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夜会考・苦行ツイキャスとゼログラビティについての考察

1961年世界初の有人宇宙飛行を成功させた旧ソ連の宇宙飛行士ユーリイ・ガガーリンの「地球は青かった」という言葉はとても有名だが、その次に有名な彼の言葉はその言葉の後に続けた「・・・私はまわりを見渡したが、神は見当たらなかった」という言葉だと思われる。
しかし、調べてみるとこの神が見当たらなかった発言に関する記録が全く無いらしく、実はガガーリン本人がよく言っていた風刺ジョークが一人歩きしたのが真実だそうだ。
結局34歳にして謎の死を遂げてしまったためガガーリンが本当に何を見たのか全てわからないまま今日に至っている。

1968年、アポロ8号で人類史上初めて月の裏側を周回したジム・ラベルは月の裏側を周回直後、ヒューストンへの通信で言った「みんなに伝えてくれ。月にはサンタクロースがいる」という言葉も今だに都市伝説や陰謀論の話に出てくる有名な台詞だが、これも調べてみれば実はその日はクリスマスであったらしく、言い放ったジム・ラベルの一世一代のジョークであったらしい。
しかし、実際に何を感じたのかは当の本人にしかわからない。
もしかすると本当にサンタクロースが走り回っていたのかも知れないが、ヒューストン側の大爆笑の音声に後に引き下がれなくなったのかも知れない。
実際に何を感じたのかは本人にしかわからない。
世の中の多くは実際にやってみなければまるでわからないことだらけである。
「やってみてから考える」これはパブリックスペース研究やその他多くの研究を始める際に重要なモットーである。

そのことを再確認したのは、前回のブログの最後に触れたのだが、ツイキャスという研究を始めたことである。
厳密には現在「ツイキャス」という苦行を行なっている。(基本的には全員ツイキャスラジオで音声のみ)
前回の記事が9月17日、ツイキャスの記録も最初の回が9月17日の深夜1時13分ということなので約2ヶ月ほど苦行ツイキャスを行なっている。

苦行ツイキャスとはいったい何なのか?
もう一度説明すると雑誌weiweiでのパブリックスペース特集、そしてクローバーメディアのFMラジオ『ご近所さんの気楽なステージ』でのゲスト出演など私とパブリックスペース研究及び夜会での研究、考察などで数年お世話になっている大垣さんがいきなりツイキャスを始め慌てて私も始めた新たな研究である。
大垣さんと面識はないものの兼ねてからweiweiでのパブリックスペース特集を読んでくれていたりSNSではつながりのあるこーだいさんも大垣さんがツイキャスを始めたと知るや否や慌ててツイキャスを始めたのだった。

大垣さんの行動に何故我々は慌てたのだろうか?
私もこーだいさんも無条件に「やられた!」と言わんばかりツイキャスを始めたのだった。
大きく言えば米ソ宇宙開発競争が始まったかのような瞬間だった。
こーだいさんの理由は本人にお聞きしていないのでわからないが、私の場合は『夜会夜会と言っているがたった一人で語り尽くしたことがほとんど無かった。』というところが大きいように思う。
そしてツイキャスで定められている『30分たった一人で話したらいったい自分はどうなるのか?』という研究者としての説明のつかぬ好奇心を前にして始めない理由は全く無かった。

たった一人でいきなりツイキャスを始めた大垣さんの音声を手に汗握りながら最初に聴いた瞬間は、まさにヒューストンで宇宙飛行士の通信を沈黙の中待つNASAのスタッフの気持ちだった。



「テス…テス…テス……」

スピーカーの向こうから薄っすらと大垣さんらしき声が聞こえていた。
そして、雑音や小さな呻き声のような音がした後、はっきりと大垣さんの声が聞こえた。



「何とかしてくださーい!」



どんな所にいるのかさっぱり見当がつかなった。
地球に残っている私からはその状況を感じ取ることはできず、「ここではない別の場所」としか理解することが出来なかった。
ただ、いきなり「何とかしてください」とは何事か。
かなりの苦しい状況下にいることだけは理解することがやっとであった。
そして、また小さな声と雑音が聴こえた後、想像を絶する言葉が聴こえたのだった。



