見出し画像

嗜好性を備え始めた低価格ブランド

先日、某縫製工場の社長の呼びかけで、飲み会に参加した。
縫製工場、バッグ製造工場、刺繍工場の社長に加え、アパレル外注企画担当者、サンプル工場、ブティック店主と、けっこう川上から川下までの個人プレイヤーが集まった飲み会だったといえる。
その席で聞いた話に驚いたのだが、ファッション好きの高校生の息子さんが、生産終了したユニクロ商品をメルカリで定価の倍ほどの値段を払って買っているという。
この息子さんは、気に入ったスニーカーを海外から取り寄せるほどのファッション好き。そんな若者が、欲しかったが生産終了してしまったユニクロの商品をメルカリで定価の倍の値段で買っているのだから、ユニクロの商品を「嗜好品」として認識しているということになる。

先日、1990円の期間限定値下げされていたユニクロ×エンジニアドガーメンツのグレー水玉のMサイズのポロシャツをオンライン注文して無事に入手したが、このポロシャツはサイズによっては完売もあるので、メルカリで5000円くらいで出品されているという。
以前にも書いたが、メルカリでは、店頭値下げよりも高い値段で取引されているユニクロ商品もあった。

こうして見ると、アパレル業界の古株の方には残念なお知らせだが、ユニクロはすでに嗜好品の要素を備え始めているということがわかる。

未だに40代後半以上の世代のアパレル業界関係者や業界紙記者は「ユニクロは実用品」と謎の呪文を唱え続けているが、その「実用品」に乾杯完敗し続けているのはどこの業界だろうか?
とくに、ファッション好きの高校生が倍の値段でも買うという現象は、見落とすべきではないと思う。

当方も来年には50歳になるが、今の40代後半以上の世代がいくら目を血走らせて「ユニクロは実用品」とがなりたてようが、早ければ20年後、遅くとも35年後くらいには全員死んでしまう。もちろん、当方も。
今の高校生は20年後は30代後半、35年後でも50代前半である。そのとき社会の中核にいるのは今の高校生であり大学生である。
ユニクロの商品でも欲しかったら倍の値段でも買いたいという人が社会の中核にいずれは座ることになる。まあ、そのときまでユニクロの隆盛が続いているかどうかはわからないが、少なくとも「低価格ブランドは実用品、ワシらがやっているのはファッション」なんて寝言を言っている世代は全員退場してしまっている。
となると、低価格ブランドでも気に入れば「嗜好品」として扱う世代が今以上にマジョリティーの世の中になっている。

ユニクロに限らず、衣料品に限らず、成熟化した社会では、低価格品だろうと実用品だろうと、すべからく嗜好性が加味されないと売れなくなる。
ワークマンプラスに限らず、作業服にだって嗜好性が加味されてきており、逆にこれまでの「ファッションブランド」がワーキングへ進出するケースも出始めている。
例えば、プーマである。

プーマから安全靴が発売されている。プーマの安全靴は通常の安全靴よりも販売価格が高い。にもかかわらずワーキングユニフォーム店にはそのプーマの安全靴を買いたいという現場作業員が多数来店する。

続きはこちら(無料)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?