ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由

1、ジーンズカジュアルチェーン店の苦戦理由

2015年末に滋賀のジーンズショップ デンバーが閉店し、運営会社である株式会社モリオカは廃業しました。20年くらい前からジーンズカジュアルチェーン店の倒産や廃業は相次いでいます。つい先日も静岡の有力チェーン店、ジーンズショップ オサダが経営破綻し民事再生法を申請しました。オサダはスポンサーがついているので再生しそうな感じですが、どうなるのかまだ予断は許しません。

古くは大阪の三信衣料の倒産から始まりました。フロムUSAの倒産、フロムUSAを引き継いだロードランナーも倒産。カジュアルハウス306も経営破綻に至りました。大阪にあったアイビー商事もなくなっています。そういえば、ダイエー傘下で一時期(25年ほど前)に若者から圧倒的に支持されていたジーンズショップ「ジョイント」もさっぱり見かけなくなり、存在しているのかどうかすら怪しいくらいになっています。このジョイントには、一時期ポイント(現アダストリアホールディングス)の社長にありながら電撃解任され、その後、ナルミヤインターナショナル社長に返り咲いた石井稔晃氏が若い頃に在籍していたことが知られています。

また残っている全国チェーン店3社の業績も冴えません。ライトオン、マックハウス、ジーンズメイトの3社も売上高は縮小し続けており、とくにジーンズメイトは売上高100億円未満にまで縮小し、もはや「全国チェーン店」とは呼べない規模になっております。

どうしてジーンズカジュアルチェーン店が衰退し、それらに商品を供給していた専業ジーンズメーカーは衰退してしまったのでしょうか。生き残っている企業やブランドの現状と合わせて考えてみたいと思います。

多くのメディアや業界関係者は「ユニクロ」に負けたという分析を昔からしていますが、たしかにその要素は否定できません。ユニクロの出現は大きな衝撃をもたらしました。98年に1900円のフリースジャケットで空前のフリースブームを起こしましたが、ジーンズもカイハラ製のデニム生地を使って2900円という価格で発売したので話題となりました。しかし、当時、商品を見ましたが、同じカイハラの日本製デニム生地と言っても、その色合い、風合い、表面感、なによりジーンズ自体のデザインやシルエットなど、ことごとくダサくて「こんなダサい物は2900円でも要らないわ」と思いました。これを「リーバイスやエドウイン並み」と褒めちぎっている業界紙や衣料品メディアの記者は目が腐っていたのでしょうか。

もちろん、低価格ゾーン1900~3900円のジーンズを買う層はユニクロの2900円ジーンズに客を奪われたと考えられますが、じゃあ、7900円以上の高価格帯を買っていた層がすべてユニクロに取り込まれてしまったのでしょうか?それはちょっと違うと思います。この時期からもう少し後、2005年ごろからそれまでジーンズを作っていなかったようなブランドからどんどんジーンズが発売されることになります。国内の大手アパレルブランドでいえば、三陽商会の「バーバリーブラックレーベル」やワールドの「タケオキクチ」、ポールスミスのジーンズラインなどなどです。これに加えて、アメリカやヨーロッパからの高額インポートジーンズが「プレミアムジーンズ」として3万円くらいのものが持て囃されました。「セブン・フォーオールマンカインド」「ヤヌーク」「シチズンオブヒューマニティ」などです。後年ジャパン社が解散し、本社まで倒産してしまった「トゥルーレリジョン」が大人気となったのもこのころです。ディーゼルやリプレイなどのブランドもこのころに飛躍的に伸びた印象があります。

「ファッション」としてのジーンズはこれらのさまざまなブランドに客を取られたといえます。また、現アダストリアホールディングスのローリーズファームやグローバルワークなどのジーンズは5900円前後で中間価格帯の顧客を奪ったといえます。

こうして見ると、低価格はユニクロに、中価格帯はアダストリアなどのSPAブランドに、高価格帯は国内外のファッションブランドにジーンズの需要を奪われたといえます。

ではどうして、多くのブランドがジーンズを作れるようになったのか、ユニクロのジーンズの見た目がだいぶとマシになったのか、というと、その答えは、ジーンズ専業メーカーから独立した人々がOEM・ODM請負い企業を多数立ち上げたからです。今ではジーンズ専門のOEM・ODM企業というのは零細から大規模までありますが、そのどれもが、エドウインやリーバイ・ストラウスジャパン、ビッグジョン、カイタックなどの大手ジーンズメーカーからの独立組が立ち上げたものです。ジーンズ専業メーカー各社が独占していたジーンズづくりのノウハウが拡散してしまったのです。また、ジーンズ専業メーカーと密接な関係にあった縫製や洗い加工などの産地企業も、ジーンズ専業メーカーの弱まりによって、OEMやODMを手掛けるようになり、ここでもどんなブランドでも自由にジーンズが作れるようになりました。

例えば、リーバイ・ストラウス・ジャパンの洗い加工を担当していた西江デニムは洗い加工だけではなく、ODMも現在では手掛けており、中国の工場を使ってさまざまなブランドのジーンズを製造しています。エドウインと密接な関係にある国内最大手の洗い加工場、豊和も自社製品の開発を続けています。このような産地企業がこの10何年間かで急増しました。

これらを使うことによって、専業メーカー以外も「まともな」ジーンズを生産できるようになったのです。この業界インフラが整い始めたのが2003年頃で、2008年ごろにはすっかり整備されていたといえます。今ではジーンズを展開していないブランドはないのではないかと思うほどに広がっています。

では、ジーンズ専業メーカーやジーンズカジュアルチェーン店が低価格層にも「おしゃれ層」にも見放された原因はなんでしょうか。当方と同じ40代後半よりも上の世代の人はピンと来ないかもしれませんが、30代半ば以下の人たちからすると「ジーンズチェーン店はダサい」というイメージが強いそうなのです。専業ジーンズメーカーも「ダサい」というイメージが強いそうなのです。

たしかにジーンズもトップス類も山のように積み上げられたジーンズチェーン店の店頭の見え方は「かっこいい」とはいえません。また、ウエスタンやアメカジに凝り固まっている印象が強く、実際のところそうではない店も多いのですが、やっぱりそのイメージは強く残ってしまっているということです。それと実際の現在の店頭を見ると、例えばマックハウスはあまりにもチープ感が漂いすぎていますし、ジーンズメイトは中学生向けのチープ店にしか見えません。ライトオンはマシな方ですが、それでもやっぱりトップスもボトムスも山のように積み上げられて、好き嫌いが別れる印象です。

(代表的なジーンズショップのイメージ)

実際にはウエスタンやアメカジに過度に凝り固まっているわけではないですが、現状売れているSPAブランドや高額ブランドの店作りと比べると劣って見えてしまいます。掘り返せば良い商品もたくさん埋まっているのに、見た目で損をしているといえます。

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ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由

南充浩

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南充浩

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