「誰か見てんの……?………………俺?」



私はどんな状況に身を投じているのかますますわからなくなり、果たして大垣さんは無事に帰って来れるのかすらわからなくなっていたが、その後大垣さんは何とかバランスを取り戻し軽快なトークを始め第一回を無事にやり遂げていた。

これは自分もすぐにツイキャスを始めなければならないと、その足でツイキャスのアカウントを取り、ツイキャスを始めてすぐにわかったのだが、全く誰も聴いていない視聴者ゼロの状態でただマイクに向かって30分話すということの初めて味わう恐怖感たるや訳がわからなかった。

まさに宇宙空間そのものであった。
まさにゼログラビティそのものだった。

後に大垣さんにゼログラビティの話をすると「そうなんだよ!ゼログラビティという映画を観てからずっといつか適切な状態でこの言葉を使おうとずっと思ってたんだけど、ツイキャスの瞬間だったんだよ!」と賛同してくれたのだった。
これこそ、体験した者にしかわからないゼログラビティ感。
こんな身近なところに宇宙ってあったんだ感である。
ゼログラビティの発見に私も大垣さんも興奮し、大垣さんはついでに
「それに映画館で映画を観るなんてほとんどないのに、ゼログラビティは観に行ったんだ!梅田に観に行ったんだけど席がいっぱいで諦めかけた時に友人がスマホでぱぱっと検索してくれて、無事に尼崎で観れたんだ!」と実際に映画ゼログラビティを観に行った日の思い出まで教えてくれたのだった。
ゼログラビティ。これは文章として表現するのはかなり難しいのだが、そうとしか言えない無重力空間に我々は解き放たれるのである。



そして、問題の大垣さんが最初につぶやいていた謎の言葉「誰か見てんのかな……?………俺⁉︎」であるが、自分も始めて見てすぐに状況がわかった。
いつかそのことについてまた詳しく論文を書こうと思っているので、かなり簡単な説明になってしまうが、一言で言うと「鏡の中のマリオネッツ論」である。

「たった一人の宇宙空間で宇宙船のガラス窓に映るたった一人の自分」このたった一人の自分に気づく瞬間が訪れるのである。
話し手も自分、聞き手も自分、窓に映っているのも自分自身、誰も居ない宇宙空間であるが、誰も居ないことを確認している自分自身は確かに存在しているのである。
この「全てはマリオネッツである」という発見は後に大垣さんのツイキャスでBOOWYという人たちの歌から解読していくという試みにより、より一層研究結果の信憑性が強靭なものになっていった。
このように、この2ヶ月様々な発見をしたが、改めて言うと我々はツイキャスをやりたかった訳ではない。
つまり、ツイキャスはただの手段であり平均的なツイキャスのように閲覧数を気にしたり、コミニュケーションを目的としたものではない。
大雑把に言えば媒体やツールは何でもよかったのだが、『一人で話したことが放送され保存される』というものを満たしたツイキャスが丁度良いところにあったからに過ぎない。
なので、恐らく大多数のツイキャス利用者と目的が大きく違い、また何故か誰が言った訳でもなく独自のルールが出来上がっていた。

これも、スムーズに行う為に自然に出来上がったルールであり、『ルールの自然発生』というもの一つとってもツイキャスという実験を行わなければ立ち会えなかったことであるのでとても興味深い。

ここで、せっかく出来上がった苦行ツイキャスのルールを一からまとめ記載しようと思ったのだが、自然発生的に出来上がったルールを文章としてまとめるのに些か時間を有した。

ルールには嘘があってはならない。ルールは人を縛るものではなく、目的をスムーズに且つクリーンに全うする為の基準でありリズムでなくては無ければならない。
私は連日板橋区図書館に通い、スポーツのルールブックから司法関連の文献を読み漁り日夜高熱と歯痛に犯されながら苦行ツイキャスのルールを文章化することに一旦成功した。

