とする大手アパレルはそんなことはないのではないかと思っていたのですが、どうやらそうではなかったようです。

ある業者の声 

 旧大手アパレル各社が苦戦が続く中で、老舗ながらも先端企業として注目を集めているジュン(JUN)というアパレル企業があります。かつてVANと並んで称されたほどの老舗アパレルですが、近年、ワールド、三陽商会、オンワード樫山などの大手老舗企業が軒並み苦戦する中で、着実に成長し、新業態を増やし、今でも企業イメージを保ち続けています。

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