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[Book]坂本龍一/音楽は自由にする

 先日、実家に帰ったとき、父が「これ興味ある?」と一冊の本を見せてくれました。

 坂本龍一氏、初めての自伝「音楽は自由にする」。2009年刊行なので、氏が57歳の時の書籍です。父がいつ購入したのかは知りませんが、第三刷2009年3月15日のもので、発行が2009年2月25日とあるので、だいぶ初期のものと想像。

 この本を渡された時、はっとしました。私が好きそうな本を父が渡してくれるだろう、というのは、私の活動を知る父であるから大体予想できます。しかし、渡すタイミングが絶妙だったのです。

 この夏休み、3年ぶりに久々に穏やかな日々が過ごせ、50歳という区切りの歳ということもあり、買ったはいいが聴く時間のなかった積みっぱなしのCDを整理していました。その中に、坂本氏の「Year Book1971-1979」がありました。
 ブックレットには、タイトルの通り1971-1979の主な出来事とともに曲解説が掲載されており、だいたい芸大在学中〜院兼スタジオミュージシャンとして多忙な時期〜YMO手前のことが掲載され、CDには芸大在学時の作品も(1980年代に再演したもの)収録されていました。坂本氏も当時はこういう感じだったんだ、と感慨深く聴きました。そして、さらに自伝である「音楽は自由にする」を読んでみたいな、と思っていた矢先のことでした。

 父とは、こういう不思議なことがたまにあって、なにか不思議な力が及んでるのでは、、、という話でもなく、改めてよくよく考えると、父は長年書籍の編集を職業としており、在職中は児童向けの図鑑や、20世紀の人物辞典などにも関わっていました。創作や演奏は趣味でも行わなかったし専ら聴く方だけで、私と音楽や芸術について、ものすごく話すというわけではありませんでしたが、私が質問したことに答えられなかったことはほとんど無く、あったとしても、次の機会には何らか新たな切り口で教えてくれました。

 「あれ?なんでお父さんこの本(坂本氏の本)持ってるの?」と聞くと「まだまだいろいろあるよ」と、見せてくれた本棚は宝の山で、思わずアレもこれもと引き取りました。(画像奥、ユリイカ、古いものは1974年のもの)

「音楽は自由にする」坂本龍一著、と1974年〜1995年ユリイカ抜粋

これまでも、折々にスッと本を渡してくれ、そのマッチングさ加減にあまり気に留めてなかったが、ふと家に戻ってから気がつきました。
「私の方が、父に近づいてるんだ」と。

 私は2016年から音大に講師として勤務し始めましたが、それまでは、他の作曲家の背景などは、さらっとインタビューを読んだり、一般的な書籍を必要があればたまに読むくらいでした。
 2020年から新しい授業を担当することになり、内容は、主に西洋音楽史の後期ロマン派から現代に徐々に向かい、それらと商業音楽との関連を系統立てて説明する、といったもので、この授業を行うようになってから、楽曲分析だけでなく、作曲家と時代背景が気になってしまうようになりました。嘘は教えられないので、必ず参考文献(書籍や論文)を探す、という必要があったのです。
 ユリイカの方は、そういった状況にぴったりの内容だと思いますし、3年前の自分だったら、この表紙を見ても、ただ音楽関連の書籍だね、としか思わず、宝の山とも思わなかったと思います。

「音楽は自由にする」は、まだ「はじめに」を読んだだけですが、さっそく先を読むのが楽しみになりました。

2023年9月4日

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