改定の可能性は常にあるが、今現在の苦行ツイキャスのまとめに代えて以下に記載しようと思う。
また、本来の法律の形式に合わせて書いたので読み苦しい点があるかと思われるが、ご了承いただきたい。





呟放送苦行七法(原文)

一、呟放送苦行和苦行ノ法ノ事。苦行法有苦行以外苦行法無。

二、研究者精神和日々是研究精神。

三、基本的単独談話。

四、閲覧者多少没問題、我的精神我的心。

五、国研究者全身敬意、国富代表。

六、他人不要誹謗中傷。

七、不諦不辞、自己追求信信明天。




ツイキャス苦行七法

一、苦行ツイキャス法とは苦行ツイキャスを行うためのルールである。
ツイキャスという苦行を安全且つクリーンに行う為に定めた基本ルールであり、ツイキャス以外の場での研究と実験は苦行ツイキャス法と呼ばずまた苦行ツイキャス法は適応されない。

二、研究者として挑む。
参加者は研究者としての追求を目的としら苦行ツイキャスに真摯に向き合い研究者精神を如何なる時も忘れてはならない。

三、基本的には一人で30分喋らなければならない。
コラボツイキャス、観覧希望、インタビューなど一人での苦行ツイキャスから派生した例外や研究の流れ上やむ終えない場合を除いては基本的に一人で30分喋るものとする。

四、閲覧数(リスナー)を気にしてはならない。
目的は『一人で何もないところに話し続けたらどうなるか実験』であり、『閲覧者(リスナー)の数を増やす為の行為は苦行ツイキャスではなく、ツイキャスであり、これを研究と実験の目的としない。

五、研究者として精一杯の姿勢と敬意を込めて出来るだけ野口英世のような表情でマイクに向かう。

※野口英世氏とゼログラビティ。

六、ディスるなかれ。
如何なる時も他人を誹謗中傷してはならない。やむ終えず批判したい時や怒りが心にある時も試行錯誤して表現を考え直接的に批判しないこととし、個人の怒りを解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

七、諦めてはならない。
苦行ツイキャスを始めると、自分は何をしているのか、時間の無駄じゃないのか、こんなことに30分使うより勉強をしたほうがいいんじゃないか、など様々な諦める理由を考えてしまうものであるが、その先に新たな研究結果が見えることを信じ精進すること。

これが基本的なルールであり、これから苦行ツイキャスを始めてみたい方や苦行ツイキャスを聴いてみたい方の参考になればと思っている。
また、個人的には第6条「ディスるなかれ」はツイキャスだけでなくSNSや私生活でも一つの大きなテーマとなっている。

そして苦行ツイキャスを始めて現在までの2ヶ月間、大垣さん、こーだいさん、そして私はそれぞれのゼログラビティで思考錯誤しながら実験と挑戦を繰り返してきた。
時に大垣さんは音声だけの手品を繰り広げ、こーだいさんは何時間も中央路側帯を歩き回りながら話し続けた。
それぞれのライフにそれぞれのスタイル。
しかし、孤独で暗い宇宙空間ゼログラビティで戦っているということだけは同じであり気づけば戦友という心理(苦行フレンズ)も芽生えていた。
そして、一定期間やってみてわかったこと、それは「人は一人である」と初日に体感したことが全てなのかもしれない。
その先はどのような実験結果が出るのかわからないが、ひとまずの結果報告として筆を置こうと思う。

また、それぞれのツイキャスは録画として全て保存されているので、是非とも果敢に苦行に挑む姿を見てほしいと共に貴重な実験の記録として何かの参考にしてほしいと思う。

◎大垣さんツイキャス(おおがき鍼灸マッサージ)
https://twitcasting.tv/yuki2ts

◎こーだいさんツイキャス(こーだいラジオ)
https://twitcasting.tv/tadatafayadahqw

◎木石 南ツイキャス
https://twitcasting.tv/minami_kinoko

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