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「育休中に勉強」は可能かどうか

最近、Twitterで「育休中に資格を取ろう」というユーキャンのCMが少し炎上しているのを目にした。
確かにあのCMを見ると、育休中は時間があるから資格取得できるものだ、と子育てを経験してことがない人に思われてしまうのかもしれない。

育休は休暇ではなく育児のための休業だ。乳児の子育ては、その子の生命を一手に担う重責があるし、言葉が通じない我が子との生活は、想像以上に大変なものだ。

資格取得なんてとんでもない!という気持ちはとてもわかる。
一方で、育休中に新たなことにチャレンジするのも悪くないよ、と思う自分もいる。

初めての育児で疲弊した長男の育休時代

長男を出産した約7年前、わたしは本当に毎日途方に暮れていた。

とにかく、寝ないのだ。
それも長男の場合はショートスリーパーというわけではなく、寝るのが下手だったのだ。
つまり、毎日眠いのに眠れないでずっと泣いている長男を、文字通り一日中抱っこしていた。

さらに近所の小児科に予防接種に連れて行けば、首のすわりが遅いからうつぶせの練習をさせるように言われ、「図書館などでちゃんとした育児書を読むべきだ」と言われる。
(今思うと、ずいぶん偏った考え方の先生なのではないかと思う)

とにかく、自分がいかにダメな母親か思い知らされたようで、毎日自信がなかった。
そして、ずっと泣いている長男とふたりきりで過ごしていると、何もしていないのにあっという間に一日が過ぎ、本当に何もできなかったことに自己嫌悪に陥る日々だったのだ。

そんなわけで、長男が生後2ヶ月を過ぎて外出ができるようになると、地域の赤ちゃん学級に行ったり、図書館に行ったりするようになった。
とにかく育児書を読み漁ったし、引っ越してきたばかりの土地で必死でママ友を作った。
予防接種のために病院に通うのにも忙しかったし、離乳食作りも大変だったし、毎日気付けば一日が終わっている(しかも家にずっといるのに家の中はちっとも片付かないし、何していたんだろう、自分・・・)という感じだった。

おかげで地域にママ友は増えたし、我ながら育児の知識は増えていったと思う。
けれど、当時を振り返ってみて、勉強する余裕や時間があったかと問われると…うん、全くなかったよね。
育児ノイローゼにならずに育休を過ごせただけで、100点満点だったんじゃないかな。

新しいことに挑戦しまくった次男の育休時代

それから4年後、わたしは次男を出産した。
次男は長男に比べあまり手のかからないタイプの赤ちゃんで、こんなにも赤ちゃんの個性は違うのかと驚いた。あんなに長男のときは寝なくて悩んだのに、次男は長男の用事に付き合って連れ回しているあいだに、抱っこ紐の中で勝手に寝てくれる。

おそらく、初めての育児から4年経ち、ある程度育児にも慣れてきていたというのもあると思う。
夜中の細切れ睡眠はもちろん辛いが、躊躇なく添い乳を採用したことで、そこまで苦痛ではなかった。
一度経験していると赤ちゃんの発達のことで悩むことはほとんどなかったし、離乳食作りだって適当だ。

また長男の育休中に比べ、夫とわたしの母の協力体制が整っていた。
4年前に赤ちゃんだった長男と留守番をすることなどできなかった夫は、この4年で3~4時間であれば赤ちゃんと留守番をすることができるようになっていた。
長男のときには母に預けることなど考えられなかったわたしも、切迫流産・切迫早産を経て、母に甘えることを覚えた。

そんな日々の中で、よくわからないけれど、わたしの中で新たなことに挑戦したい意欲がムクムクわいていた。

ちょうど妊娠前からWebスクールに通っていたこともあり、育休中に子ども達を夫や母に預け、わざわざ横浜から渋谷まで授業に通った。
育休中に参加できるプロボノ(ママボノ)で短期プロジェクトにも関わった。
オンラインサロンにも入った。

自分のために新たなことにチャレンジするのは楽しい

当時の原動力は何だったんだろう。

子育てをしていると、自分がどんな人間なのかを見失ってしまいそうになることがある。それくらい「母であること」が何よりも優先されるのだ。
母であることはもちろん自分のアイデンティティのひとつではあったけれど、出産前の30年間で身に付けた「わたしらしさ」というものもあるはず。
出産前は一生懸命勉強して、たくさんの人に会い、刺激を受けて頑張っていた。それなのに、今の自分は・・・?という思い。
今思うと出産前を美化していた部分もあると思うが、子育てを始めて4年が経ち、自分が自分でない感覚に陥っていたのは確かだ。

また、育休で子育てにどっぷり浸かる日々の中で、勉強することがちょっとした現実逃避でもあったかもしれない。
子どもの横で勉強しながらも、一時的に子どもを忘れて集中するということは、良い息抜きであった。
長男の育休中であれば、子どものこと以外に夢中になることに罪悪感を覚えていたと思う。でも、子育てを始めて4年が経ち、自分の時間を持つ大切さというものにも気付き始めた時期でもあった。

自分でもあのときの情熱の正体ははっきりとは分からないのだけれど、次男の育休中にいろいろなことにチャレンジしたのは、本当に楽しかった。
そして、あの経験があったから、次男の保活に失敗してどうしようもなくなったときに、今の仕事を見つけられたとも思っている。

育休中の過ごし方に正解はない

自分が実際に子育てを始めるまで、子育ての大変さが均質ではないことに驚いた。

赤ちゃん時代にとにかく手がかかる子もいるし、全然手がかからない子もいる。手がかからないから良い子というわけではなく、とにかく個性なのだ。

また親と子の相性もあって、同じことを子どもにされても、大変だと感じる親がいる一方で、なんと可愛いのだろうと感じる親もいるだろう。
同じ親が同じことをされても、ひとり目とふたり目で感じ方が違うこともあるし、周囲の手がどれだけ借りられるかという環境も各家庭で異なるものだ。

だから、育休中に資格を取ろう!と、安易に他の人に勧めることはできない。
むしろ、育休が終わり仕事に復帰したら子どもとべったり過ごせる時間はなかなか取れないことを考えると、育休中は子どものことを第一にほかのことをする必要なんかないと思う。

それでも。
もし育休中に育児に行き詰まっている人がいるのであれば。
自分のために勉強することは楽しいよ、育休中に少しは自分のために時間を作ってもいいんだよ、ということを伝えたい。

もちろん資格取得である必要はなくて、料理でもブログでもなんでも構わない。
育児中のママが自分にとって楽しいと思えることが見つかるのであれば、ぜひ新しいことにチャレンジしてみて欲しいなと思う。

(一方で、もし育休中に資格取得をしたいと考えている妊婦さんがいるのであれば・・・
絶対に「子どもがどんなタイプで、自分がどんなタイプの親か」がわかるまで、資格取得の講座申し込みは待ったほうが良いですよ、ということもあわせて言いたい。)


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