2016年、Facebookの戦略を振り返る

こんにちは、グリーベンチャーズの峰島です!
10月頃から情報発信してかなきゃと思っていたら11月も後半になってしまったので、少々気が早いですが「2016年振り返る」シリーズで暫く記事書いていこうかと思っています。

最初に自社の紹介ですが、グリーベンチャーズは東京とシンガポールに拠点を持ち、ハンズオンのサポート体制を特徴としているVC(ベンチャーキャピタル)です。

私個人は前職が外資系投資銀行の投資銀行部門で、M&Aやファイナンスに携わってきました。バリュエーションや事業計画策定のご相談を受けることが多いですが、それ以外でも起業家の方や起業準備中の方からの壁打ちリクエスト、スタートアップで働きたい方や業界の最新動向を知りたい方からのご質問・ご相談は24時間受け付けています!

宣伝を済ませた所で、今回のテーマであるFacebookの戦略に話を移していきたいと思います。

先日の第3四半期決算発表において、Facebook CFOのDavid Wehnerから2017年半ば以降、広告枠の限界が訪れ、広告収益の成長が鈍化する予測が発表されました。

Facebook’s Q3 2016 earnings call: Ad load issues, ad-blocker blocking, a video-only feed

現在収益の97%を広告から生み出しているFacebookにとって、物理的な広告枠の限界は全社売上の限界に直結します。

広告モデルの限界に対する危機感からか、2016年は近年最も新たな取り組みが目立つ年になりました。

今回はそれらの取り組みを以下の3つの切り口から振り返ります。
1. Messengerを軸にした企業向けプラットフォームの強化
2. VR/ARプラットフォームへの進化(vs Google)
3. 未開拓地域への進出

それでは一つずつ見ていきましょう!

1. Messengerを軸にした企業向けプラットフォームの強化

今年の夏にMAU(月間アクティブユーザー数)10億人を突破したFacebook Messenger。展開地域の差はあれ、他のメッセージアプリを圧倒する地位を築きました(LINEのMAUは2億人ちょい)。

そしてFacebookは今年、このMessengerを軸に企業向けプラットフォーム拡充を大きく推し進めることに成功しました。

Facebookは昨年3月の開発者向けカンファレンスで「Messenger Business」を発表。B2C企業が顧客とのやりとりにMessengerを利用できるようにするもので、オンラインで購入した顧客に対しMessengerで出荷状況を知らせたり、顧客が購入を変更したり追加する等の使い方が想定されていました。

まず今年世の中を騒がせたのは、4月のチャットボットプラットフォームのローンチ。Messengerを用いたチャットボットを開発できるプラットフォーム(β版)をローンチし、APIを公開しました。

チャットボットの登場により航空券を予約する、タクシーを呼ぶ、レストランを探すといった行為がメッセージングアプリ上で可能になりました。これまでアプリやWebが握っていた企業と顧客の接点をメッセージングアプリが奪取する好機が訪れたわけですが、まず開発者を囲い込む辺りが流石Facebookといった感じです。
LINEも10月にチャットボットAPIを公開しましたが、引き続きこの領域の動向は注視していきたいと思います。

そして、なにより注目すべきはTechCrunch Disrupt SF 2016におけるチャットボットによる決済機能追加の発表
ユーザーを他のサービスに遷移させることなく、Messenger内部で支払処理が可能になり、既にPayPal、Braintree、Visa、MasterCard、Amexといった決済サービス業界における主要なプレイヤー全てと協力関係にあるとのことです。

これにより例えばチャットボットを用いて旅行先のホテルを予約、そのまま決済もMessenger上で完了、ということも可能になりました。
今年だけで企業向けに必要な機能はおおよそ出揃った感があります。

2. VR/ARプラットフォームへの進化(vs Google)

2014年のOculus買収以来、FacebookとVR/ARがどのように融合を見せるのか注目を集めていましたが、2016年に初めて具体的なビジョンが見えてきました。

こちらは4月の開発者向けカンファレンスで公開されたデモ動画。正直どういうシチュエーションでこの機能を利用するのかは理解できていませんが(汗)、やはりソーシャル性は重視されていることが窺えます。

またこちらは10月に行われたOculus開発者向けの会議でのデモ動画。先程のお化けのような動画に比べると大分ポップです。ビジネスユースの可能性も感じさせるデモになっています。

また7月にはポケモンGOでも使用されているUnityと提携の新PCゲームプラットフォームを発表しています。ゲーム開発者はUnityで開発したゲームをわずかなコードの書き換えだけでFacebookの新しいPCゲームプラットフォームを通じて公開できるようになるとのことですが、こちらもいずれはVRゲームのプラットフォームになることを意図しての動きではないかと思います。

今年のVR領域におけるビッグニュースのひとつとしてGoogleのDaydreamローンチがありましたが、今後FacebookとGoogleによるVRコンテンツプラットフォームの覇権争いが激化することが予想されます。

Facebookは昨年Oculus Homeをローンチして、既に開発者の囲い込みを始めているためその点では先行していますが、GoogleはAndroid OSを制圧しているので、スマートフォンをベースにした安価なヘッドセットが主流になるとPlay StoreをVRコンテンツにも展開することが可能になり、Facebookにとっては苦しい戦いを強いられることになります。

3. 未開拓地域への進出

そして地域の拡大です。

直近で最も話題になったのはFacebookの中国進出計画でした。

Facebook Said to Create Censorship Tool to Get Back Into 

中国に進出するため自主的に検閲機能を開発しているとの報道が流れ、SNS上ではFacebookへの批判も多く見られました。実際に今年の年初からZuckerberg自身が中国に何度か訪れ、政府高官との関係を築いているとかいないとか。

検閲機能の賛否はここでは触れませんが、個人的には中国進出にここまで本格的に取り組んでいること自体に驚かされました。

また、中国ほどは話題にならなかったものの、アフリカ進出にも意欲を見せているとの報道が今月ありました。

Facebook Plans to grow its African Ecosystem at AfricaCom 2016 forum in S.A

元々Internet.orgという、途上国にインターネットアクセスを広めることを目的とした部門がFacebook内にはあります(独立した組織ではありません)。
Internet.orgはアジアや中東、アフリカ等の地域において現地の通信キャリアと提携して「Free Basics」というアクセス無料のウェブサイトとアプリを提供しています。この部門の究極の目標はFacebookのユーザー数を増やすことですが、ここが中心になって途上国進出を進めているようです。

私自身はInternet.orgの活動は長期的な戦略という位置づけと考えていましたが、このニュースを見ると2-3年程度の中期スパンかもしれませんね。

ちなみに7月には無線通信プラットフォーム「OpenCellular」をオープンソース化していますが、こちらも同じコンテクストでしょうか。ユーザーを増やすためにインフラから抑えにいくなんて徹底しています…。

最後に

以上、Facebookの2016年の動向を見てきましたが、ユーザーとのコミュニケーションチャネルという視点で見るとチャットボット、VRといった将来の重要拠点をしっかりと押さえている印象です。

強いてまだ不十分な部分があるとすれば、Amazon EchoやGoogle HomeといったHome IoTのハブでしょうか。しかし特別なセンサーが搭載されていない限り、スマホがその役割を果たせるのでFacebookにとっては問題無さそうですね。

余談ですが先日Facebookから、60億ドル規模の初自社株買いが発表されました。Facebookも他の米国Tech Giant同様、既存ビジネスモデルの成長が限界を迎え、株主の不満を緩和しつつ長期的な投資を行うフェーズに入ったサインのように感じます。

私個人としてはFacebookは仕事からプライベートまで欠かせないツールとなっているので今後も成長することを願っています!


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