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今週のSaaSニュース! Vol.91(3/13週)

今週の資金調達ハイライト

社内コミュニケーション統合SaaS Staffbase $115M調達
ビジネスコミュニケーションは、SaaSの普及に伴い、複数のツールを利用するようになった。例えば、チャットはSlackやTeams、ビデオ会議はZoomやGoogle Meet、プロジェクト管理はAsana、スプレッドシートでのコラボレーションはAirtableなど。これらのツールは社内に特化していない。ドイツ発のStaffbaseは、エンタープライズ企業の社内コミュニケーションに特化した、統合コミュニケーションSaaS。導入しているエンタープライズ企業は2,000社、利用者は1,300万人を超える。本シリーズEはGeneral Atlanticがリード。バリュエーションは$1.1B。(Staffbaseとは?-ドイツ語)

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コンタクトセンターAI×SaaS Cresta $80M調達
Crestaは、顧客対応窓口であるコンタクトセンター向けにAIを活用して、エージェントのパフォーマンスを可視化し、最適な顧客対応を支援するSaaS。CX Awardでは"最も革新的なプロダクト"に選出されており、高い技術力に定評がある。昨年の売上は3倍。既存顧客からの売上成長率を示すNRRは、驚異の210%。本シリーズCはTiger Globalがリード。バリュエーションは$1.6B。(Crestaとは?)

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e-コマース版PLAID(API SaaS) Rutter $27M調達
Rutterは、EC事業者が利用しているECプラットフォーム(Shopifyなど)と他のSaaSをAPI経由でデータ連携することで、在庫データを統合管理したり、財務データと紐づけて融資を受けるなどを支援するe-コマース版PLAID。現在はFintech系SaaS企業(RampやAirwallex)とも協業しており、ECとFintechの架け橋のポジションを狙っている。昨年から売上は10倍成長。本シリーズAはAndreessen Horowitzがリード。(Rutterプロダクトデモ)

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Facebookが終了したDiemの社会実装を目指すAptos $200M調達Diemは、大企業が数十億ユーザー向けに分散型ネットワークを構築する、メタ(旧Facebook)が開発した仮想通貨サービス。2022年2月に同社はDiemの提供断念を発表。Aptosは、元メタのチームが独立してDiemの提供を目指すスタートアップ。本ラウンドはAndreessen Horowitzがリード。
商品情報管理SaaSのリーダー企業 Akeneo $135M調達:Akeneoは、ECや小売事業者向けに商品情報管理(PIM)やプロダクトの顧客体験(PXM)を向上させるSaaS。本シリーズDは、Summit Partnersがリード。
コネクティッドTVのコンテンツ制作支援SaaS Amagi $95M調達:インド発のAmagiは、メディア・エンタメ業界向けに動画コンテンツ制作・配信・収益化を支援するSaaS。年間成長率は+108%。本ラウンドはAccelがリード。ユニコーン入りを果たした。
AIのワークロード最適化SaaS Run:ai $75M調達:イスラエル発のRun:aiは、GPUリソースを最適化するためにワークロードの可視化を行うSaaS。昨年の売上成長は9倍。本シリーズCはTiger Globalがリード。
グローバルタレント管理SaaS Multiplier $60M調達:2020年シンガポール発のMultiplierは、地域外のグローバルタレントの採用支援・給与支払を支援するSaaS。本シリーズBはTiger GlobalとSequoia Capital Indiaがリード。
SMB向けHRオンボーディング自動化SaaS Bambee $30M調達:Bambeeは、SMB企業向けに採用後のオンボード、トレーニングなどを自動化させるSaaS。昨年の売上は2倍成長。本シリーズCはQED Investorsがリード。
調剤薬局の顧客体験向上SaaS House Rx $25M調達:House Rxは、患者に合った処方・調剤・保険適用を促進させるために医師、薬剤師、保険会社が連携するSaaS。本シリーズAはBessemer Venture Partnersがリード。

ストラテジー

SaaSのグロース戦略ガイド
SaaSビジネスにおいて、➊どの顧客を狙い、➋どういうプロダクトの価値を届け、➌どう顧客を獲得するか?は自社の再現性のある成長を実現する上で基本中の基本になる。しかしスタートアップによって、この解像度は驚くほどバラバラ。T2D3のような成長スピードを維持できるSaaSスタートアップは、この解像度は高い。この記事は、このグロース戦略において重要な➊市場選定戦略、➋プロダクト戦略、➌GTM戦略で考えるべきポイントをうまく整理している。SaaSにマッチする課題として、FIUU(頻度が高い・重要な・緊急性がある・十分に対応されていない)フレームなど、SaaSモデルで考えるべき重要なポイントが解説されている。

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営業&マーケティング

CACペイバックの基本:どう計算し、なぜ重要なのか?
世界的なグロース株全体の下落から、SaaSでも「効率的な成長」がより強調されるようになった。実際に、高い営業利益率の高いZoominfoや、キャッシュ効率の高いPLG成長モデルのAtlassianは、比較的株価も安定している。SaaSの成長効率性を測る指標として、世界的に最も一般的なCACペイバックの基本と重要性を解説した記事。下図はARR規模別のCACペイバックの中央値なので参考にしてみてはいかがでしょうか。

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プロダクト開発

PMはプロダクトセンスをどう磨くのか?
SlackやYouTubeのPMとして、米国PMコミュニティで尊敬されているJules Walter氏にPMがどうやってプロダクトセンスを磨くかを解説した記事。プロダクトセンスは、PMに欠かせないスキルとして常に上位に位置付けられている。しかしプロダクトセンスとは、そもそも何か?どう磨くのか?考えにくい。この記事で、Julesさんはプロダクトセンスは、顧客への共感(empathy)と創造性(creativity)の2つの掛け合わせであり、この2つを磨く実践的な方法を紹介している。PMのみならず、PMFを目指す起業家の方は非常に参考になると思います。

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ファイナンス

上場マーケットの現状分析
米Redpoint Ventures Logan Bartlett氏による、SaaS銘柄のマルチプルの変動と2000年/2008年の急落を踏まえた未上場マーケットへの資金流入に関する考察記事。現在の上場SaaS銘柄のマルチプルは、金利の上昇と相関した下落が起こっている。しかし過去のバブルと異なり、未上場マーケットの投資は上場マーケットと連動して急激に冷めることなく、未だに一部100xのようなハイマルチプルでの調達も起こっている。また主要な上場SaaS銘柄も、成長を加速させる好業績を実現しており、強いファンダメンタルがあることを証明している。但し、上場マーケットにおけるマルチプルが2021年並みの高水準に戻るかどうか?については、こちらのJamin Ball氏の見解のように、大きくは戻らない可能性が高いとする意見もよく目にする。そもそも現状のEV/Revenueマルチプルは、コロナ以前の長期トレンドに戻ったに過ぎない。またSaaS銘柄の評価は、以前と変わらず成長率を中心に評価される、という見方も主流だ。

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