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野生のオリーブでオリーブオイルを作る【Lycian way6】

ウィスキーと別れ、KasからバスでPatara beachを目指す

Patara beachはウミガメの産卵地として有名な、美しい白い砂浜だ

乗り換えが必要だと思い乗り込んだバスだが、Patara beach付近まで行くという事で、直接目的地を目指す

英語を話す、とても気さくな運転手だった

「手前に遺跡があるから、通常だと入場料がかかる。でも、僕の家まで行けば入場料払わずにPatara beachまで歩けるよ

と、彼の家の前まで乗せていってもらうことにした



車窓からの景色は、めまぐるしく変化した

右手には、時間があれば歩いたであろう山が、左手には海

運転手の家は、ひらけた高台にあった

「もしまた町に戻ることがあれば、うちに来てね!」と言われ、別れを告げた



オリーブ畑と、崩れかけたボロボロの古い遺跡を抜けると、よく整備された道路に出た

ユーカリの並木通りを通る

葉っぱを手に取り、匂いをかぎながら歩く

右手に、修復済みの大きな遺跡群が見える

ローマ時代に創られた巨大な劇場や柱や壁がそびえ立つ

雨雲が、すぐ目の前まで迫ってきている

どんよりと湿った空

ポツポツと雨が降ってくる

立ち止まり、レインウェアを着た

向こう一週間は雨の予報だ


Patara beachの入り口前には、出店が立ち並んでいた

貝殻でできた亀や、ネックレスがブルーシートの下から姿を覗かせる

ハイシーズンにはパラソルが並び、人で賑わうのだろう

しかし季節は冬

とても静かな砂浜だった

歩く度、砂に足を取られる

砂丘のような細かい白砂に、雨粒が染み込んでいく

「こんな雨の中テント張って、やることないよ〜宿探そうよ〜」

「雷を見ながらオリーブオイル作るんだよ」と、彼

「ここで?手も洗えないよ!」

遡ること3日前…
オリーブオイル作りを思いつき、野生のオリーブの実を大量に拾ったのだ

私「オリーブオイル、手絞りでも作れるんだって!やってみたい!」

彼「オリーブなんて重くて持って歩きたくないよ…」

結局、拾い始めたら夢中になり、彼は私よりたくさん拾っていた

つまり、ここ3日間4kgのオリーブの実をバックパックに忍ばせていたのだ

私の想像では、歩きながらオリーブをもみもみして、キッチン付きの宿に着いたら絞る予定だった

まさか、テントの中で絞ることになるとは…


大雨の中、粒子の細かい砂浜にテントを張るのは困難を極めた

荷物もテント内も、砂まみれになった

もう、どう足掻いても砂からは逃げられず、諦めざるを得なかった

少し経つと雨は止み、ドアを開けてオリーブオイル作りを開始した

オリーブオイル作りの工程を要約すると以下の通り

①オリーブをよく揉む
②ネットなどでオリーブを絞る
③絞ったオリーブを濾す
④1日置いて、分離したオイル部分のみを別容器に移す


拾った空のペットボトルの上部をナイフで切って、容器を作った

もみもみしたオリーブを、にんにくのネットで絞り、容器に入れる

手がオイルまみれになりながらも、泥んこ遊びみたいで楽しかった

両手がオイルで塞がれ、手を拭くティッシュすらなく、テント中が砂とオイルだらけになった

次に、先程潰したオリーブを、さらに濾して容器に入れる作業だ

ペットボトルの上部を漏斗にして、その上からガーゼタオルに包んだオリーブを絞る

この作業が苦痛だった

どんなに絞っても、オイルは大した量にならないのだ

オリーブの粕だけがどんどん増えていく

オリーブの粕は、一見オイルがもっと搾取できそうにテカテカ光っているが、絞ってみるとほとんど油が出てこない

砂と油とオリーブの粕にまみれたテントの中

絞りながら片付けを想像し、絶望した

言い出しっぺのわたしがまた不機嫌になり、ぷりぷりしながらオリーブを絞る

全てを絞り終え、更に落胆する

「……これだけ?!!!!」

結局、250mlと、想定の半分以下のオリーブオイルしか搾油できず、消化不良に終わった

彼は、紫色した液体に失望していた

オリーブの香りがテントの中に充満し、食欲をそそる

そうだ、お腹空いてたんだ!

と、最後の一欠片のバクラバを食べると元気になった

最後の工程は、別の日にやることにした

タオルと砂で手の油を拭い、同じタオルでテントを拭き、油まみれのジップロックやペットボトルは袋にひとまとめにして、後回しにした

「油だけは工場で搾油すべきだね」

「こんなに食べ物を無駄にしたのは初めてだよ」

「なんでも手作りが良いってわけじゃないね」

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