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オペラ「カルメン」の魅力をオペラ初心者が本気で考えてみた。

今回「カルメン」というオペラに自分なりに向き合って考えたことをまとめてみたいと思う。

半年間聴き続け、本番で歌い演じたからこそ感じたことを残しておこう。

結果からお伝えすると「とにかくカルメンは音楽がめっちゃいい!」ということになるわけだが、そのあたりを丁寧に深掘りしたい。

そもそもオペラというもの自体、無縁な人生を送ってきたわけだが、さすがにカルメンという名前くらいは知っていた。

フラメンコ、カスタネット、闘牛……などのイメージはあるが話のすじなどはまったくわからない。

よくもまぁそんな状態でオペラを、カルメンを始めたなぁといまとなって思う。

カルメンの練習を始めるにあたってYouTubeでカルメンをサクっと紹介してくれる動画があった。

これであらすじを掴んだわけだが、正直な感想は「なんだこれ、ただの痴話喧嘩じゃねーか」だった。

いや、でもこれホントで、本番当日の公演をみた嫁さんも「ああいう昼ドラみたいなお話だったんだね」と言っていた。

話の内容からするとかなりペラい。

しかし、なぜ「オペラといえばカルメン」と言われるほど、いままで愛されてきたのだろうか……そこが不思議でならない。

そんな疑問を抱きながらオペラの稽古を進めていくなかで、その理由が少しずつわかってきた。

やっぱり音楽が素晴らしい。

一幕〜四幕まであるのだが、物語と音楽が複雑に絡み合っていて、何度聞いても新しい発見がある。

四幕の重要な場面で使われているフレーズが一幕で伏線的に使われていたり、全体を通して隙がまったくない構成になっている。

二幕のフイナーレにカルメンがホセを密輸団に誘うシーンで歌われる「ラ・リベルテ」という曲? がある。

最初にカルメンが歌い、そのあとに合唱団が続くのだが、このあたりの構成も素晴らしくて何度聞いても鳥肌が立つ。

一度盛り上がってから静かになり、再度さらに盛り上がって終わるあたり……痺れる。

フィナーレとなる四幕、ここも最高におもしろい。

闘牛場の前で行き交う人々、物を売る人、買う人、いまでいうフリーマーケットのような盛り上がりが一場面。

そのあとに闘牛士が闘牛場に入るシーンがあり、ここは合唱が肝な名シーン。

それが終わるとしっとりとしたカルメンとホセの長い最終シーン。

そして悲劇の最終場面と繋がるわけですが、この四幕冒頭のワチャワチャしたところからの落差が半端ない。

さっきまで舞台にいたたくさんの人々が一瞬でいなくなり、ふたりだけの芝居になる流れ。

観ている人たちはいったい何が起きたんだ!? と置き去りにされたような気持ちになる。

その空いた空間にカルメンとホセの二重唱がスッと入ってくる。

この心地よさがたまらない。

音符のひとつ、ひとつに意味があり無駄がない。

どのフレーズも印象的で一度聞いたら忘れられない……どころかもう一度聴きたくなる。

まさに悪女カルメンのような魅力があると思った。

とここまで音楽のお話ばかりしてきたし、お話的には昼ドラとお伝えしましたが、実はお話にもとてつもない魅力がある。

ここがまたオペラ「カルメン」の魅力だ。

でなきゃ、ここまで長きに渡って愛されることはなかったと思うし、世界で一番有名なオペラと称されるわけがない。

「カルメン」という名前だけあってカルメンにフューチャーされがちだけど、この物語の主人公はホセなんじゃないかとも思う。

カルメンは最初から最後まで変わらず、自由を愛し自由に生きて死んでいく……そういう自由を絵に書いたような存在。

しかしホセは一幕から四幕まで、その姿をカメレオンのように変えていく。

初登場シーンはドラえもんののび太くんみたいな永遠の5年生みたいな感じだけど、カルメンスイッチが入った途端に人が変わる。

カルメンに溺れ、仕事に終われ、ミカエラを裏切り、闇の窃盗団に闇堕ちしていく姿はあわれとしかいいようがない。

その一幕ごと、毎シーンごとに変わっていくホセの表情や立ち振る舞いがオペラ「カルメン」の肝ではないかと考える。

またこんな興味深い考察も見つけたので読んでもらいたい。

「ではなぜ、カルメンはホセに自分を殺させたのか……」

という疑問がひとつ残るが、どんなものだろうか。

絶世の美女と呼ばれたカルメンはなぜあの世に行きたかったのだろうか。

自殺ではなくホセに殺される道を選んだのか、謎は深まるばかり。

おもしろい。

冒頭では「音楽が素晴らしい」といってはみたものの、なんだかんだ言ってカルメンはそのすべてが最高であるという結果にたどりついた。

何度聞いても飽きることがない、聞くたびに気づきがある、聴けば聴くほど聴きたくなる、噛めば噛むほど味が出てくるスルメのような音楽。

スルメン……。

思いついちゃったから仕方がないですよね。笑


新潟県でカメラマンとして活動しています。特に飲食店などのメニュー撮影、ブツ撮りに定評あり。ポートフォリオ→https://jinbo-lab.jp/。一般社団法人 愛南魚沼みらい塾理事。1980年生まれ。