[ショートショート]レンタル時間
深夜11時半、原稿の〆切まであと30分。
推敲にはまだ半日はかかりそうだ。
仕方ない、最後の手段を使おう。
私は上着を羽織って外に出た。
春先とはいえ夜風はまだ冷たい中、早足で駅へと向かった。
真っ暗な駅前商店街に、1つだけ電気が灯る店がある。
レンタルショップ、とだけ書かれた店に入ると、時計は11時45分を指していた。
カウンターで「6……いや、12時間」と告げる。
白髪の店員は驚いた顔を上げた。
「そんなにですか? 高いですよ?」
構いません、とにかく必要なんです、と