コント芸人好きがすすめる「ガリベンガーV」の世界

「ガリベンガーV」とは、バイきんぐ小峠×大学教授×バーチャルユーチューバーの番組だ。
ラーメンとセロリと生クリームを同じ器にあえたらなぜか成立しました、みたいな番組。どういう経緯でできたか知らないが、1回見て即、公式YouTubeチャンネルに登録した。未公開映像とかに首ったけである。(TVerで先週分は配信中)

軽めの教育番組みたいな雰囲気だけど、
先生が「どう思いますか?」って挙手を求めると、
Vチューバー3人、つまり生徒全員が「あっ、大喜利が始まった」と解釈してそれぞれのキャラにのっかった答えを言い出す。学級崩壊だ。

しかし、盛り上がっている女子に先生が注意すると、どっち側から見てもつまらなくなる。
そこに小峠が割って
「アニメーション共!」「電源落としてやろうか」と、Vチューバーを大ざっぱに解釈したツッコミを入れるのだ。
人とロボットがコンビを組んだり戦う作品は山ほどあるが、「電源落としてやろうか」は初めて聞いた! Vチューバーを異物として対処するんじゃなくて、出演者として突っ込んでいる。

アメ車とロックと黒の皮ジャン。バイきんぐ小峠はそういう世界観で生きてきた人だ。
オタク的文化に縁のない人が、ネットの美少女キャラに「バカみてえな喋り方だな!」って突っ込む! それってぜったいいやな感じになるやつなのに、言い方、表情、1ミリでも狂えばいやな感じになるはずなのに、いやな感じを残さない! 

芸人にとって言葉は、とくにツッコミのフレーズは武器だ。

この「メモ取れ」の言い方とか!
番組内で地球の説明してるときに、「マントル食うな」って、この言い方がそのまんま使われていた。

小峠の叫びは、怒った顔できつい言い方なのに、おかしさがある。
繰り返しテレビや舞台にかけて、
「この間(ま)、この言葉選びならいける!」って確信できるまで磨いて磨いて完成させた武器で、Vチューバー相手の未知の環境を切り開いていく。
強いツッコミがあると、Vチューバー側も安心して発言できるので、たとえばモノマネを無茶ぶりされても、沈黙よりは何か発言ができる。トークが弾んでいく。
教授、小峠、シロ、それぞれが自分のポジションでトークを拾い、解説していく。連帯感がすごい。

もうひとつ小峠の人選で良かったのは、以前鈴木史郎がバイオハザードをプレイするのがウケたように、
「オタク文化に縁のなさそうな人が驚いたり、楽しんだりしている姿を見るうれしさ」もあるんだと思う。

結果、教授は新しい文化や若者に肯定的な人に見えるし、
女子グループも有名な教授の前でわーわー騒いで休み時間感が出る。
なにより、小峠・シロ、どちらか一方にしか興味がなかった人が互いに「これは向こうもただものではないな」と思える。

ネットで受けていたはずのコンテンツが、広い世界に出したとたんに白けてしまう事態を、何度か見てきた。だけどこの番組は、合うはずのないようなふたりで、スタッフも予想してないような化学反応が起きている。

ここから、お笑い好きがVチューバーの配信を観るようになったり、テレビを見ない人がキングオブコントに興味を持ち始めるのが理想だけど、それはもう一段ハードルが上がる。
だけど、テレビ番組とネット配信を勝手に敵同士にして、どっちが上だの下だの、規制だの炎上だの、せっかくもっと楽しめるはずのものを不満で塗り固めるよりは、ガリベンガーVを観るほうが、ずっと気持ちがいい。

この記事が参加している募集

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。