4月、最終日はシフトでお休みになっていた。
月末は売上漏れがないかのチェックがある。
しかもその日は夕方に大きな売上が残っていた。
この作業がけっこう大変なのだ。

それなのにシフトで休み。
かわいい後輩2人に任せないといけなくなった。
1人は去年の中途入社社員。私が研修して、今は店長が休みの日に代理で入っている。
もう1人は今年の新入社員。私の下手な説明でもすぐ理解する。

前日に説明と下準備はしたけど、途中からわからなくなると思うから、テレビ電話してきていいよ〜と言っていた。
すると、当日テレビ電話が掛かってきた。

『はいはーい！』
手を振ってみる。そして、隣りにいた母を映す。
母も手を振った。
「店長、お休み中にすみません。あっ、店長のお母さままで！！早速聞いていいですか？」
『どうぞどうぞ！今日はUFOキャッチャーでいっぱい遊んできたから！いくら使ったかは、……聞かないで！』なんて言いながら、テレビ電話越しの指示が始まった。

『まずは、○○の分だけど、』と1つ説明が終わると、新入社員の子が「あっ、ということはこうですよ！」とどんどん理解していった。
中途入社の子も「なるほどなるほど、ということは！」とどんどん進んでいく。

急にヒマになる店長。
伝票確認してみようかなと送られた画像を見る為にテレビ電話画面をいじっていた。
すると間違えて、顔加工の画面になった。
テレビ電話に加工とかが必要なのか？と疑問だったが、ちょっと使ってみる。

『なにこれ、美肌効果！？すごーい！うさ耳にしーちゃおっと！』
「ん？て、店長！！何してんですかー？」
伝票に集中していた後輩たちはテレビ電話の向こうの私を見て爆笑した。

『え、気に入ったからこのうさ耳のまましゃべるで。できたー？』
急にうさ耳を生やした店長。
ドン引きするかな？と思ったが、普段の研修で慣れているのか、さほど引いていなかった。

「ここがわからなくて……」
『え、わからんとこ映して、映して。あー！それはこうで〜』
うさぎになった店長がまた説明をする。
きっと途中でお客様が来られたらビックリするだろう。

「これであってるかな？」
そういい、後輩は電卓を叩く。
『がんばれ！がんばれ！』
うさぎがうざい応援をする。
途中、お家にいるインコちゃんを映して、
邪魔、エールを送る。

「できたぁ〜〜〜！店長、ありがとうございます！」
無事合計金額が伝票とピッタリ合ったようだ。
『すごい、すごい！！やったねぇ～！』
最後までうさ耳の私は、残りの処理を後輩に託し、テレビ電話を切った。

私の研修のモットーは、「ゆるく真面目に」。
真面目すぎてもおもしろくない！
力を抜けるところは抜いて仕事をするのも悪くはないということを伝えることができたらと考えている。
決して店長はふざけてはいない。