【スマブラSP】格ゲー世代の初心者がVIPを目指す話①
最初のきっかけは仲間にボコられた事だった。
「くっそぉぉぉぉ!」
2018年12月。世界累計出荷本数1200万本超というメガヒット作『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』が発売された。
ちょうど発売日に予約していた友人とメシを食う約束をしていた俺は、その場の流れで開封の義と初プレイに同席する事となった。
スマッシュブラザーズ。略して『スマブラ』。
今から20年も前に発売されたパーティーゲーム...だったはず。
じゃあこの殺伐としたタイマンゲーは一体!?
「懐かしいんだけどさ、スマブラってこんなに難しいゲームだったっけ?」
俺の知識は20年近く前に仲間と遊んだ時の記憶のみ。
当時の俺は絶滅危惧種のネオジオCD派だったのでニンテンドー64は持っていなかった。
「あの頃は...くそっ、仲間の家に遊びに行って...やべっ落ちた!」
昔の事を思い出す暇もなくボコボコにされてしまう。
「続編は一応やってたんで」
そう言いながら的確にアイテムを活用して追い詰めてくるのは、俺の友人にしてミニ四駆の先輩でもある「うみはね」さんである。
もちろん本名ではない。知り合った時点でお互いハンドルネームで覚えてしまったので、本名で呼び合う以上にお互いに馴染んでいた。
「ほっとさんはアレですか、数年ぶりとかですか?」
「そうッスねぇ、くっ、仲間の家で遊んで以来ッスから、ヤベッ、かれこれ20年ぶりくらいッスかねぇっ!?」
『ほっと』というのは自分のハンドルネームである。名乗るようになってから数年経つので、本名で呼ばれるのと同じくらい慣れてしまった。
わりと話しかけられる機会が多いのはミニ四駆関連でブログをやっているためなのだが、それはまた別の話。
それよりもこの状況がキツ過ぎる。
(スマブラは触る程度しか遊んでなかったけど、格闘ゲームだったら少しは経験がある! なのに...なぜだ! なぜ勝てないっ!?)
どのキャラを選んでもボコボコにされる。
一旦気持ちを落ち着けて敗因を思い返してみると...
(まずはルール。画面外へと吹き飛ばされたらマイナス1ポイント。多くのポイントを奪った方の勝利。ここまではいい。
問題はその手段だ。知らないキャラが多すぎて動きがサッパリ分からん。
それに危険なステージばかりだし、アイテムの種類も多すぎて吹き飛ばせないのに吹き飛ばされまくって負けまくる!)
要はワカラン事が多すぎる!
(くっそぉぉぉぉぉぉ!)
普段から彼には、カラオケ、ぷよぷよ、ミニ四駆と趣味のほとんどで負けまくっている。上位互換のメタ的存在と言っていい。
そこに加えて今度はスマブラである。格闘ゲームには少し自信があっただけに、近いシステムで負けてしまうのは納得がいかなかった。
(ちくしょう...ちくしょうっ!)
このまま引き下がっては男が廃る。
時期はちょうど冬のボーナスシーズン。NintendoSwitch本体の購入については既に妻から了承を得てあるし、タイミングはバッチリ。
実はまだソフトを決めていなかったのだが、これで迷いは無くなった。娘の好きなカービィも出演しているとなれば、きっと喜んでくれるだろう。
後は買えるとしても年末だろうからそれまでに出来る限り情報を集めておきたい。
まずは基本だ。今のスマブラはどんな動きするのが主流なのかを知るところから始めてみたい。
(ほんと、便利な世の中になったよなぁ)
今はネットで調べれば大抵のことが書いてある。You Tubeで検索すれば、大きな大会の動画もすぐに見られるのだから研究には困らない。
格闘ゲームが流行していた1990年代後半には、今のように手軽に見られる環境ではなかった。ゲーメストやネオジオフリークを熱心に読み耽っていた頃を思い出す。
早速「スマブラ 対戦」と検索すれば恐ろしい数の動画がヒットする。試しに上から順に覗いていく事にした。
(...ほうほう。なるほど)
対戦形式は本格的な格闘ゲームのようにアイテム無しでステージも平坦な場所でのタイマンが主流となっているようだった。
(対戦形式は分かったからいいんだけどさ、このゲーム使用キャラ多すぎなんじゃね?)
ちゃんと参戦キャラを確認していないのでアレだが、自分の記憶にあるスマブラでは10人ちょっとくらいだった気がする。
それがいつの間にやらこんな大人数になっていたとは。というか続編があった事すら知らなかった訳だが...。
このまま様々なキャラクターによるタイマンを見ているのも面白いが、折角なら自分の好きなキャラクターが出ているチャンネルがいい。
そう思って何件か探っていると...。
(こ、このキャラクターは!?)
