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原料と直結した数少ないアパレル製品の一つがジーンズ ~エドウインはどうなる?~

4月1日付けで、ロートレ・アモンやビッキー、ケティ、リップスターなどを展開してきた大手アパレル、ジャヴァホールディングスが伊藤忠商事から投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドへ売却された。エンデバー・ユナイテッドはピザハットや低価格アパレルのパレモなどを傘下にしている。

この売却の噂は2月ごろから業界に流れていたが、実現が発表されるとさすがに激震が走った。伊藤忠商事は傘下に多くの子会社アパレルを抱えている。例えばジョイックスコーポレーションやエドウインなどだ。これらのアパレルがいつの日か売却される可能性が改めて認識された故の激震だといえる。

ジャヴァホールディングスの場合、売り上げ規模はピーク時から200億円くらい減ったものの、伊藤忠傘下になって収益性は改善されたうえでの売却だった。恐らくは投資ファンドはそれなりにジャヴァホールディングスを成長性があると評価したのではないかと思う。

ところで、ジャヴァホールディングスでの思い出というと、まだ創業者の細川数夫氏が存命のころ何度も展示会に訪問した。当方は関西在住だから、ポートアイランドにあった神戸本社にお邪魔した。ワールドの神戸本社の道路を挟んだ向かいにあるのだが、1階にはなぜか、うどん屋があった。そのうどん屋はジャヴァの直営だったそうだが、某広告代理店のベテラン営業マンから、カウンターの向こうでうどんを茹でているオジサンは異動されたジャヴァの部長さんだと聞いて、震撼した。

リストラ解雇されるよりはよほど良いのだろうけど、アパレルの部長が異動でうどんを茹でているとはちょっと気の毒になってしまった。とはいえ、リストラ解雇が当たり前の時代において、解雇せずにうどん屋といえども雇用し続けた細川数夫氏も温情家といえる。

今回の会社売却について、あるジャヴァOBは「50歳代以上の社員がまだかなりいる。細川氏はうどん屋以外にもリストラ解雇せずに物流倉庫などに異動して雇用し続けてきたから」と指摘する声もある。投資ファンド傘下ではそういう年配社員は軒並み整理対象になるのではないかと言われるが果たしてどうなるのだろうか。

今回のジャヴァホールディングス売却を受けて、同じ伊藤忠傘下のエドウイン売却を心配する声もあがっている。とくに伊藤忠商事の2018年3月期連結における繊維部門の業績は悪かった。

伊藤忠・繊維部門の純利益が半減、エドウインで129億円の減損を計上

伊藤忠商事・繊維カンパニーの2018年3月期連結決算(国際会計基準)は、純利益が前期比50.5%減の125億円だった。期初の計画は320億円だったが、子会社エドウインの減損損失で129億円を計上。リボンやボタンなどを扱う副資材大手の三景の利益も前年の20億円から1億円に減少した。同社広報によると、「将来を見据えた処理の一環。エドウインの減損の理由は主に商標の価値と一部の在庫評価減。三景についても営業利益ベースでは増加しており、先を見据えた減損になる」とコメントしている。
 売上総利益は同7.9%減の1219億円、営業利益は同26.6%減の184億円だった。アパレル関連市場の低迷に伴う販売不振が響いた。

とのことで、エドウインの減損損失が129億円と多額だったことから売却を懸念する声は大きい。

減損損失とは一般的に特別損失といわれているものと同じで、記事では詳細は書かれていないが在庫評価減が原因の一つとされている。なかなか、記事には書かれないが、一昨年あたりからエドウインが過剰在庫を抱えているということはジーンズ業界では広くささやかれていた。

こうして見てみると、エドウインが切り離されるという可能性はゼロではないし、それが高いと見る人がいても不思議ではないが、当方は当面の間それはないと見ている。なぜなら、レディース衣料を中心とするジャヴァホールディングスと、ジーンズを中心とするエドウインでは、商社のかかわり方がまるで異なるからだ。

ちょっと20年前に当方が繊維業界紙記者になったときのことを思い出してみる。現在は幾分業界構造が変わった部分はあるが、根本的にはそれほど変わっていない。

当方が入社した繊維業界紙は原料系に強い新聞だった。他方、レディースアパレルにはからっきし弱かった。レディースアパレルに弱い理由は様々あるが、企業数が多すぎて少ない記者ではカバーできないということも大きかった。一方、紡績などの原料系企業は企業数が少ないから少数の記者でもカバーできやすかった。

そしてその新聞にいることで知れたのが、レディースブランドは素材と製品が直結しにくいが、素材と製品が直結しやすいアパレル分野もあるということである。

婦人服には様々な素材が使われる。綿・麻以外にもポリエステル、ナイロン、シルク、レーヨン、ウールなどなど。それらが単一ではなく複合素材として使われる。綿・レーヨン・ポリエステル・ポリウレタン混なんていう生地も珍しくない。そしてそういう複合生地を複数の生地問屋や商社から仕入れているため、紡績や生地工場と直結していることはほとんどなかった。これは今でも同じである。

一方、紡績や生地工場と直結しやすい分野のアパレル製品もあった。

その一つがジーンズで、そのほかを挙げるとワイシャツ、ワーキングユニフォーム、スポーツウェア、タオルなどというジャンルになる。このうち、担当したのがジーンズとワイシャツなので、先にワイシャツの方を説明する。

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