見出し画像

好きnote 46 「セクシー田中さん」

毎週楽しみにしていたTVドラマ「セクシー田中さん」が終わってしまった。

原作はマンガ。

会社から「浮いてる」「枠外」と揶揄されている地味OL 経理の田中さん。同じ会社で派遣社員の今どき女子朱里は田中さんの姿勢やスタイルの変化に気づいていた。そんな中、たまたま立ち寄ったお店でベリーダンスのショーを見て…という始まり。

私の周りにベリーダンスをやっている人が割といるのでベリーダンスを見て衝撃を受けるということはなかったけど、とにかく毎回刺さるセリフがあっていいドラマだった。特に第1話のラストは、このドラマの大事なテーマがギュっと詰まっていて本当によかった。

人とうまく関われず自信を無くし背中を丸めて生きてきた田中さんが、ある日鏡に映る自分を見て「まだ35歳なのに老婆がいる!」とその自分の姿に驚き、胸を張って曲がった背筋を伸ばそうと決めた。ベリーダンスが自分に魔法をかけてくれたと田中さんが朱里に打ち明けるシーンは泣かずにはいられない。そしてそんな田中さんに出会ったことで、自分も今まで出ないようにしていた枠外へ飛び出してみようと決意する朱里。朱里が田中さんのダンスを見ながらヒラリー・クリントンの演説を思い出すシーンも良い。

ドラマの中で田中さん朱里それぞれの恋愛パートもあるが、私はドラマの中の田中さんと朱里の出会いと関係性が尊くて好きだった。朱里ちゃんのまっすぐな憧れと正義感、現実的でしっかりしてるところ。田中さんは知れば知るほど少女のような可愛さと美しさが引き立つところ。お互いの知らなかった面を少しずつ知りながら信頼しあって味方になっていく。尊い!!

男性陣はクセが強かった。女性蔑視がひどくて価値観が古くて口も悪い笙野、チャラくてうまく自分を優位に立ち回れるようにしている小西、ズルい男に見える進吾、妻帯者でどんな女性にも距離が近くて優しい三好さん。最初は「男たちがみんなどうしようもない!」と思って見ていたのが、過去の出来事やそれぞれのいろんな面を知り、田中さんや朱里との出会いで変わっていく姿を見ていると理解が変わっていく。ドラマとはいえ普段の私なら絶対に関わらずに軽蔑しちゃうようなタイプの人のいろんな面を見れるのがよかった。よくあることでもあるけど、人はちょっと接しただけで相手をわかったような判断をしてしまう。でもそれは勝手な偏見からの決めつけや思い込みなんだな。

私は特に若い頃思い込みが激しかった。自分に対しても人に対しても勝手な偏見で決めつけて悪い面ばかり見ていた。そのくせ自分には敵わないと感じると自分と比べて落ち込んだり、嫉妬したりして自信がなかった。勝ち負けなんて考えたくないのにそんな風に人を見てしまう自分が嫌だった。だからか最終回の朱里のセリフに共感した。

ずっと自信がなかった。まっすぐ自分を見るのが嫌だった。ちっぽけで何もできない自分を自覚するのが嫌だった。何でみんな自分にはたいした価値がないって思っちゃうんだろう。誰に吹き込まれたんだろう。思い当たることがありすぎて、もうどうでもいい。

セクシー田中さん 最終話より

人は変わる。明日何が起きるかなんてわからない。昨日嫌いな人を今日は大好きになるかも知れない。そう思うとワクワクしない? と言った三好さんのセリフもよかった。

そしてこのドラマのラストシーンは斬新だった。最終回が12月24日のクリスマスイブに放送されたというのにこのラストを持ってきたことに拍手を送りたい。ラストが斬新すぎて、公式TwitterやInstagramには納得いかないとか、スッキリしないとか、続編ないと困る! みたいな意見がたくさん書かれていた。でも、私はこのラストを評価したい。だってこのラストは、セクシー田中さんというお話に流れているテーマそのものだもの。

結婚するとかしないとか。
付き合うとか付き合わないとかではない。
自分にとって幸せに思える、好きな人や好きなものがある。それが愛しくて尊い。
誰かに埋めてもらうんじゃない。
自分が自分をしあわせにすること、自分が心から好きなものを大切にして、胸を張って背筋を伸ばして生きていく。

20〜30年前にはクリスマスイブの夜にこんな内容のドラマ放映しなかっただろう。今でさえ、付き合うか付き合わないのか、結婚するのかしないのかというわかりやすい価値観を求める視聴者が多数派だ。それでも尚、このお話の核になるテーマをブレずに突き通したことが素晴らしい。

原作者がかなり口出ししたと書かれたものも読んだ。もしかしたらドラマ制作側は視聴者の大半が求める付き合うか付き合わないか、結婚するかしないかというわかりやすい価値観のハッピーエンドにしたかったかも知れない。でもそうなってしまうと、「セクシー田中さん」で伝えたいメッセージとは異なるだろう。私は原作者の意思を通したことを評価したいし、最終回の朱里のセリフにある「誰かに思い込まされた価値観」から自由になったラストだと思う。

毎週楽しみにしてた田中さんが見れないのは寂しいけど、私は私の人生を生き、私の好きを大切にして胸を張って背筋を伸ばしていこう。

そんな風に誰かの心を自由にする魅力が田中さんにある。


↑「セクシー田中さん」はこちらで全話視聴できます。

この記事が参加している募集

スキしてみて

テレビドラマ感想文

サポートほしいです!  よろしくお願いします! お金をもらう為に書いている訳じゃないし、私の好きや感動に忠実に文章を書いていますが、やっぱりサポートしてもらえると嬉しいし、文章を書く励みになります。 もっと喜んで文章や歌にエネルギーを注いでいけますように。