思わず手が止まる。
理解が追いつかない。何故に任天堂のゲームに彼が出演しているのか!
その姿を見紛うハズもない。何故ならばその存在は俺達の青春そのものだったからだ。
見覚えのあるモーションでの空中蹴り。そこから連続で放たれる突き蹴り、そしてキャンセル必殺技の流れ。
強烈な後ろ回し蹴りが相手を的確に捉え、赤黒い稲妻の演出と共に画面外へと吹き飛ばしていた。
金髪のファイターが華麗なステップを刻む。さほど大柄ではないが鍛え上げられた身体。手には一切の武器を持たず手背を覆うようなグローブを装着するのみという軽装。
まるで燃え盛る炎のような赤い道着に身を包んだその姿を忘れるハズがなかった。
(ケンっ!)
俺と同世代であれば一目で分かる。あの名作ゲーム「ストリートファイター」シリーズに主人公のライバル役として登場したケン・マスターズその人である!
(スマブラにケンが!? でも何故に?)
そんな疑問を整理する間もなく対戦相手のヨッシーが闘技場へと復帰する。
失ったポイントを取り返そうと躍起になって襲いかかる。が、それを全て読み切ったケンが垂直ジャンプから飛び蹴りを放つ!
そこから飛び蹴り、肘打ち、上段回し蹴り、踵落とし、足払いの華麗なコンビネーションが体力を一気に奪っていく。
堪らず距離を置こうと後退したヨッシーにあの懐かしい技が放たれた!
「波動拳ッ!」
腰溜めにした両腕に蓄えた気の塊を相手に向かって放つ秘技。世界でも通じる日本語の1つである。
(おおっ!)
ついスマホを持つ手にも熱が籠もる。妻に翌日の予定を聞かれるが今はそれどころではない!
「パパ〜積み木やろ〜」
「OKッ!」
娘と遊びながらも画面から目を離せない。いや、離せるはずが無い!
体制を立て直そうとするヨッシーにケンが間合いを詰めていく。
相手の牽制を意識しながらガードと接近を繰り返すその動きは、正に慣れ親しんだ格闘ゲームのそれだった。
そこまで来れば既に勝敗は決したようなもの。焦った相手は飛び道具か飛び込み攻撃かの2択と昔から相場が決まっている。
「うーやっ!」
ヨッシーが一瞬飛び上がり強烈な急降下蹴りを放つ!
しかしその攻撃をガードではなくステップで回避したケンが隙だらけとなったところに突進技を繰り出した。
「竜巻ッ!」
(出た、竜巻旋風脚っ!)
これまた懐かしい技が炸裂した。空中をホバリングしながら、連続した後ろ回し蹴りを相手に放つ必殺技である。
この技と波動拳はコントローラーの操作が似ているし比較的出しやすい技だった事もあって、当時の子供達はかなりお世話になったものだ。
軽く吹き飛ばされたヨッシーが地面に叩きつけられる。そこに素早く間合いを詰めたケンが追い打ちを掛ける。
なんと倒れた相手にも攻撃が当たるシステ厶らしくモリモリとダメージが蓄積されていく。
恐ろしい。先程まで無傷だった体力があっという間に危険域に達している!
(ヤバイ、これはヤバイ!)
そしてトドメに繰り出されるのはケンの代名詞、当時の子供達が手にマメを作りながら必死に練習した無敵の必殺技!
「昇ぉぉぉ龍ぅぅぅ拳ッ!!!」
画面いっぱいに表示されたド派手な演出。そして金属音のような激しい効果音が、その一撃が致命のそれである事を示していた。
「来たーーーーーーッ!」
「えっなにが?」
不思議そうな顔で俺を見つめる娘。今度は何だと呆れ顔をした妻。
(これは...やるしかない!)
この瞬間、俺の持ちキャラが確定した。
「よーし、もう少ししたらSwitch買っちゃうぞ!」
「えっ買うの?」
「おう!」
「いえーい!」
「早く買いたーーい!」
「買いたーい!」
無邪気にはしゃぐ子供2人。
30代後半にもなってここまで物欲に襲われるとは思わなかった。
(ヤバイ、早くやりたい。今すぐプレイしたいっ!)
完全に物欲メーターを振り切ってしまった。
給料日までなんて待っていられない、今すぐプレイしたいぞ!!!
ほぼ毎夜10時頃~YouTubeにてゲームorミニ四駆の生配信を行っています!お気軽に遊びに来てください!https://www.youtube.com/channel/UC38sxZzD1yC-rTQzTaS7h5A