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3/2 萬斎のおもちゃ箱Vol.2「ファリャ 恋は魔術師」を鑑賞した大学生が語る回

【注意】明日3/3に最後の鳥取公演があるので、内容のネタバレを含まないように努力しますが、観に行かれる方がいましたら、読まないことをおすすめします。

「萬斎のおもちゃ箱Vol.2『ファリャ 恋は魔術師』」、観てきました。私がこの春休みで一番楽しみにしていたイベント。案の定大学生の一人参戦は私ぐらいでしたが、そんなのは慣れっこなのでもはや気にもなりません。箏奏者のLEOさんのSNSを見て、前売りが始まった次の日にチケットを取りました。せっかくなので贅沢にS席を。SS席取りたかったけど初日で売り切れてた。

一番前の下手ブロックのちょうど中央あたりでした。「正面じゃないなあ」とがっかりしたのは一瞬で、出演者の出入りが下手なのと、配置的に箏を弾くLEOさんの手元が譜面台に隠れず見えたので、めちゃくちゃいい席だった。近すぎず遠すぎないから、出演者さんの表情までしっかり見えた。



第1部

第1部は、野村萬斎さんのトークと、箏奏者LEOさんとオーケストラアンサンブル金沢さんによる藤倉大作曲「箏協奏曲」。

オーケストラアンサンブル金沢

まずはオーケストラアンサンブル金沢(OEK)について、語るというか紹介を。

1988年、日本初のプロの常設室内管弦楽団として誕生。金沢駅前にある石川県立音楽堂を拠点に、国内外で様々に活動しています。詳しくはホームページで。

自慢じゃないですが(笑)、お箏を習っていた教室の親団体が主催するコンサートで、何度か共演したことがあります。もう亡くなられましたが、その団体の会長をしていたおじいちゃん先生(本職はオケやフィルの指揮者)が、成立の経緯を教えてくれたのを微かに覚えています。

「まだ日本にプロのオーケストラがなかったとき。どこのアマチュア団体へ行っても、終電があるからと帰ったり、仕事があって練習に来なかったりが当たり前で、本気で音楽をやりたいのにできない人がたくさんいた。趣味じゃなくプロとしてオーケストラをやる場所がないと。じゃあ作ろうじゃないか、と言った人がいてできたのがこのオケだ」みたいに説明していました。

箏奏者LEOと藤倉大作曲「箏協奏曲」

次はLEOさんについて。
正直、今回の公演はLEOさん目当てで観に行きました。OEKさんと野村萬斎さんの共演は、金沢に帰れば観る機会あるだろうし、と思っていましたが、推し奏者のLEOさんが来るとなれば行くしかない、と思いました。

LEOさんを知ったのは情熱大陸。なぜか情熱大陸を観ていた友達が「次箏の人らしいよー」と教えてくれて、調べたら若くてイケメンだったので観ました。(笑)
当時中学生だった私でも名前を聞いたことのある沢井ご夫妻に習っていると知り、「只者じゃない」と悟ったのを覚えています。東京藝大生で、題名のない音楽会の邦楽回にレギュラーなんじゃないかというぐらい出演していて、只者じゃないどころではないと後で反省するのですが。

公演で金沢に来るということで、当時中3だった私は当然観に行きました。この人は全身で箏を弾いているんだな、と最初の数音聴いただけで感じ、最後まで鳥肌が止まりませんでした。呼吸の音が聞こえるんですよ。私も箏をやってますが、演奏中に呼吸を意識することなんてないですよ。それだけ曲を自分の物にして、楽器と自分の体を一体化させて弾いているんだな、と思いました。

技術面は言わずもがな、誰も思い付かなかった、思い付いてもできなかった新しいことをどんどんやるLEOさん。藤倉大さんに依頼して作ったオーケストラ曲「箏協奏曲」は、なんか、こう、とってもLEOさんだった。(語彙力)

