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破綻するオーケストラ業界と報われない音楽家たち ビジネスモデル編

本noteは、音楽家の低すぎる年収とオーケストラの破綻具合について書いた「オーケストラ業界の現状編」の続きです。今回は、オーケストラのビジネスモデルと収支の詳細を解説していきます。

オーケストラのビジネスモデルとは?

オーケストラのビジネスモデルは、いたってシンプルです。ひと言でいうと、「音楽を演奏して、その対価を受け取ること」になります。

そして、その手段は大きくわけて3つあります。

1つめが、自主公演です。

オーケストラ自身が企画して開催する演奏会を指します。多くの場合は、著名な作曲家が作った曲を演奏します。オーケストラがお客さんにチケットを売り、その代金を受け取ります。

2つめが、依頼公演です。

こちらはいろいろなパターンがあります。たとえば、オペラ団体やバレエ団体からの依頼公演。文化庁からの依頼で実施する音楽鑑賞教室や、ゲーム会社からの依頼で開催するゲーム音楽のコンサートもこれにあたります。依頼した団体や文化庁、会社などから公演費を受け取ります。

そして3つめが、録音です。

テレビ局や制作会社から依頼を受けて、映画やドラマのBGMや主題歌を演奏し、録音するという仕事です。

収入の比率としては多くの場合、依頼公演 > 自主公演 > 録音となるようです。

オーケストラの収支内訳はどうなっているのか

続いて、オーケストラの収入と支出の内訳を見ていきましょう。例として創立70周年を超える代表的なオーケストラである東京交響楽団の数字を参照してみます。

・自主公演
収入:2億6800万円
支出:5億円

・依頼公演
収入:5億4700万円
支出:6億7000万円

・録音
収入:2900万円
支出:1300万円

平成28年度 オーケストラのマーケティング・リサーチと芸術団体のための戦略プラン構築、およびオーケストラのためのマーケティング・ハンドブックより抜粋

これらをそれぞれ合計すると、収入は8億4400万円、支出は11億8300万円となります。

以上、3億3900万円のマイナスです。ですが前回で解説したように、民間団体や公的機関からの支援によって補助金が注入されるので、結果的に収支はプラスになります。多くのオーケストラでこうした状態が続いています。

それでは、オーケストラのビジネスモデルが間違っているのでしょうか?

答えはNOです。問題点は別にあると思います。なぜなら、ビジネスモデルが似ているプロレスや歌舞伎では、公演での収入をメインとしながら黒字になっている団体もあるからです。

私は、こうしたビジネスとして成立しているとは言えない組織が “あこがれの就職先” として存在し続けることは、これからの音楽を担っていく若き音楽家たちの害にすらなるのではないか、と思います。

次回は、より詳しくオーケストラの活動・ビジネスを解説しつつ、具体的な課題とその解決方法を探っていきます。

東郷源 サービスデザイナー/ キャリアアドバイザー
洗足学園音楽大学、桐朋学園大学を卒業後、音楽家として活動。その後、IT営業と人材紹介業を経て2017年から現職。新規事業開発支援、組織デザイン、製品・サービスデザイン、 アーティストキャリアデザイン、 営業コンサル、 IT事業支援を行う。Twitter @gen_togo ご連絡はTwitterのDMからどうぞ


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