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私が欲しかったものは

9月も半ばが過ぎたのだけど、夏が完全に終わる秋分の日に書き残したいことがある。今年の夏、私にとって、とても特別な体験があった。

8月5日に恵比寿LIQUIDROOMで行われた「どんと還暦祭~ウタの遺伝子~」に行って来た。

贅沢な出演者のイベントです

この2年間、ずっとどんと関連のイベントには行っていなかった。介護施設で働いているし、家には高齢の両親もいる。どんとのパートナーである小嶋さちほさんから直々にイベントに来ませんか? というお誘いがあってもお断りしていた。

今回は何故か戸惑いもなく、素直に東京に行きたいなと思った。それまでは倫理観的なものを尊重していたと思う。だけど、もうそういう自分の中のしがらみを軽やかに超えて、素直に感じたままの自分の気持ちを大事にしようと思った。

7月後半に入って東京で新規感染者数が! とニュースが騒がれても、何だか「大丈夫」と思っていた。ただ今回は移動も少なくして、ゆったりできる旅にしたいと思った。

そうして見つけたのがJTBのこのプランだった。

品川駅:徒歩5分 「グランドプリンスホテル高輪」1泊2日 
新幹線 指定席往復付き 
アーリーチェックイン 14時
レイトチェックアウト 12時
チョコレート引き換え or ワンドリンク プレゼント
消費税込み 39,900円(消費税込み)

新幹線の指定席往復で30,000円くらいするはずだから、グランドプリンスホテル高輪に10,000円切った料金で泊まれるの? 品川駅ならライブ会場の恵比寿駅からも近いし、新幹線降りてすぐの移動で済む。「これしかない!」と直感的に決めた(私が旅した時のプランページは無くなっていましたが、似たようなプランはJTBにあったので興味ある方はご自身でお調べください)。

職場には有給届を出した。連絡先もグランドプリンスホテル高輪の住所と電話番号を記入して滞りなく受理された。旅立つ直前、東京の感染者数はどんどん跳ね上がった。そんな中、私は静かにこの動画をひたすら見ていた。

たまたま知ったタローマン。めちゃくちゃ面白い。どれも面白いけど、この回を気に入って何度も観ていた。まず「自分の歌を歌えばいいんだよ」というタイトルがいい。タローマンに出てくる怪獣はすべて岡本太郎の作品をモチーフにしているようで、この回は名古屋にある「曹洞宗 天長山久国寺」の住職が岡本太郎に依頼して制作してもらった梵鐘のようだ。「歓喜の鐘」と名付けられているらしい。

タローマンを観て、「マイナスに飛び込め!」と岡本太郎も言っている! 私も爆発したろうやないの! 私は【何だこれは!!!】って人生に感動したいのよ!」と思いを強くして、万が一の為に風治散という漢方薬と体温計を忍ばせて私は東京へ旅立った。

東京に着いて何だか拍子抜けした。すごい普通。私はテレビをほとんど見ないし、何でもかんでもテレビは騒ぎ過ぎだと思っていた方だけど、そんな私でも驚くくらい普通だった。東京で会った友人に「普通で驚いた」と伝えると、「そりゃあこっちは生活してるからね!」と笑いながら答えた。

ホテルにチェックインした際、「グレードアップしています」と言われた。「私はひとりでスーペリアダブルの部屋なのにどんなグレードアップなんだろう?」と部屋の扉を開けた途端に思わず「何だこれは!」と爆笑した。

広い
キ、キングサイズ!!


キングサイズベッドの部屋だった。私ひとりでキングサイズ…。

部屋の間取りもゆったりとして窓からはホテルの日本庭園が見える。優雅。


とても素敵な日本庭園でした



何だろう、よくわからんけど、すごく歓迎されている気持ちになった。私はただ、どんとの還暦祭で「おめでとう」と、どんとの歌に出会えたことに「ありがとう」を伝えたくて東京に来たのに、何だかどんとにおもてなしをされているような気持ちになった。


どんと還暦祭に行く前に東京の友人に会った。私はギターを持ってどんとの歌を歌い始めて間もない時に知り会った友人。下手くそでも楽しくて仕方ない頃、調子に乗って腐った感じになってた頃、内面がボロボロになっていた頃、色んな時期の私を知っていて、いろんな時期の私の歌を聴いているその友人が、私から生まれた歌を「死ぬまでに生で聴いてみたい」と言ってくれた。それを叶えるべく、今回はその友人の為だけにギターを持ってきた。