第一部が終わった後お手洗いに行ったんですが、マダムたちが混乱していました。
「よくわからなかった」
「15/16拍子だか知らないけど…分かりやすいリズムなら楽しくノれるのにねぇ」
「全体的に静かだし、難しすぎて寝ちゃった」
なるほど、私はLEOさんを知っているから、最近の若い邦楽の世界を知っているから鳥肌を立てながら聴き入っていたけど、そうじゃない人が大半だよね。「野村萬斎」「オーケストラ」「箏」という言葉から連想するのは、やはり古典のイメージ。長く邦楽に関わっていると忘れがちだけど、世代を問わず大半の日本人にとっては「邦楽=古典」が公式。

でも、そんなマダムたちの反応を見て、私は大成功だと思いました。着物を着て毛氈の上で演奏するのだけが邦楽じゃないと知ってもらえた。オーケストラでも最近の作曲家の曲は素人には理解しがたいように、邦楽も進化し続けている。
かく偉そうに言う私も、OEKさんはクラシックのイメージが強かったので「そうやって音出すの!?そんな音出るの!?」と驚きっぱなしでした。

第2部

金沢と能楽、野村萬斎

内容には触れたくないので、まずは私の知識を自慢します。

金沢は「空から謡が降ってくる」まち。加賀藩藩主前田家が、武士の能楽を保護し、庶民に普及させ、「加賀宝生」として発展しました。こちらも詳しくは金沢能楽美術館ホームページへ。

能楽の名家である野村家も、元を辿れば金沢。そんなご縁で、野村萬斎さんが県立音楽堂の邦楽監督をされている(のだと思う)。

ここで余談を追記。県立音楽堂はオーケストラホールと邦楽ホールを併設しているんですが、それがとても珍しいらしい。第1部のトークで萬斎さんが仰ってて、思い返してみれば確かに他に聞いたことないなって思った。なんか誇らしい。

兼六園の近くに県立能楽堂があって、年に何度も能や狂言の公演が行われています。金沢市の中学3年生は、ここで観能教室があります。私のときは狂言「附子」、能「羽衣」を鑑賞しました。野村家が金沢の出だということも、この後に行った能楽美術館で聞いた話。能はみんな爆睡してたけど、どこの中学でも数週間は附子の「扇げ扇げ、扇ぐぞ扇ぐぞ」というセリフが流行るまでが恒例行事。多分。

感想

ファリャも「恋は魔術師」も予習せずに行ったんですが、めちゃくちゃ面白かったです。全く堅苦しくなく、笑いも生まれていました。そりゃそうか、野村萬斎は狂言師だもんな、と冷静になって納得しました。

予習がてら萬斎ボレロをYouTubeで観ていたのですが、能舞台じゃないのに何で足音が出せるんだ、と不思議でした。ちょっと考えればわかりますよね、板一枚重ねてるんですね。

感動したのは衣装。和装にシャツやスペインを感じさせるスカーフを取り入れていて、それがひらひら揺れたり小道具になったりと、全く違和感なく美しかった。メゾソプラノの秋本悠希さんもよく見たらちゃんと足袋履いてた。細かっ。

※以下、薄っぺらい感想です。

とにかく全てが美しい!!!
衣装は前述の通りですが、所作ひとつとっても本当に全てが美しい。振付も、能楽や日舞をやってないと出せないしなやかさが凄かった。日舞は観たことないけど、これを機にちゃんと観てみたいと思った。

野村萬斎、いいなぁ。
にほんごであそぼを観ていた頃には気付かなかった魅力、ありますよね。あの渋さ、とてもいい。

野村裕基もいい。
こちらはくもんのCMのイメージでしたが、役柄と衣装も相まってめちゃめちゃ色男だった。歳4つしか変わらないことが衝撃。

まとめ

簡単な言葉で表現するの、とても恐縮ですが、凄かったです。
やっぱり邦楽好きだわーって思ったし、これまで守備範囲じゃなかった能楽や日舞も勉強してみたいと思いました。

出演者の皆さま、最高の作品をありがとうございました。
(誰か読んでたら嬉しいな。笑)

また3000字になってしまって疲れたのでこれにて。


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