パンが欲しい【Lycian way10】

目覚めると、晴れていた。

コテージからの眺めは、想像以上に美しかった。

レモンバームを摘んで、オーナーにお礼を告げた。

海へ下り、岩場でサンドイッチを作った。

ありがたい事に、オーナーはパンまで分けてくれたのだ。

具沢山なので、各々好きなサンドイッチを作った。

私は、白いサンドイッチを作った。

マッシュポテトとカリフラワーとローズマリーとオリーブオイルと塩。

友人は、緑色のサンドイッチを。

マッシュポテトとカリフラワーとグリーンペッパー、バジル、ジョージアのスヴァンソルト。

満たされて歩くと、あっと言う間にKabakに着いた。

10kmも歩いたと思えなかった。

今日からは、晴れの予報だ。


Kabakには商店があるはずだ。

しかし、地図に載っている店はすべて閉まっていた。

Kabakは、無人のヒッピーリゾートだった。

ホテルをノックするも、どこにも人がいない。

やっとの思いで第一村人を発見した。

曰く、ここ1週間の大雨で買い物に行けなかったから、自分たちの食料も尽き始めているとのこと。

次の町まで、20kmはある。

その上、Kabak周辺は地図を見る限り絶景の連続だ。

計画としてはKabakで食料を補充し、気に入った海辺があればそこで何日かキャンプして、次の町までゆっくりと向かう予定だった。

ここで諦める訳にはいかない。

何軒もホテルのドアをノックしていると、一人の女性が応じてくれた。

自分は普段料理をしないから、何も持っていないんだ…と言いながら缶詰のグリンピースとパスタをくれた。

お金はいらない、と言う。

恵んでもらってばかりで、誰の役にも立てないなぁなんて思いつつ、引き続きパンを探す。

しばらく坂を登った先で、バーベキューの匂いがしてきた。

煙が上がっている。

これは、良い予感

ルーフバルコニーでバーベキューをしていたから、下から大声で聞いてみた

「食べ物を売ってくれないか」

「いいよ、上がっておいで」

と、バルコニーへ向かうと、ちょうど買い出しから戻ってきたところだったようだ。

パンとオリーブを売ってもらった。

あぁ、、これで、また生き延びれる…

日が暮れる前にテントを張る場所を探すことにした。

海沿いはリゾートホテルの庭に面している。

少し離れた杉林でテントを張ることにした。

火種を集めながら杉木の間から海に落ちる夕陽をみた。

この日の夕陽は、雲がかかってタージマハルの頭みたいな形をしていた。

陽が落ちるとあっと言う間に暗くなった。

私のヘッドライトは壊れてしまったので、ほぼ何も見えない。

雨上がりで湿っていて、なかなか火がつかない。

火はついたものの、薪が足りなくて料理はできそうになかった。

缶詰のグリンピースが、今夜の夕飯になった。

友人は早目にテントに戻り、私は残りの薪を燃やして、火を消してからテントに戻った。

ひとりで見上げた空は、星で満ちていた。

さて寝ようと思ったその時、雨が降ってきた。

さっきまでの星空はなんだったんだろう。

明日は晴れてくれるといいな。






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