友人がホテルに到着して日本庭園を一緒に散策した。何故か鐘楼がある。そこに何故か観音堂があった。

中の観音像が拝めるのも珍しい


https://www.princehotels.co.jp/takanawa/files/fac_nihonteien2018.pdf

ホテルの庭なのに? お寺みたいだねって話しながら友人と参拝し、ホテルや他のお客さんに迷惑がかからないように歌える場所を探すと、観音堂の近くに茶屋みたいなベンチを見つけた。風鈴がたくさん飾ってあって可愛い。そこで1曲だけ歌うことにした。なるべく小さな声で、でも心を込めて、私から生まれた歌を歌った。友人は目をつぶり、静かに聴いてくれた。歌い終わると突然強い風が吹いて風鈴がすごい勢いで鳴り響いた。風鈴が拍手しているみたいだった。あまりに鳴りやまない風鈴に「何だこれは!」「風鈴のスタンディングオベーションだね」と笑った。

鳴り止まない風鈴の大歓声に爆笑

「どんと還暦祭~ウタの遺伝子~」は本当にすごかった。すごすぎて、漫画みたいだった。どんとが生前に描いた「どんと漫画」という漫画の本があるんだけど、その最新版を読んでるみたいだった。動のミュージシャン、静のミュージシャン、個性やテンションがバラバラだけど成り立っていて、そこが面白い。ライブの途中に何だか強い「歓喜」のような感情が湧きあがって泣きそうになった。それは、どんとの「おめでとう」を初めて聴いた時と似ていた。似ていたけど、でもあの頃よりも、ずっと優しくて温かいものが自分の中にある感覚があった。

23時くらいまであった長丁場のライブが終わり、ホテルに戻った。ゆっくりお風呂に入り、キングサイズのベッドに寝転んだ。ゴロゴロ転がったり、大の字になってみたりして初めて眠るキングサイズベッドを堪能した。すごく快適だった。友人がホテルに訪ねてきた際、だいぶラフな格好だったので入口でホテルスタッフに声をかけられていたけど私の知人だとわかると丁寧に扱ってくれて、ライブに一緒に行った友達が終電なくなってたのでダメ元で同室で泊まることはできるかを電話で確認すると丁寧に答えてくれて、格安の料金でOKを出してくれた(結局友達は泊まらなかったけど)。私をすごく歓迎してくれて、すごく尊重してくれた感覚を全身に感じて眠りについた。

そんな体験ができたホテルに素泊まりだけで帰るのは申し訳ない気持ちになって、チェックアウト後にガラス張りのテラスの喫茶に入ってホテルメイドのケーキを注文した。ケーキセット税込2,100円。ふだんの私ならそこまでの料金のケーキセットはなかなか注文できない。でも、喜んでこのホテルに支払いたくなった。むしろお支払いすることが歓喜だった。「ありがとう」を伝える手段のような気持だった。

自然光がたっぷり入る席で、日本庭園を眺めていた。木々に飛び移るスズメをぼんやり眺めて、真夏の鳥と蝉の鳴き声を聴いた。そこには平穏と静かな安心が流れていた。ケーキを一口一口味わいながら、静かな喜びを感じた。



とっても静かな歓喜が泉のように湧き上がるようだった。昨日のライブで感じた歓喜とはまた違うのだけど、どこかつながっているような歓喜。すごく安心して、何だかわからないけど「大丈夫」って感じがした。文字で表現するには難しいあの感覚こそが、私が本当に欲しかったものだったんじゃないかと思う。

静かな歓喜。大丈夫という安心感。生まれてきてよかったという祝福。

そして、何の脈絡もなくこう思った。
「私の人生のテーマは歓喜と祝福だ!」と。

閃いたというか悟ったというか、何かわからないけど、強くそう思った。

「これが私がずっと欲しかったものだ」そう思えた。それは誰かが与えてくれるのではなく、自分から湧きあがってくるもんなんだと知った。ならば、私はこれから、この強く感じた「歓喜と祝福」を差し出せる人であろうと思った。そうならなくても、きっと私はそうあれるんだと何か確信した。

自分の中にそんなものがあるとは思えなかった。驚いた。「何だこれは!」と思った。今回の旅は「何だこれは!」の連続だったなーと帰りの新幹線で思った。そしたら、ふと思い出した。タローマンを。私が旅に行く前に言っていた思いを。


タローマンを観ては、「マイナスに飛び込め!」と岡本太郎も言っている! 私も爆発したろうやないの! 私は【何だこれは!!!】って人生に感動したいのよ!」と思いを強くした。


何だ、自分が思った通りになっている。そして何度も見た「自分の歌を歌えばいいんだよ」のタローマンに出てきた怪獣は「梵鐘 歓喜」だった。

すべてが出来過ぎてる。私も漫画だった。私の漫画はこれからどんな漫画になるのか。その漫画の主人公の私は、ただ歓喜と祝福で動いてみよう。

この絵はどんとが描いたミルク様。私もどんと漫画の一員でした。


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