見出し画像

夢追人

大学生は、若い。自由だ。たくさんの道が開かれている。

とよく言われる。私も実際、大学2年の時、大学近くのバス停でそんなことをおじさんに言われた。
だけどなんだか、年々年々、夢がなくなってきている様な気がするのだ。
というか、みんな多分気づいていないけど、無意識のうちにみんなが心の中に持っていた何か、を諦めている様な気がする。 
高校生や中学生、いや、小学生、いやそれよりもっと前、、私たちは沢山の夢を持っていた。みんなは昔、お花屋さんやケーキ屋さんになりたかったし、サッカー選手になりたかったし、好きな人と付き合いたかったし、第一志望に入りたかったのだ。

今だに忘れないが、年長さんの時、同学年の女の子が「プリキュアになりたい!」と言っていて、「そんなのなれないよ!」と私が言って、プチ喧嘩のようになったことがある。人の夢をなれないよ、なんて失礼な話である。本当に申し訳ない。

そういう意味では昔の方がよっぽど可能性があったし、夢があった。結局のところ、20代までに辿ってきた道筋で、なんとなくもう先が決まっているような、そんな気がしてしまうのだ。たとえば普通の文系学生である私が今から医者にになろうとしたら、まあ不可能ではないかもしれないが、ちょっと厳しいところがあるだろうと思うのだ。でも、つい5.6年前ならそんなこと気にしないで、色んな夢を声に出して言えていたはずだ。そして社会に出て、幼い頃に抱いていた"何か"はもうこれ以上追えない、と悟った時、人は家族を持ったり、家族に託したり、そういう方向に舵取りをしていくのだろうか。

なんだか、最近、みんな諦めることを覚えて、諦める妥協点を見出し、妥協による選択が上手な人が多い気がする。しかも無意識のうちに。意識せずにだ。本人は自分が妥協してることすら気づいていない。

本当に心の底から目指した何か、少し前まで持っていたはずの何かを、今も大切にしている人はどのくらいいるのだろうか。

最近、"Bling Dubai" という海外のリアリティーショーにハマっている。そこに出てくる登場人物たちは、みんな超お金持ちなのだが、バツイチか未亡人である。この番組で印象的だったのは、みんな30代だが、夢を追うことを忘れないことだ。再婚のとある女性は、34歳だが、夫との子供が欲しいということを友達に打ち明ける。周りの友達は、「34歳なんてまだまだ若くて美しいから大丈夫よ!」と勇気づけているのだが、それは慰めるための決まり文句でもなんでもなく、本当に心の底から思っているような、34で再婚で子供なんて普通、という様な雰囲気がその空間に漂っていたのだ。

この年齢だから諦める。もう無理だから妥協する。
そんな考えは、彼らには無いようだった。
もしかしたら、何歳は遅い、とか妥協する、みたいな風潮は日本特有なのかもしれない。 
そもそも、4年間で卒業し、大学3年で就活をし、卒業してすぐに働き始める、という年齢や学年を基準にした考え自体日本特有すぎるのだと思う。
ヨーロッパの大学院4年の外国人の知り合いがおり、その人に進路はどうするのか、と聞くと、「まだ決めていない。自分に何が向いてるのかわからない。自分の人生だからのんびり働きながら生きる。apply formは卒業した後気が向いたら送る予定」
とのことだった。なんてマイペースなんだろう。そもそも、4年間で卒業する人も少ないし、キャリアの進みも遅いのだそうだ。
また、外資のエアラインだと、一般企業での定年退職後にCAになる人もいるのだという。

夢を追わなくなるのは、妥協点を見出すのは、この国特有の風潮なのかもしれない。
いつでも、夢は追ったっていいし、それはとてもとても素敵なことなのに。

16〜17世紀のドイツの哲学者、ベーコンの思想に、イドラ論というものがある。
ベーコンによると、人間は4つのイドラに惑わされているというのである。

1つ目は、種族のイドラ(自然性質によるイドラ)だ。それぞれ個人の性癖、習慣、教育や狭い経験などによってものの見方がゆがめられることを指す。これこそ、今回述べている、その年でそれを目指すのは遅い、という歪められた価値観に縛られている状態はまさにこのことを言っているような気がする。

2つ目は、市場のイドラ(伝聞によるイドラ)だ。社会生活や他者との関わりの中で、間違った言葉や伝聞により、歪められた価値観を形成するというものである。噂などがいい例だろう。

3つ目は、劇場のイドラ(権威によるイドラ)だ。
これは、権力を持っている人間や、発言力のある人間が発した言葉が、間違いであっても、本当のように受け取られやすく、皆に影響を与えてしまうというものである。芸能人など発言力のある人間がそれらしいことを言っていると、仮に間違ったことを言っていても、感化されてしまうことはあるだろう。それが、劇場のイドラだ。

このように、人は、種族、噂、権威、そういったものに影響を受け、いろいろな機会を失ったり、本来のポテンシャルを発揮できなかったりする。

なんか、大分話が逸れたが、結局、そういうものに惑わされず、夢を追ったり、やりたいことをやって、自分を失わずにいうよ、ということでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?